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トランビ社員1号が卒業して得たものとこれから

2020年末を持ってトランビを退職しました。

トランビは事業承継・M&Aのマッチングプラットフォームを運営するスタートアップです。事業や会社を売りたい方とそれを買いたい方をマッチングするオンラインのプラットフォームを提供しています。

事業承継・M-Aプラットフォーム-TRANBI【トランビ】

私は社員1号として入社し、3年強働きました。本来、退職noteを書くガラではないのですが、ワタリユウタさんの記事を読んで感銘を受けたので真似して書いてみることに致しました。(ワタリさんから記事の型を拝借しております。いつかワタリさんとお会いしてお話できたら嬉しい!)

入社してからは、営業、カスタマーサポート、経営管理からプロダクトの開発まで、戦略策定からプロダクト開発、人材採用、ティール組織の導入など多岐に渡り取り組んできました。

もともと器用な方ではないのですが、会社とプロダクトへの愛とガッツで新しい分野にチャレンジして乗り越えてきました。
その生活も一旦ここで一区切りなので、まとめも兼ねてトランビライフを振り返ってみることにします。自分のまとめも兼ねているので少し長くなりますがお付き合いいただければ幸いです。

入社動機とやってきたこと

トランビに入社する前はVCやM&A周りの仕事をしていました。トランビに入社をしたのは下記の2つの理由からです。

①VCとして投資する側ではなく、自分もスタートアップの中の人としてチャレンジしてみたい

②VCの投資先探しやM&Aの相手探しも超非効率な属人的世界(当時は)。
他を見れば、自動車、人材、不動産と手数料の単価の大きい相手探しに価値あるモノはインターネット化している。そのうちインターネットで効率化する時代が来るのでは?という読み

①については、社員1号として入社して、資金調達を経て数十名規模になりました。山あり谷ありの濃厚なスタートアップ時間を満喫することができたように思います。

②は、100%そうなりきったかと言われると疑問符が付きますが、「ネットでM&A」という世界は確実に近づいてきています。まだまだ大規模のM&Aの世界ではマンパワーをフル活用してでご縁を成就させることも多いですが、小規模M&Aはオンラインマッチングプラットフォームの存在感は無視できないものになっています。

入社当時は「ネットでM&Aなんかできるわけながない」という論調でしたが、今ではM&Aマッチングプラットフォームは国や公的機関からもその成果を期待される存在となり、市民権を得たといってもいいででしょう。

そこに至るこの3年間、拡大するマーケットの中をスタートアップという船で働けたことは貴重な財産になりました。在籍中でユーザー数は20倍弱の成長をしました。

営業部長としてトランビに入社→カスタマーサポート責任者経営管理・企画部長プロダクトマネージャーと経験をしました。

それ以外にも役職には紐付かない仕事として、事業開発や他社とのアライアンス、人材採用からトランビの名物忘年会の企画までやる、要は何でも屋です。

組織に足りないものを行い(好き嫌いなく食べて)、必要があればそれを組織化して次に繋ぐことを繰り返してきた3年間だったように思います。

それぞれについて書いて行きます。

営業部長時代

時期:2017年後半~2018年前半まで(※時期は大人の事情で若干ぼかしてます)

全国の金融機関(地方銀行・信用金庫・信用組合)さんと会社を売りたいオーナーさんへの対面営業が主業務です。

金融機関さんは地場のネットワークがあり、その顧客の中には後継者問題に困る中小企業のオーナーさんもいらっしゃるため、その問題解決のためにトランビをご利用いただけないかというご提案をしておりました。

今ではトランビは数百の金融機関さんと提携していていますが、入社当時はまだ提携は始まっておらず、テレアポをして金融機関さんにアポイントをとって提案をして、フィードバックをもらって・・・を繰り返していました。

地方の金融機関さんでは、職員の方が一人一台パソコンを持っておらず支店に一台のPCを皆で共有して使っているところもあり、そこにインターネットのM&Aサービスのご提案するのはなかなか新鮮な経験でした。

金融機関さんのM&A経験やウェブ環境ごとに分類を行い、それぞれご利用いただけるようなソリューションの型を作成いたしました。

得たもの

・システムでやること、人力でやることを切り分けて、最適な型を見つけてビジネスを流れるようにする力
・インターネットのサービスを、インターネットが好きじゃない人(敢えて書きます)に上手に提案するスキル

CS時代

時期:2018年前半~

開拓した金融機関さんや一般のユーザーさんが増え社内でカスタマーサポートの必要性が生じ、カスタマーサポートチームの立ち上げを行いました。

問い合わせは、事業を売りたい方(売り主)、買いたい方(買い主)もいれば、そういった方を紹介してくれる紹介者の方からもいたただきますし、内容も「インターネットの使い方がわからない」から「事業譲渡と株式譲渡の違いを教えてほしい」(※業法を鑑みて正しく対処しております)まで、立場も内容もそれぞれの方から多くの声が届く環境でした。

事業承継を対象にしているサービスの特性もあり、高齢のユーザーさんでネットリテラシーが高くない方からの問い合わせも多く、サービスクオリティと工数のバランスをどう取るかが非常に難しかった記憶があります。

生まれてはじめて、電話で「メールアドレスを書いた紙をFAXで送ったので、そこにメールをもらえないか」と依頼を受けました。

頂いた質問をひとつひとつ類型化し、数の多いものやクリティカルなものから回答の台本を用意して対処できるようにすることを進め規格化と標準化を進めました。

併せて、寄せられる声の中からプロダクトの課題点を抽出し、それを開発側とシェアすることででプロダクトの改善に繋げました。
プロダクト開発における現場でのナレッジシェアの重要性を身を以て学んだときでした。(言うのは簡単ですが体現できるチームづくりはとても難しいんですよね…)

得たもの

・カスタマーサポート、カスタマーサクセスのイロハ
・ユーザーコミュニケーションの方法
・ユーザーボイス↔プロダクト改善をインタラクティブに行える組織づくりスキル

管理部長時代

時期:2018年前半~2019年中頃

社員も徐々に増えていく中でバックオフィス部門の必要性が増し、それに対応するために経営管理部門が新設され、そこを担当することになりました。

経営管理といっても簡単にいえば「営業と開発以外は何でも担当」の部署で、総務、経理、財務、人事、法務などをまとめて対応します。

各種規定の作成や各業務のオペレーション設計・運用を行う中で、上場を見据えながらも「スタートアップの良さを殺さない管理のあり方」を日々考えていました。

また、大型の資金調達を発行体側として経験しました。
2018年の夏にトランビは約11億円の資金調達を行いましたが、資料作成、折衝、調達実務、その後の株主とのコミュニケーションまでを担当しました。

得たもの

・スタートアップとして”ちょうどいい”バックオフィスの立ち上げ方
・二桁億円の資金調達の経験と実務スキル

※資金調達伴ってオフィス移転(手作り)

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プロダクトマネージャー時代

時期:2018年夏頃~

2018年の夏ころにそれまでの開発の責任者が、部署を移動せざる得なくなり開発を離れることになりました。
詳しく書くことは避けますが、組織が大きくなる中での人間関係と、サービス開発の進め方に起因するものです。

今まではHTML/CSSやJavaScriptを少々かじった程度で、簡単なサイトや、コードを書いたことはありましたが、それも趣味程度です。
本格的にウェブでサービスを提供するのは初めての経験でした。今振り返えれば、当時は右も左もわからない中で”レガシーなシステム開発”的発想で取り組んでいて(今はちょっと良くなったはず)、プロダクト開発チームにはご迷惑をおかけしました。また、ここに至るまで支えていただき感謝しています。

プロマネをする中で感じたことは

①ウェブでユーザーさんに伝えることのお作法、難しさ
②システムを構築する上で求められる精緻さ(営業の精緻さとは全く別)
③企画側、ビジネス側、開発側での、”世界の見方”の違い

などがありますが、月並みながら、特に③はスタートアップでのサービス開発を考える上でとても大きな要素だと感じています。

少し話が逸れますが、私自身がビジネス側と開発側の両方をやった上での私見としては、スタートアップにおいては、ビジネス側、開発側とか変にこだわらず、双方で可能な限り相互交流が行われるべきだと考えます。
乱暴にいえば、✕✕側という発想をなくして、一つの「サービスグロースチーム」として営業でも開発でも何でも必要なことは選り好みせず取り組んで行く姿勢が求められると思います。(すくなくとも社員が20人程度のスタートアップに於いては)

サービスをグロースさせ、ユーザーさんに届けられる価値を最大化できる体制を考える中で、アジャイル開発体制の導入、ティール組織の導入にもチャレンジしました。ティール組織に関しては代表の意向もあり、結局導入せずに終わりました、”日本でティール組織やっているといえばココ”という会社にも複数お話を伺う機会があり大変学びが多かったです。

事業承継・M&Aプラットフォームもしかり、特にこれまでだれも取り組んだことがない・成功の勝ちパターンが確立されてないサービスやプロダクトの運営においては、外部の環境(マーケット、ユーザー)から継続的に学んでいくことが欠かせません。現場が答えをしっており、現場が自走する仕組みを構築することが肝要で、この仕組みの構築に力を注ぎました。

その仕組みとともに、各現場それぞれで自走するベクトルが揃うためには、組織の目指すべき方向の北極星となる”ミッション”やそれを達成するための具体的な意思決定の範となる”行動指針”が必要になります。トランビにもミッションや行動指針がありますが、それを”自分ゴト化”するのはまだ道半ばだと思っています。少し心残りですが、残った皆さんで体現してくれればと勝手ながら思っています。

得たもの

・プロダクト開発のススメ方
・プロダクトマネージャーの業務、責任の果たし方
・アジャイル開発、ティール組織、リーンスタートアップという不確実性が多い環境で現場力を活かす手法

全体を通して

3年間を通じて特に学んだことを書きます。

マルチサイドプラットフォーム運営について

・対象となる顧客は誰か
・トランビのコアインタラクションはなにか
・売り手/買い手に利用してもらうにはどうすればいいか
・各サイドのユーザーを集める上での”にわとりたまご問題”をどうすべきか
・プラットフォーマーとして望ましいユーザー行動とはなにか
・それをユーザーが自然にとり得るようなルール作りや施策はなにか
・中抜き(チート)対策はどうすべきか
・課金ポイントはどうすべきか
・プラットフォーマーとしてM&Aプロセスにどこまで関与すべきか

上に例をあげましたが、マルチサイドプラットフォームは考慮すべき変数がとても多く、あちらを立てればこちらが立たず的になりがちです。

意思決定の中ですべての指標を闇雲に追うのではなく、プラットフォームとして実現したい世界を数値化してそれに連関する指標をブレずに追いかけていく姿勢が重要です。(この正しい指標探しと、信じる姿勢が一番難しいのですが)

ミッション・行動指針・採用について

トランビ在職中に一番難しいと感じたのは採用です。
非常に優秀で楽しい人達が集まっているにも関わらず、退職につながってしまうこともありました。在職中の環境や制度もさることながら、一つのチームになるうえで採用の段階で整理しておけば、結果は違ったかなと思うことは振り返れば多くあります。

・ミッションや行動指針(組織運営の方法)などはきちんと言語化しておく
・お願いしたい仕事(ジョブディスクリプション)は定義する
・個人が目指すものと、組織のミッションやお願いしたい仕事が一致するか
・組織の行動指針と個人の求める働き方、裁量があっているか
・社内の評価や立場より、プロダクトの成長を優先できる人か
(※尤も、プロダクトの成長と、社内評価がなるべく一致するような制度設計になるべくすべき)

中でも、ミッションは組織の求心力の根源ともなるものです。事業内容はピボットできますが、ミッションはピボットできません。言語化するのは難しいのですが、採用を行う組織としてビジョンをチーム全員が腹落ちするレベルで定義しておくことが大切だと思います。

終わりに・今後について

もっと簡単に書くつもりでしたが書いたら随分長くなってしまいました。ここまでお読みいただいてありがとうございます。

私自身の今後ですが、スタートアップやスモールビジネス向けに、資本政策作成や資金調達の支援、新規事業開発、M&Aのサポートを行うティールバンク株式会社を設立しました。
すでに幾つかのご支援先は決まっておりますが、お仕事の御依頼も大歓迎です。その他、これからスタートアップにチャレンジしたい!という方やプラットフォームビジネスよくわからん!といったご相談もお気軽にご連絡ください。(苦手なTwitterはじめました

トランビの皆さんへ

3年とちょっとの間ですが、ありがとうございました。

公開している場所に書くのは憚られる部分も有りましたが、感謝を見える形で伝えたく、普段あまり表に出ないし、Webで文章を書くタイプではないですが、したためてみました。

今回、トランビを離れることになり中の人ではなくなりますが、トランビのサービスへの愛は薄らいではおりません。日本の後継者不在問題を救える社会的意義の高い事業です。全力応援しています。

来年のトランビは組織的にも大きなモデルチェンジをし、より柔軟に、よりフットワーク軽く運営ができるようになると信じていますし、そのスピードに期待をしてやみません。

そのうち家の実家の魚屋も乗せるかもしれませんのでその時はぜひお願いします!

ありがとうございました。

桃井

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