スイカゲーム配信に見たゲーム実況のあるべき姿
最近Vtuberさんの間で大流行している「スイカゲーム」。いわゆる落ちものゲームであり、果物を上から落としていき、同じ果物同士をくっつけてより上位の果物に進化させたりしながらスコアを積み重ねていきます。フィールドからはみ出してしまったらゲームオーバーで、そのシンプルなルールから配信向けのタイトルであると言えます。
9月の中旬辺りから大手事務所所属の方々を皮切りに続々とブームの輪が広まっていき、今ではバーチャル界全体を巻き込む一大ムーブメントとなっているこの「スイカゲーム」。YouTubeを開けば常に誰かがこのゲームを実況しているような状況で、ブームが起こる瞬間をリアルタイムでこの目にしている感覚は興味深いものがあります。ちなみにこちらのゲームはNintendo Switch向けのタイトルとなっており、ダウンロードランキングでも堂々の1位に君臨。まだまだその人気は衰えることは無さそうです。
さて今回は、そんな「スイカゲーム」について、私なりに感じたことをまとめていこうと思います。やはり、バーチャル界についてnoteを書いている身としては、この話題に触れないのはおかしなこと。やや出遅れた感もありますが、お付き合いください。
大手事務所所属のVtuberから始まる流行の流れ
まず最近のバーチャル界は、大手事務所所属のVtuberさんから流行が始まることが増えているように思います。もちろん、そのVtuberさん達も他のストリーマーの方から影響を受けているというのはあるでしょうが、少なくともバーチャル界においては大手事務所所属の方々がきっかけと言って差し支えないでしょう。
「スイカゲーム」の前にバーチャル界で流行していたゲームとして挙げられるのは「漢字でGO!」でした。某クイズ番組で見たようなシステムのフリーゲームで、迫りくる漢字の読み仮名を当てていくという内容です。誰もが見たことのあるシステムが故にルールの把握が簡単で、尚且つ配信者の常識力・知能が如実に出ることから笑いも起きやすく、いわゆる「取れ高」が期待しやすいタイトルとなっています。それだけに、今回の「スイカゲーム」同様、一時期はYouTubeを開けばどこを見ても「漢字でGO!」ばかりという状況となっていました。
繰り返しやりたくなる「スイカゲーム」の魔力
ただ、今となっては「漢字でGO!」の実況を見かけることはほとんど無くなりました。爆発的なブームほど冷めやすいというのはあるものの、個人的にはその要因には“発展性の無さ”があるように思います。
「漢字でGO!」はクイズという特性上、1回、もしくは2回で終わってしまう場合が多いです。言ってしまえば「解いたら終わり」であり、それだけにシリーズ化して何度も続く配信ではありません。その為、瞬間最大風速としては凄いものがありましたが、冷めるのも早かったのかと推測します。
一方、「スイカゲーム」には終わりがありません。一応、3500点以上のスコアを目指すというのが一般的なラインとなっているようですが、それを越えたとしてもゲームが終わるわけではなく、新たな目標を設定し、再びプレーすることが出来ます。当然、目標の設定も決まりはなく「進化の最終形であるスイカを作る」などといった初歩的なものから「〇〇点以上を目指す」といった求道者的なものまで、レベルに応じた目標設定が出来るのもいいところ。徐々に徐々にステップアップ出来るのはよい設計と言えそうです。
定石を打ち崩すハプニング
大抵のゲームがそうであるように、「スイカゲーム」にもある程度の攻略法、定石のようなものが存在します。例えば、序盤においては野菜をサイズ順に並べる、メロンやスイカ等の大きなサイズの果物は中央を避け、端っこに配置するようにする等です。ただ、「スイカゲーム」が面白いのは、定石を知っていれば誰もが高得点を出せるというわけではないところ。
同じ落ちものゲームである「ぷよぷよ」や「テトリス」などの場合は「テンプレ」と呼ばれる手順で配置していけば誰でもある程度の段階まではいけるのですが、「スイカゲーム」には予想だにしないハプニングが起こり得ます。
「スイカゲーム」は物理演算がされていますが、それによって落とした果物が他の果物とぶつかったときに、飛んだり跳ねたりします。それによって予想外のタイミングで果物がフィールド外に飛び出してしまうことも頻繁に起こり得るのです。だからこそ、何度もプレイしているような方でもいつでも高得点を出せるわけではなく、そこにこのゲームの面白さ、そして繰り返しプレイしたくなる魔力があるように思います。ゲームオーバーになった後も「次こそはうまくいくのでは」と思えるような、丁度よいゲームバランスは見事です。
見て終わりじゃない、共に遊んで共有できる「スイカゲーム」
そんな「スイカゲーム」ですが、このゲームが発展を見せているのは、“見て終わりじゃない”こともあります。
元来、ゲーム実況という文化は、例えばRPGなどの作品において、いわゆる“実況を見てプレイしたつもりになった勢”を生み出すことが問題視されていました。「ゲーム実況が許容されているのは販促に繋がるから」という大義名分がありますが、RPG等はストーリーが最も重要な要素であり、そこを実況で見てしまったら自分で買うという人は多くないでしょう。一昔前まではグレーゾーンとして許されていましたが、最近はゲーム実況によるプラスの影響よりもマイナスの方が大きいことから、ゲーム動画の配信に規約を設けているタイトルがほとんどです。ゲーム実況はVtuberさんとしても大きな柱となる要素であるため、この問題は真剣に考える必要があるものと言えるでしょう。
その一方で、「スイカゲーム」に関しては、ゲーム実況のいい面が出ているように思います。
インフルエンサーが投稿した実況やプレイ動画で阿鼻叫喚している姿を見て、「そんなに難しいのか」と自らもプレイしてみたくなるという、ゲーム実況のあるべき姿がそこにはあります。「スイカゲーム」にはもちろんストーリーは無く、ネタバレを気にしないでよいこと、そして240円という超低価格であるということもあるため、一般的なタイトルと比較すること自体ナンセンスではありますが、2年以上前にリリースされたタイトルがゲーム実況者等のインフルエンサーの影響で爆発的な人気を得るという流れは、ゲーム実況というジャンルにいい風を吹かせているように思います。ゲーム業界が活発になる1つの要因となればいいですね。
そしてその流れはバーチャル界にもいい影響を与えています。「スイカゲーム」を推しがプレイしているのを見て、気になったリスナーが購入し、自分もプレイしてみる。そして自分でもこのゲームの難しさを共有するからこそ、推しがスイカを作ることが出来たとき、3500点以上を出すことが出来たときにより多くの喜びを感じることが出来るのです。推しと共にゲームの難しさや喜びを共有するのはとても楽しいこと。「スイカゲーム」はそれを教えてくれるような気がします。時間制限が無いというのも重要なポイントで、コメントを拾う余裕があらゆるところにあるというのも実況配信との相性の良さがあると感じますね。
気になる「スイカゲーム」の今後
気になるのは「スイカゲーム」が今後どのような展開を見せるかです。10月5日には100万ダウンロードを突破したことも伝えられ、この勢いを逃す手は無いように思います。このゲームを開発したAladdin Xは100万ダウンロードを記念したキャンペーンを実施することも発表しており、世界中のスイカプレイヤーとしても興味津々と言ったところです(ちなみに100万ダウンロードを突破したことによって作成された「スイカゲーム」特設サイトはこちら。配信規約等に関しても同時に制定され、同サイトに記載されています)。
また、開発陣によるとスマートフォンへの移植等は現時点では考えていないということですが、例えば対戦要素の追加など、ゲーム自体のアップデートはあるかもしれません。もしそのような要素が追加されれば、Vtuber同士の大会やリスナーとの視聴者参加での対戦配信などさらなる盛り上がりを見せそうです。ルールの整備等、難しい問題もあるかもしれませんが、一般プレイヤーである私も、ぜひともやってみたいところではあります。「スイカゲーム」の良さは時間に囚われず自分との戦いに没頭できるところにもあると思うので、ソロプレイヤーと対戦勢の住み分けが出来るような形が理想的ですね。
最後に
今回は、巷で大人気の「スイカゲーム」について記事を書き進めてきました。240円というお手軽さ、そして完璧な攻略法が(今のところ)存在しないからこそのうまくいったときの盛り上がり、そして何よりゲーム実況というジャンルとの相性の良さから、爆発的な人気を獲得した「スイカゲーム」。飽きが来にくいゲーム性であるため、暫くこのブームは続きそうです。また、そこにある“ゲーム実況のあるべき姿”は、ゲーム実況というジャンルに慣れ過ぎた私たちが今一度再確認するべきようなことを教えてくれたような気がします。
開発陣の“次の一手”によっては更なるブームにも繋がりそうな予感もする「スイカゲーム」が、果たして今後どのような展開を見せるのか。注目していきましょう。
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