読書記録【哲学と宗教 全史(出口治明著)】
こんにちは。
皆さんは「哲学・宗教」と聞いたらどんなイメージを持つでしょうか?
「難しそう」
「わかりきっていることを分かりにくく言うな」
「宗教?怖くない?」
完全に偏見ですが、こんなところでしょうか?
かくいう私も理系の出身で、哲学や宗教にについて考えることはない人生を過ごしてきました。
正直学生時代は、
哲学・・・数式も使わないのに偉そうなことを言うなよ
宗教・・・正直気持ち悪いかも
こんな気持ちを持っていました。(偉そうに!!)
⓪なぜ今更哲学と宗教に興味を持ったのか?
そんな私がなぜ本書を手に取って読んでみようとなったのか。
ひいては軽蔑気味の「哲学と宗教」に興味を持ったのか。
一言で言えば、社会人として働くようになり、うまくいかないことに多く直面したからです。
多くの人間の思惑が絡み合い、顔色を窺うのが普通の社会。
無知なこちらに初見のルールを既知のように押し付ける。
責任転嫁もお手のものな人々。
数式のような綺麗な方程式は存在しない。利己とエゴの世界。
そんな生きにくさを感じる社会に対してついつい
「なんのために生きているんだろう」
と感じている最中、この本の【はじめに】で記されていた哲学と宗教が考えることについての言及に心が惹かれました。
自分は自然科学しか知ろうとしてこなかったなと感じました。
それぞれの時代で人々がどのように社会というものを捉えて生きようとしたのか。
その答えが哲学と宗教にあるのではないか。
知ることで何かが変わるのではないか。
そう思い、分厚い本書と「哲学と宗教」を知る旅に出たいと思ったのです。
①読んだ雑感
ページ数が400ページを超えており、含まれる知識の量が膨大なので
詳細を言及することは避けつつ、感想を述べたいと思います。
まず第一にめちゃくちゃ分かりやすいです。
哲学に造詣が深い筆者が噛み砕いて噛み砕いて、
入門レベルの読者でも理解できるように書いてくれていると感じました。
入門書としては分厚いですが、意外とサラッと読めてしまうと思います。
基本的には時系列で、各地域で生まれた哲学や宗教を解説してくれています。
印象的だったのは、解説する際に
・その思想が生まれたのはどのような時代背景だったのか
・支配階級、知識階級だけでなく市井の人々はどんな生活だったのか
上記をしっかり踏まえた上で、解説してくれています。
なので各時代の哲学や宗教が含む考え方がスッと腑に落ちる構成になっています。
人間が悩み苦しむことは実はどの時代も共通するものが存在している気がします。
各時代の人々が何に悩み、哲学や宗教を生み出していったのか。
そこに今の時代を生き抜くヒントを感じることができると思います。
決して啓発本のように押し付けがましくなく、自分で感じる余白がある分、
読むのが楽しい。私はそのように感じました。
②これからの哲学と宗教はどうなっていくのか?
本書の最後に出てくるのは、レヴィ=ストロースという哲学者です。
彼は構造主義を掲げ、人間は社会の構造に染まって生きるのだ、と主張しました。
「社会の構造が人間の意識を作る。完全に自由な人間なんていない」
この考え方は自然科学的に正解に近いとされている、と筆者は述べます。
さらにレヴィ=ストロースは以下のようにも述べています。
「世界は人間なしに始まり、人間なしに終わるだろう」
実はこの考え方も自然科学的に正しく、
地球の水が枯れた時、人間も同時に絶滅すると言われています。
「世界はどうしてできたのか、また世界は何でできているのか?」
「人間がどこからきてどこに行くのか?なんのために生きているのか?」
この問いかけに哲学と自然科学の衣を纏ったレヴィ=ストロースのドライな考えを提示して本書は終わりを迎えます。なんとも切ない終わり方です。
今人類は未曾有の科学進歩の時代に身を置いています。
何もかもがシステム化され、効率化され、数字上正しいことが
はっきりとわかる社会です。
一方ここ数年、ニーチェの哲学が人気を博している、と筆者は後書きで綴ります。
ニーチェは「神は死んだ」と断言して、それでも人間には強く生きる意志があると考え、「超人」の思想を生み出しました。
世界の終わり方、人間の在り方に自然科学が多くの答えを提示する時代に、
沸々と強く生きようとする人間の意志は生きている。
そう言いたいのかなと私は感じました。
本書という巨人の肩に乗って、皆さんも哲学と宗教の旅に出てみませんか?
きっと何か生きるヒントが得られると思います。
何よりも人類の考える力に驚嘆することは間違いないと思います。
貴重な時間を割いて、お読みいただきありがとうございました。
ぜひ皆様も読んでいただきどこかで語り合えれば幸いです。