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「石」の巻、1日目

朝5時前に起きて、すぐに近くの駅に行き、自転車を分解して山手線に飛び込む。東京駅6時過ぎ発の新幹線で仙台を目指す。

思ったより早く着いた。30分前。

ホームに上るエスカレータに乗りながらホッとした瞬間違和感が。

「えっ、何でこんなにエスカレータに人が乗ってるの?」

ホームに上がると、ヒトヒトヒト。

まだ午前5時半でしょ?
なのに昭和の通勤ラッシュ並だ。

とにかく一番すいているはずの1号車両に向う。自由席車両に並ぶ人達の列はどこも人がうねっている。こんな状態で自転車を抱えて乗ったら地獄だ。

運良く1号車の次発列には人が並んでいない。今から1時間弱並ばなければいけないが確実に座れる次発にするしかない。

あきらめた盛岡行きの始発新幹線は、昭和のモーレツ痛勤列車と化して、車内はドアギリギリまで人が溢れ、出発した。

ホッとしたのもつかの間、こんなに混んでいたら、自転車を置けるところがあるのか?と次の心配が湧く。

最初の新幹線に割と早めに乗り込んだ、とある自転車を持った中年男性は何と車両の一番前の席に座って、自分の座席の目の前(足元)に自転車を入れた袋を置いた。

(こんなことやっていいのか?隣の席の人にも明らかに迷惑だろう…)

さて、自分はどうすればいいのか。先に出発するその新幹線車両をくまなく見る。

あの入り口付近の手すりに括り付けるしかないけど、それでも大丈夫かな?と心配になった。

その電車が出発すると、割と早く次発が来て、乗ることが出来た。

中に入ると、大きな荷物を置くスペースのある車両!

入口近くにあるそのスペースに自転車袋をサクッと入れて、席も余裕で座ることが出来た。

ホッとすると同時に、こんなオーバーツーリズムのタイミングに旅をするのは終わりにしたいな、と思った。あの状態で駅として何か大きなトラブルがあったら、利用者がパニックで大変なことになる。

なるべくオフシーズンに旅をしよう。

前日あまり眠れなかったので、車内では爆睡。

仙台駅に下りると少し涼しかった。

自転車を組んで走り出す。

仙台はいつ来てもキレイな街だなぁと思う。

初日は普通に、仙台から石巻に向かって走ることにした。旅なんだからあまり深く考えないでいいよな、と自分に言う。


中心部を抜けると広い道。

真っ直ぐで広い道が続く。

今日はゆっくり休憩回数を増やして走るのがテーマ。

コンビニやスーパーで休んでは水分補給と軽食。

このルートは、以前自転車で走ったような記憶があるが、思い出す道が一つもない。走っていないのかも。

不思議な記憶では単調だった気がしていたが、実際はとても良かった。

松島が近づいてくると、海の匂いがして、海が見えて、大海原ではなく小さな島が浮かんでいる感じが最高だった。

「そうそう、こういう海が見たかったんだよ!」と心のなかで叫ぶ。

東海道筋の海でなく、福島の万里の長城のような巨大な堤防越しでもなく、昭和の子供の頃の海や町の雰囲気や匂いが残っていた。

「これだけでも、来られて幸せだ」そう思いながら松島で休憩。

松島の手前から渋滞だったが、それをすり抜けると交通量が減って走りやすかった。

ここからはアップ・ダウンが始まり少しきつくなるが焦る距離ではないので、軽いギアでゆっくりペダルを踏む。

アップ・ダウンが終わり石巻が近づいてくる。

そろそろ最後の休憩。

地元のスーパー「ヨークベニマル」に入る。

魚売り場に行く。

あったあった。アジが光っている。今が旬の「ホヤ」、好漁な「カツオ」。見事だ。本当に海の近くに、名漁場の近くにいるんだと目頭が熱くなる。


このままかぶりつきたい。


1個100円?


ガッデム!

買って食べたかったけど、ここではさばけないので、諦めて店を出る。

明日は雄勝に向かう予定で宿をとったので、石巻市街から少し北にある北上川近くの安いホテル。どうにも魚が食べたいが、近くには郊外型チェーン店舗だけがひしめいているところで、スシローしかない…

それでも食べたい、スシローで食べるがnoteには書かずにおこうと走り出すとその手前に別のチェーン店寿司屋があった。

のぼりに「石巻産」と書いてある。
良かった〜、と入る。

もうここから宿はそれ程遠くないので、酒も頼む。値段を気にせずそれなりに寿司を頼む。

ホヤの三種盛り、滅茶苦茶旨かった。

ホヤを制するもの幸せを制す、とか言いたくなる。

スシローとかに比べたら単価の高い店だったので、七千円とか行ったかなと思ったら五千円。

大満足。


写真がこれしかない…
ご馳走様でした。

3500円で予約できた宿に着く。

宿の必要最低限のサービスが絶妙だった。

トイレは共用、シャワーはバスタブなし、でも有料でも洗濯ができて、部屋にはあらかじめエアコンを入れておいてくれた。部屋着は浴衣ではなく、スポーツ着的な上下で、コンビニならこのまま行けるし、洗濯時もありがたい。こういう宿が良いんだよなあ。

やっぱり私は石巻と波長が合う、来てよかった!

ところで明日一日雨の予報で、一日ゴロゴロする予定だった。

今回のメインは雄勝に行くことと、石巻のbarニュー魯曼停さんに行くこと。

本当は明日に雄勝・女川と60kmほど周回してその夜に打ち上げ的に魯曼停さんに行けたら最高だと思っていたが、明日は一日雨だから仕方がない。ゴロゴロ、ブラブラした最後に魯曼亭さんに行って、翌日二日酔いで雄勝に行くか、と思っていたのだが、先程夕方の地元のニュースだと昼頃から雨がやみ、午前中も降ったりやんだり程度かもしれない、とのこと。

今日は早く寝て、翌朝は天気情報の収集に精を出して、行けそうなら走ってしまおう。

雄勝なんて、すごく力強い名前だ。元気を貰いに行こう。

そして走りきって飲みきって、二日酔いで3日目はゴロゴロしていたい。

それでは、早めに寝ます。おやすみなさい〜


間違えて走っていた道。
夏草の匂い。
何気ない、どこか懐かしい雰囲気が尊い。