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365日・24時間 眠らないスタジオ ニュース×デザインの舞台裏④
現在、TBSテレビ報道局は、大規模なリニューアル工事を行っています。「ニュース×デザインの舞台裏」4回目となる今回は、365日・24時間、最新のニュースを届けている、CS「TBS NEWS」のSスタジオの話です。
《新Sスタジオ セットコンセプト》
24 時間、視聴者の皆様にニュースを送り続けるニュースセットは、“⽣活に⽋かせないような”・・・また“飽きのこない空間作り”が必要であると考え、「Interior design」や「Architecture design」を参考に、テレビセットっぽくならない、シンプルで⼤胆な形を取り⼊れ、普遍的なデザインを⽬指しました。
また、セットデザインとしてのみではなく、最終的な画⾯構成も強く意識して取り組みました。具体的には、
・画⾯上に出るスーパーなどの情報の邪魔にならないスッキリした背景
・キャスターをしっかり引き⽴てる背景
・とはいえ⼈の記憶に残る印象的な造形
・それでいて毎⽇接しても飽きのこないデザイン
そんな、ある種⽭盾する条件を可能な限り満たすよう、様々なプランを検討した結果、今回のプランになりました。
⼤胆な形に対して、⿊ラインの幅を数ミリ単位でこだわったり、⽊⽬の⾊にじっくり時間をかけて選択したり…と細部への配慮をする事で、シンプルで⼤胆な形でもクオリティの⾼いセットに仕上げる事が出来たと思っております。皆様の⽣活の中に⾃然と溶け込めるデザインになっていれば⼤変嬉しく思います。
《苦労した点》
「テレビセットっぽくないセット」を⽬指すために、インテリアデザイン・建築デザインの要素を取り⼊れたのですが、テレビセットにはテレビセットのルールがあるため、今回のセットはそれに反する部分があり苦労しました。
具体的に2つ例を挙げますと、「必ず」と⾔う訳ではないですが、セットを
描く際に、建てやすさ・作りやすさ等も配慮しながら描くので、多少なりテレビセットで使⽤する定式道具(よく使うサイズのパネルや平台等)を参考にしてテレビセットを描くのですが、今回の場合、“S スタジオに常設で、全てが新規”と⾔う事もあり、今まで蓄積してきた⾃分の中のセットデザインセオリーを壊して、デザインを進めなければなりませんでした。
まず、三⾓を1つ描くための「基準」が何もないため、⾃分がいいと思った三⾓のサイズを描き、そこから派⽣してデザインを描き進めました。デザイン案を完成後、キャスター1 ⼈・16:9 画⾓(テレビの画角)に合わせたイメージ写真を掲載したプレゼンシートを作成し打ち合わせに挑んだのですが・・・
「⿊太ラインがキャスターの頭に刺さっている」
と⾔うご指摘を受けたため、調整が必要となりました。ただ刺さらないように修正すればいいという訳ではなく、デザイン的に気持ちよく⼊れていたラインがNG となったため、再度「気持ちの良いラインの⼊り⽅」を研究し、それに合わせて周りの三⾓を調整していきました。
セット全体でカッコ良い構成と16:9 画⾯の絵⼒(エヂカラ)両⽅を成⽴させる為に、数センチ数ミリの調整を何度も⾏った事で、最終的に今の形へ導くことが出来ました。
2つ⽬の苦労としては、「シリース球」を⼊れている⿊太ラインに、常設インテリア感を出すためのアクリルカバーを被せました。しかしアクリルカバーを被せる事によって、テレビでは「映り込み」が懸念されるため、商業⽤で使⽤されている「映り込み軽減シート」を予め貼っていたのですが、通常のスタジオより照明が低い位置にある事と、セットと照明の距離が近かったために、アクリルカバーに照明が想像以上に映り込みました。
カメラの位置はほぼ決まっているため動かせず、何個か照明も調整頂いたのですが、その問題は解消されず、後⽇アクリルカバーを作り直す事となりました。最終的にアクリルカバーに勾配をつけて問題は解決されましたが、数センチ、数ミリの調整が必要であった事と、深夜作業であっため⼤変苦労致しました。
“ニュース”だからこそこだわる意味のあるデザインが、この“S スタジオニュースセット”で出来たのではないかと思います。
(アックス ⾕佳奈恵)