2022.08.07〜今日のハチミツ、あしたの私〜
ひょんなことから、縁もゆかりもない恋人の故郷で、蜂蜜園を手伝うことになった三十歳の碧さん。次々と降りかかる災難に挫けそうになりながらも、碧さんらしい生き方とその地盤をしっかり作り上げていく物語。
じぶんの居場所も、その居心地のよさも、口を開けていて転がってくるものではない。己の鍬で耕していくしかないのだ、ということを、あらゆる登場人物が、語り口と生き様でもって教えてくれる小説でした。
碧さんに降りかかるトラブルは絶え間なく、とてもリアルで、人生ってうまくいく事ばかりじゃないよね、という至極当たり前のことをチクチク心に刺してくる。
でもだからこそ、日毎やってくる「どうにもうまくいかない」に備えて、私達は栄養のある美味しいものを食べ、大切な人と笑い、心身を養っているのだと思う。
にっちもさっちもいかない。そんな時にゆっくり読みたい一冊です。