見出し画像

2022.12.16〜ニュートリノの夢〜

2002年にノーベル物理学賞を受賞した、小柴昌俊先生のエッセイ。ポリオに苦しんだ少年期、学問や恩師との出会い、研究に邁進する日々とノーベル賞受賞、財団の創設など、物理学に尽くした人生がユーモア溢れる文体で綴られている。

最も驚いたのは、小柴先生が物理学科を受験した理由が、高校時代の物理の先生に「あいつは勉強しないから物理学科なんて絶対入らないだろう」と言われ、絶対に見返してやると決めたから、というものだった。それまでの小柴先生はどちらかというと文学少年で、ドイツ文学の専攻を考えていたらしい。そんなきっかけがノーベル賞までつながっていくのだから、人生って何が自分を導くのか本当にわからないな……と驚かされてしまった。

私は研究業界についての知見、正しく理解できていない可能性もあるが、小柴先生は物理学へのロマンを胸に抱きつつも、研究生活自体はかなり戦略的に行っていたようだ。組織間調整や資金集めの苦労などといった、サラリーマンにも共感できる場面も多い。
ポリオによる身体ハンデキャップがあり、家も貧しかったため、なんとしても学問で身を立てなければならない、という切迫した心情がそうさせていたのだと思うが、そうした研究者の泥臭い面を背負いながらも、ユーモアとお酒を忘れずに毎日を走っていく小柴さんの姿には、とても勇気づけられる。

しかしこの本の表紙はなぜこんなにも某英語塾を彷彿とさせるのか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?