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僕がLinkedinのアヤシイDMに返信する理由

LinkedinのヤバいDM

今日、Linkedinで強烈なDMのやりとりがあった。

アジアの某国(Linkedinは実名制で居住地も公開されるので実際にはどこの国の人かわかっているのだが)の人と、DMで次のようなやりとりをした。

以下、実際にはすべて英語のテキストで行われた会話である。
※ 某=DMを送ってきた某国人、ぼ=僕

:Hi
:Hi
:どこの国の人?
:(質問する前に俺のプロフィール読めばわかるんだけどな…質問の意図がわからん)日本だよ。
:素晴らしい。あなたの会社でエンジニアのポジションはある?
:(あー求人探し系か…)日本に移住を計画しているの?
:そう、日本に移住を計画しているんだ。エンジニアのポジションはあるかい?
:(なんか英語がおかしいな?まあ英語力は人それぞれだからな…)あるけど、探しているポジションでは日本語の能力がかなり必要なんだ。
:OK. No problem.
:(日本語出来るってこと?プロフィールのスキル欄には日本語のこと書いてないけど…?)日本語の教育を受けたり、日本語でビジネスを経験したことがあるの?
:ポジションの詳細を教えてくれ。Visaを探しているんだ。
:(は?Visaを「探している」ってどういうこと?)
:あなたの電話番号を教えてくれないか?yeah すぐに会話したいんだ。
:(え、コイツヤバくね?)
:仕事の詳細を教えて。 yeah Visaを探しているんだ。
:(ていうかやっぱり英語の文法おかしいな。そしてちょいちょい入ってくるyeahってなに?)すみません。そのような問い合わせには対応できませんので、ご了解ください。
:xx-xx-xxxx-xxxxこれがわたしのWhatsupだ。yeah いますぐコールしてくれ。
:仕事の詳細を教えてくれ
:お前がVisaをおくってくれれば yeah  meはVisaを取得できるんだ。
:(え?もしかして俺のことを違法就労のブローカーかなにかだと思ってるのか?頭おかしいし、もはや犯罪の気配すら感じるんだが…)

というやり取りの末、某さんをブロックしてこの会話は終了した。

Linkedinではこれまでも似たようなDMがあり、ときどきエキセントリックな内容もあるのだけど、これは今まででダントツにヤバかった。この記事も、このヤバいDMに出会った興奮の余韻で書いている。


LinkedinのDMに送られてくる「相談」

5年くらい前からLinkedinを利用しているのだが、今年に入って外資に転職してから、友達申請もDMも5倍くらい増えた。やはり、海外の人がビジネス上のネットワーキングに使うことが多いようだ。
じっさい、僕が外資に転職したきっかけもLinkedinのDMだった。

送られてくるDMの内訳は

  • 「あなたの会社に貢献できるソリューションがあります」系の商談のお誘いが50%

  • 転職エージェントやヘッドハンターからの求人紹介が30%

  • 不動産投資の勧誘・詐欺まがいのやつが15%

くらいだと感じている。僕はそのほとんどを無視している。
そして残りの5%くらいを、今回のような「日本で仕事を探しているんだけど」系の相談が占めているのだが、この手のDMにはなるべく返信するようにしている。

今回のようにヤバい奴のヤバい行動に巻き込まれる可能性もあるので本当は無視したほうが良いのだろうが、なかにはかなり真剣に日本での就職について相談してくる人もいるので、いちおう返信している。

「どうやって職を探すのが一般的か?」と問われれば「僕の友達の海外出身のエンジニアはこういう風に職を見つけていたよ」と返したり、「日本語の能力はどれくらい必要か?」と問われれば「必須だしレベルが高いに越したことは無いが、求められるレベルはそれぞれ。僕の知り合いは仕事をしながら徐々に日本語を習得していたよ」とか、いちおう真面目に返している。(「あくまで僕の知っている範囲の話だけどね」と、いちおうの留保付きで)

ちなみに相談してくる人はいまのところ全員、僕と同じ専門分野のエンジニアだ。
英語が堪能でエンジニアとしてのバックグラウンドもある外国人が、今の日本に移住して職を求めることにどれだけメリットがあるのかは、正直分からない。しかし、本人が(どこまで本気か分からないが)移住したいと言っているのだから別に止めることもないだろうと思っている。

このDMのやりとり、ぶっちゃけ僕には何の得もない。得はないのだが、僕にとってはある種の「恩返し」だと思ってやっている側面がある。


海外出身のエンジニアたちと働いた経験

僕は新卒から8年弱のあいだJTCで働いたのだが、そのうちの1年ほど、多くの海外出身エンジニア(大半が日本語をしゃべれない)と仕事をしていた時期があった。

ほぼ内需と日本語だけで成り立っている日本の建設業界ではかなり珍しい経験に恵まれたと思う。当時ろくに英語も出来なかった自分にこういう貴重な機会を与えてくれた会社・当時の上司には感謝している。

会社・上司への感謝はもちろんなのだが、僕がなにより感謝しなければならないのは、一緒に働いてくれた海外出身のエンジニアたちだと思っている

当時の僕は、4-5年実務経験を積んでいっぱしの技術者になったつもりになっていたし、自分のスキルにはそこそこ自信を持ち始めていたので、人によっては鼻持ちならないやつだと思われていたような気がする。

生意気なわりにはロクに英語も出来ず、ミーティングでは大いに迷惑をかけた。驚くべきことに、当時はMinuteもScopeも、言葉の意味すら知らないまま普通にビジネスミーティングに出たりしていた。
海外のビジネス慣習もよく知らなかったので、曖昧な指示でチームを混乱させたこともあった。

自分だけ英語が出来ないのは恥ずかしかったし迷惑をかけている自覚もあったが、とにかく必死だった。

彼らとの仕事を通じて僕は大きく成長できた。

打ち合わせについていけるようになりたくて、この時期にめちゃめちゃオンライン英会話に取り組み、英語力が飛躍的に伸びた。クリアーな言葉で簡潔に説明する・資料を作るビジネススキルも身についた。

なにより、異なるバックグラウンドの人たちと働くことの難しさと面白さを学べた。

コロナ禍の初期だったので海外からきた彼らにとってはストレスフルな時期(それに加えて僕みたいなやつの相手をするというダブルパンチ…)だったと思うが、基本的にはみなフレンドリーで、自分の心の狭さを実感する経験にもなった。マジで感謝しかない。


あのときの経験がなかったら

彼らのうち何人かは、いまでもSNSでつながっている友人になった。

転職するときにメッセージをくれた友人の中に「日本の建築について教えてくれてありがとう」と言ってくれた人がいた。
別に教えたつもりはないし単なる社交辞令かもしれないが、とにかく英語を使う機会を増やしたくて彼らと勉強会をやっていたことがあったので、それが印象に残っていたのかもしれない。

仕事を通して「やってて良かった!」と心底思ったことは片手で数えられるくらいしかないのだが、僕にとってはそのうちのひとつに数えてもいいと思える出来事になった。

あの時期の彼らとの仕事の経験がなかったら、僕の人生の可能性はいまよりもずっと貧しかったと思う。


だから僕はDMに返信する

「あの時の経験をさせてくれた人たちに、少しでも自分が還元できることはないか?」と常に考えている。

僕がアヤシげなDMにも一応返信するのは「日本で働きたい」と言っているLinkedin上の人物が、かつて自分が一緒に仕事をしたエンジニアたちに重なって見えるからだ。
異国の地での就職を夢見るLinkedin上の彼らとDMをしていると、かつて一緒に仕事をしたエンジニアたちと、間接的にやり取りをしているような感覚になる。

Linkedinでやり取りをした人のうち、誰か一人くらいは本当に日本移住を決行し、日本で働くという目標を達成するかもしれない。
その過程で、僕のアドバイスが少しでも彼らの役に立ったり背中を押すきっかけになっていたら嬉しい。

いつか一緒に仕事をする機会があったら、それは望外の喜びだ。


そんなわけで今日も明日も、DMが来たら一応目を通すし、気になった人には返信するし相談にも乗る。

独りよがりだけど、自分なりの「恩返し」のつもりで。




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