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休校要請から~その④ 休校特別措置「出席停止」ってなんですか?

 コロナ感染拡大防止対策に伴い、一斉休校要請が出され、次々と学校運営ガイドラインが更新されてきました。そのなかで耳にするようになった単語に「出席停止」があります。「出席停止扱い」というフレーズも目にしました。ホームスクールの我が家は一条校に在籍する不登校児童生徒でもありますので「出席扱い」の単語にはよく出会いますが、「出席停止」とは穏やかでない・・・。そんな印象でした。どんな状況で、どのように必要なことなのでしょうか。その周辺を整理してみます。

関連note:『休校要請から~』シリーズ
休校要請から~その①学習支援サービス無償提供~
休校要請から~その②公教育と平等性~
休校要請から~その③「休校延長」と「学校再開」の間~
休校要請から~その⑤「休校特別措置」と「不登校支援の在り方」の狭間で
休校要請から~その⑥ リモート学習と家庭学習の発展(前編)



指導要録の記録内容ー出欠の記録

 「出席停止」とは、どこで使われるものでしょうか。それは指導要録に記録する《出欠の記録》のなかにありました。

 学校教育法施行規則<第24条>(指導要録)
(1)校長は、その学校に在学する児童等の指導要録(学校教育法施行令第31条に規定する児童等の学習及び健康の状況を記録した書類の原本をいう。以下同じ。)を作成しなければならない。
(2)校長は、児童等が進学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の抄本又は写しを作成し、これを進学先の校長に送付しなければならない。
(3)校長は、児童等が転学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の写しを作成し、その写し(転学してきた児童等については転学により送付を受けた指導要録の写しを含む。)及び前項の抄本又は写しを転学先の校長に送付しなければならない。

参照)ホームスクーリング・センターkokage
知っておきたい用語「指導要録」


 《出欠の記録》には下記の内容があります。(リンクは小学校指導要録様式例を見ることができます。そのほかの指導要録、様式例。)

〔授業日数〕 1年間で授業をした日数
〔出席停止・忌引等の日数〕 
感染症などで出席停止になったり、忌引で欠席した日数
〔出席しなければならない日数〕
授業日数から、出席停止と忌引の日数を引いた日数
〔欠席日数〕
病気や事故などで学校を休んだ日数
〔出席日数〕
出席しなければならない日数から、欠席日数を引いた日数
〔備考〕
出席停止や、忌引に関する説明。欠席の理由を記入する。


出席停止制度の観点と目的

 「出席停止」とは、通常、どのようなときに適用されるものでしょうか。そして、適用されるとされる状況とはどのようなものがあるでしょうか。

 

市町村教育委員会がその保護者に対して,児童生徒の出席停止を命ずることができます。(学校教育法第35条)。
 この出席停止制度は,本人の懲戒という観点からではなく,学校の秩序を維持し,他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられています。


学校保健安全法施行規則

 

第18条(感染症の種類)
第19条(出席停止の期間の基準)
第20条(出席停止の報告事項)

第21条(感染症の予防に関する細目)
校長は、学校内において、感染症にかかつており、又はかかつている疑いがある児童生徒等を発見した場合において、必要と認めるときは、学校医に診断させ、法第十九条の規定による出席停止の指示をするほか、消毒その他適当な処置をするものとする。
2 校長は、学校内に、感染症の病毒に汚染し、又は汚染した疑いがある物件があるときは、消毒その他適当な処置をするものとする。
3 学校においては、その附近において、第一種又は第二種の感染症が発生したときは、その状況により適当な清潔方法を行うものとする。


児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査項目のひとつ

 文部科学省では児童生徒の問題行動・不登校等について、今後の生徒指導施策推進の参考とするため、毎年実施しています。「出席停止」はその調査項目のひとつにあります。

調査項目(調査対象)
(1)暴力行為(国公私立小・中・高等学校)
(2)いじめ(国公私立小・中・高・特別支援学校,都道府県教育委員会,市町村教育委員会)
(3)出席停止(市町村教育委員会)
(4)小・中学校の長期欠席(不登校等)(国公私立小・中学校,都道府県教育委員会,市町村教育委員会)
(5)高等学校の長期欠席(不登校等)(国公私立高等学校)
(6)高等学校中途退学等(国公私立高等学校)
(7)自殺(国公私立小・中・高等学校)
(8)教育相談(都道府県・指定都市・市町村教育委員会)

出席停止調査内容
1出席停止の件数の推移
2学年別・男女別件数の推移
3期間別件数の推移
4理由別件数の推移
 理由区分;対教師暴力、生徒間暴力、対人暴力、器物破壊、授業妨害、いいめ、その他

 この調査は「問題行動調査」ですので、感染症等による出席停止命令は問題行動ではありませんから、数値として含まれているかどうかは定かではありません。もし含まれるとすれば令和元年および2年度調査には数値として大きな反映があると予想されます。
 一方、調査項目のひとつに「長期欠席」があります。長期欠席の理由区分は、〔病気、経済的理由、不登校(欠席日数別)、その他〕です。休校期間中は、授業日数が無いのですから、統計上は長期欠席者数は「0」になるということかもしれません。出席停止扱いであれば「欠席」にはなりませんし、長期欠席者数の統計はこれまでとはちがった推移が現れることになるのでしょう。この点については「不登校」「長期欠席」「感染予防対策による出席停止」の数値にあらわれる現象はなにかを読み解く必要もあるかもしれません。
 

 出席停止扱いとなった「学校に行かない・行けない」児童生徒においては「このまま不登校になるのではないか」と懸念する声や「隠れ不登校」なる単語まで登場し、潜在的不登校が顕在化することに懸念を示す傾向も見受けられました。今後、調査項目や観点に検討がされる可能性もあるかもしれませんね。その目的は、今後の生徒指導に役立てるためであることには違いありません。
 しかしながら「不登校へ移行する懸念」や「隠れ不登校」という見かたは、不登校への無理解を如実にあらわしています。不登校は問題行動ではないからです。そのことは文科省も古くから認識していることでありながら、世間には周知されていない事実です。

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