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「ニュースキャスター」とは何者だ?【前編】


「ニュースキャスター」とは何者だ?

動いて動いて動こう!「Dooo」 ※動画で見たい方は上をクリック

柿次郎:2019年最初のゲストはTBSの井上貴博アナウンサーと、皆川玲奈アナウンサーです。宜しくお願い致します。

井上・皆川:宜しくお願い致します!

井上:入社12年目になります。現在は夕方のNスタという番組を担当しております。

柿次郎:めちゃくちゃ滑舌いい!

井上:コレで噛んだら切腹しますよ!(笑)

皆川:入社5年目になります。皆川玲奈です。今はNEWS23という夜の番組を担当しています。

柿次郎:それぞれ時間帯が違うわけなんですね。素人からするとニュースキャスターって朝早いというイメージがあるんですけど。

井上:放送が始まるのは午後3時50分なんですけど、出社が10~10時半くらいですね。その後オンエア迎えて反省会などなど、翌日の打ち合わせもありますけど、そんなに遅くならないですね。午後8~9時には帰る。

柿次郎:結構健全。

井上:健全です。ものすごく健全です。

皆川:私はちょうど井上さんが出社するくらいの時間に起きます。会社に来て打ち合わせをするのは夕方の5時が最初です。夕方の5時が1回目、2回目が8時半、3回目が10時くらい。放送が午後11時10分です。

柿次郎:そこからギアを入れるんですね!

皆川:一日の終わりに生放送って、結構ちょっと・・・・(笑)。それで、家帰って寝るのが朝4時です。それが週5。

柿次郎:聞いていると夕方の放送の方が人間らしい・・・

井上:ものすごく人間らしいですよ。というかこんなに楽でいいんだろうかと思います。

柿次郎:余裕?

井上:余裕・・・・・・(体調面では)余裕です!ちょっと今、落とし穴があったな。

柿次郎:手を抜いてとかではないですよね?

井上:手は抜けないですけど、元々僕は朝の番組をやっていたので。
それと比べると本当に(体調面では)楽だなと。

柿次郎:集中力をもっていくのが難しいお仕事じゃないですか

皆川:私は何か取材とか入ると朝からだったりするので。そこからずっと取材をして外にいて、その取材したものを持ち帰って、確かに時間はすごくあるけど、自分の中で息切れしないようにするのが結構一杯一杯なときも・・・

柿次郎:では全然夜に呑みに行けない?

皆川:行きますよ!

柿次郎・井上:行くの??

皆川:番組が終わって深夜1~2時くらいからスタッフと・・・赤坂は結構朝までやっている店が多いので。そうすると朝6時「おはようございます」みたいな。

柿次郎:それはダメな感じがしますね・・・生活スタイルが。

井上:でもそれぐらいやらないとやってられないっていう。

皆川:人間関係も狭まるので・・・

*****「Dooo!」*****

柿次郎:「やってられない」みたいな一言があったので、何でやってられないんですか?楽しいんですか?

井上:楽しい・・・・これは難しくて、「仕事楽しいですか?」と言われて「楽しい」って答えます?

柿次郎:楽しいですね、僕は。

井上・皆川:オー!!梯子を外されたぁ!(笑)

柿次郎:全然架ける気はなかったけど、本当に僕の場合は遊びがそのまま仕事になっているので、かつ自分で会社をやっているので、キツさももちろんありますけど、総じて楽しいとはいえる。

井上・皆川:・・・・・・(長い沈黙)

井上:楽しさはもちろんある。その一方で楽しんでいる場合か?と思っている自分もいる。お客さんに見てもらう上でお客さんが楽しいと感じてもらえることがベストで。こっちが楽しむのは後からなんじゃないかという意見と、こちらが楽しんでいないとお客さんが楽しめないんじゃないかという意見と自分の中でよくわからなくなっているけど。だから仕事楽しいかと聞かれたときに困るんですよ。「楽しいです」・・・でも「楽しい」という一言では終わらせられないです。ここまで言わないと自分の中では成立しない感じなんです。「楽しい?」って言われて「楽しい」とは言えないなって。

皆川:確かによくよく後から考えると、あの仕事やってよかったな・・・とか、楽しかったとかはあるけど、今・・・現在進行形でこの仕事をしていて本当に心から楽しくて仕事ができるという余裕が私はまだない。こんなに世の中がめまぐるしく変わる中で楽しんでいるところもないし。

柿次郎:井上さんは飲み屋でいつも真顔で呑んでいるんですか?楽しんでいられないので?

井上:そういう日もあると思います。愚痴ばっかり言っている時もあります。

柿次郎:どんな愚痴があるんですか?どんな愚痴っていうより・・・どんなおつまみを食べると愚痴が出やすいとかありますか?

井上:お酒があれば。酒だけでいけます!

*****「Dooo!」*****

井上:テレビで「ニュース」って見ます?率直にお願いします。

柿次郎:めっちゃ減りましたね。いかんせん自分が忙しくなって外に出る時間が増えるとなかなか見れなくて、見たいとは思っている、めちゃくちゃ。「ニュース好きっす!」

井上:それはテレビ的な発言でなくて?

柿次郎:・・・半々ですね。

井上:半々か~!!!

柿次郎:けど僕もインターネットを軸に仕事をしているので、ツイッターとかフェイスブックでみるニュースが「偏っているな」と思っている。それでニュースサイトのランキングをみる。大体ランキングの上位を見てしまう・・・そう設計されているじゃないですか、ランキングが1位、2位(のニュース)だけを見てはダメだなと思ってはいるので、「ニュースを見なきゃ!」と・・・

井上:どのニュース番組を見るかの動機付けは何ですか?

柿次郎:テレビ見ているときは全部見ています。ザッピングしています。

皆川:誰が出ているかとか、何時にやっているかとか、TBSか日テレかとかそういうのは?

柿次郎:「報道ステーション」はよく見ますけど、それぐらいですね、決めているのは。

井上:そうなると私たちは作る側なので、どう差別化してみてもらえばいいかという・・・

皆川:「ニュースってどうすれば色んな人に見てもらえるのかな?」とか「今、『NEWS23』ってどういう人が家でどういう状態でみているのか」とか、私はそこがまだ想像できていなくて・・・

柿次郎:皆、スマホを見ながらニュース見ていると思うので・・・すごい興味津々な目で僕を見てきますね。

井上:ほんとそうなんです。ニュースって僕ら材料は同じなので。大体変わらないんですよ。今日やるニュースって。どの番組も一緒なんですよ、ほぼ・・・。それを視聴者の皆さんは選択をするわけですよ。何をどうやって選択して、我々はどのようにアプローチすればいいのか・・・我々は垂れ流している状態ですから。(視聴者の)リアクションがないんですよ。ネットではないから。ご意見とかクレームとかは頂きますよ。でもそれが全てかというと・・・・・


柿次郎:僕がやっているようなウェブメディアはこういう層に作ろうみたいなことを明確にしたほうがやりやすい。テレビは皆が見るとか、視聴率がとか・・・・テレビってみんなそんな感じですか?わからないけどやりきっているみたいな、「自分」なんですか?ニュースキャスターをやっているときって「自分」なんですか?「ニュースキャスターの○○です」っていうのを演じているんですか?仮面というか?


皆川:好き勝手なことは絶対いえないですよね。私情もあまり挟めないですよね。そして自分が毎日どのネタも取材できるわけではないので色んなディレクターが取材してくれたものを吸い上げて言うから・・・

井上:皆川が言ったことはある意味で「面白み」であると思っていて、窮屈な側面も局のアナウンサーの面白さであると思う。自分だけじゃない。番組によって違うけど100人、200人いるスタッフの思いもわかって、そちら側に立ちつつ、じゃあどう喋るか?ということが局のアナウンサーの面白さだと思う。タレントさんがそこにいると同じような立ち居地にはなると思うけど、最後は自分で背負って自分の言葉になる。僕らの場合は、どこか局の言葉でもある。それを窮屈さととるのか、面白みととるのか、それはこの仕事の面白さかな?と思います。


柿次郎:すごく良い真ん中の言葉でしたね!


井上:でしょ?

柿次郎:そういう環境の中でやりたいことが本当にやりきれているのか?やりたいことがそもそもあるのか?


皆川:やりたいことをできているかといわれたら、私はできていない。最初の1、2年は番組についていくのが必死で、今なら「もっとあのニュースのここを掘り下げたいな」とか、でもそれがすぐ出来るかといわれたら「自分ひとりですぐやります」とは言えない。


柿次郎:自信もてるまでの期間が結構キャスターは長いんですか?


皆川:まんべんなく取材をしないと自分の自信にも繋がらない。経験値ってすごく大切だなと思って。


井上:僕ら同じこと10年後も15年後も言っているのではと思う。ずっと言っているんじゃないかと。「やりたいことできてないですね」って。そこが(柿次郎さんと)違うところだと思う。やりたいことを楽しみながらやる仕事と、僕らみたいにやりたいことがあるけど、組織にいる者と。

柿次郎:僕らも「ニュース見たい」、「世の中を正しく知りたい」。フェイクニュースであるとかインターネットの偏ったものに触れすぎているので、そういう中でテレビっていうものが新しい形にどんどんアップデートできれば、もっとニュース見たいなと思うんですよね。

井上:「偏ることの面白さ」もあると思う。テレビはなかなかもちろん偏れない。放送法もありますし・・・。でもその中でちょっとずつ偏っている感じもある。それは人間がやるから偏る。でもそれをインターネットで「マスゴミ」だと言われる時代になってきた。僕らも「悩みながらやりたいな」とは思っている。自信を持ってやっているのではなくて、実は出ている僕も悩んでいるけど・・・ひとつの材料としてどうですかって。テレビが絶対という時代はもう終わったと思っているし。「これもひとつの意見として聞いてくれませんか?」というような感じなんですけど。それがいいのかもわからないし。偏るなら偏るでいいと思う。うちの番組はこっちなんですよって。

皆川:アメリカでもニュースキャスターが支持政党を明らかにしていたりしますもんね。

柿次郎:そうですよね。でも言いにくい空気はありますよね。損しちゃう?

皆川:日本はちょっと無理だよね・・・

井上:ニュアンスとして自分がどう喋るのか、ってのはもちろんあるけど。


柿次郎:SNSも含めて匿名性の高い声がそのままクレームになるじゃないですか?本来、クレームって全体の2~3%ならそんなに気にしなくて良いはずですけど、2~3%のクレームが大きな声になる。そういうところで視聴者の反応とか最近は?


皆川:信じられなくないですか?視聴者の声というのが遠いというか。「NEWS23」は捉え方が厳しいというか・・・


柿次郎:インターネットの「2ちゃんねる」(※現在、5ちゃんねる)とかああいうもので自分の評判とかチェックしたりします?エゴサーチでもいいけど。しないようにしている?


皆川:したことない。


井上:ツイッターとかも見ない?


皆川:見ない見ない。

井上:僕は見ますね。番組と自分のものは見ます。クレームが好きなんですよ。

皆川:自分に批判的な意見を頂くのも好き?

井上:う、うん・・・気持ち悪いね(苦笑)・・・でもこういう見え方がしていたのか~とか、自分はこういう意味で発言していたのに全然違う感じで捉えられているな~とかを気付けるときとか、「ふざけんじゃねえ!」と思う時とかもありますけど・・・

柿次郎:え!どんな意見ですか?

井上:ピンとは出てこないけど、あとは「あいつは生意気だ」とか「あの服はなんだ」とか色んなレベルであるけど、でも僕は見ますね。ずっと見る生活を続けてきました。でもそれでメンタルやられたな・・・と思ったらお褒めの言葉を見たりして(笑)

柿次郎:2018年で一番へこんだことは何ですか?

皆川:常に私は上昇しないわ。

井上:僕も下げないし、上げないっていう「逃げ道」を作っているかもしれない。

柿次郎:周りの同業者の方もそうなんですか?

皆川:アナウンサーは波が激しくないですか?

井上:激しいと思います。

柿次郎:だからこそ一定の状態においておかないと毎日週5で同じ枠で同じ番組をやり続けるは結構大変?

井上:自己防衛法なのかもしれません。上げないから下がらないし、あいつは一定だなと思われる。心の中では色々ありますけど、出すか出さないかは・・・

皆川:あの人機嫌悪いなって思われたくないじゃないですか?

柿次郎:感情を出さないほうが得策ということですか?

井上:・・・楽なときがある。


柿次郎:すべて一番ちょうどいいところっていう回答ですね。すごいな・・・と思っちゃいました。

柿次郎:まだまだ井上さんの仮面っぷりをはがして人間性を引き出したいですけど一旦ここで締めます。引き続き宜しくお願いします。

(後編につづく)

*****「Dooo!」*****


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