フルーツ宅配便

シマ:6月5日

この交換日記を始めた頃にスイカを配る話を書いた。妻の実家のスイカ農家から沢山送られてくるスイカを捌くという話だ。
今年もスイカが送られてきた。送ってくれるお義母さんはあっけらかんとした性格の人で、
お義母さん「スイカ送ったよ。」
妻「いくつ?」
お義母さん「わからん。箱に入るしこ(入っただけ)。」
といった具合だ。
宅配業者から受け取った段ボールは、何かの全集でも入っているのではないかと思わせる重さで、腰に疾患のある人であれば一撃間違いなし。
段ボールを開けると、箱の中に充満していた温まったウリ科特有の青い匂いが拡がった。熟した事を誇るような深い緑色の玉が、箱に入るしこ入っている。
九玉だった。
具体的に数を予測していたわけではないが、九玉を目の前にして多いと感じた。
「ドラゴンボールだったら願い叶ってお釣りがくるね。」という自分なりに気の効いた事を言ったつもりだったが妻には響いていなかった。
さて、九玉。昨年は五玉だったので一年で約倍の数になった。
傾向から判断すると、来年はさらに倍になり二十玉弱になるか、単純に四玉増えて十三玉になるかだが、いずれにせよ二人暮らしの我々が持て余す数である事に変わりはない。
早速「スイカをもらってくれそうな人リスト」を作成し、休日に合わせて宅配の段取りを考えた。昨年は原付バイクで宅配したが、今回は数量とルートからレンタカーで配る事にした。
東は麻布十番、西は玉川上水までトランクにスイカを乗せてドライブ。
一玉ずつ里親にスイカを手渡しし、ぱつぱつだった段ボールに徐々に余白が出来た。その余白を利用してスイカが転がり、スイカ同士がぶつかる「ゴッ。ゴッ。」という音が車内に流れるSMAPの邪魔をするので、車を止めて固定したりした。
サトシのアトリエのあるつつじヶ丘にも持っていった。
サトシはどこで手に入れたのか尋ねたくなる程、着丈の短いTシャツを着ていたが似合っていた。
昨年スイカを渡した際にお裾分けしたという隣の家のおばさんが、たまたま在宅されていたのでその場でカットしお裾分けしていた。
おばさんは「私はスイカが好きで今まで色々なスイカを食べてきたけど、去年頂いたスイカが一番甘くて美味しかった。」という事をおっしゃったので、
「いつも持て余しているので、おじゃまでなければ来年は一玉余計に持ってきます。」と返したが、実はこの家は建替え中に住んでる仮の住まいで明後日には引っ越す。とのことだった。
せっかく見つけた顧客を手放した様な気持ちになった。
そんな事もあるのか。
来年もスイカが送られてくる。何玉かはわからないが、それまでにスイカをもらってくれる知り合いを増やしておく必要がある。


スイカは野菜。

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