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「いきる」 由紀さおり
40周年を記念してつくられた由紀さおりのアルバム「いきる」(2009年)はとてもいい。
「いきる」事の表も裏も、酸いも甘いも歌う。喜びも歌うが、それにつきまとう哀しみも歌う。けだるさや怪しさや残酷さも歌う。さまざまな人を演じる。
それでいてアルバム・ジャケットは実に力強くポップだ。あるがままを受け止めた上で「いきる」事を肯定的に捉えているかのようだ。歌にもそんな力強さが溢れている。いろいろあるが、生きている限り、なんとか飯を食ったり用を足したりしている。そういう生き物に対する諦めにも似た信頼が、この人にはあるように思う。それを直接は歌わないところに、素直な底意地の悪さを感じる。それは同時に深い優しさでもある。別れもそっと受け止める、そんな優しさ。いい歌手だ。バックのアレンジもそんな歌を引き立てる。名盤です。
P. S. 2017年11月にinstagramは(philosophysflattail)に書いた記事を少しだけ手直ししたものです。今読むと、ずいぶん乱暴な文章な気もします。しかしこのアルバムについて、これ以上ほかに書きようがないとも思え、ほぼそのままにしました。母と同世代の由紀さおり。映画「家族ゲーム」(1983年)での名演技を思いだしながら。