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農的暮らしに関する散文(1)

農的暮らしとは何だろうか。

農的暮らしの体系は、”Permaculture”としてまとめられているが、
そこでベースに謳われていることは、自然と共に暮らしてきた民族であれば誰もが理解できる自然の摂理とも言える。

伝統的な生活(農業)の知恵を学ぶこと。
それは単に作物を効率よく育てるための技術ということではない。
隣人との関わり、土地との関わり、そして農と暮らしが複雑に絡み合って、一つのシステムを成していたことを知ることから始まる。

住の思想 人間選書 | 白砂剛二

本書は伝統的な日本の農山村の暮らしがどのようなものであったのか、またそうした農山村の暮らしを崩壊させた<近代化>とはいかなる暴力であったのか、痛烈な批判を込めて書かれている。

<近代化>批判はさておき、土地の環境容量を最大化させて使っていた日本の「ふるさと」が、いかなる知恵を持っていたのか、いかにシステムをなしていたのかを”Permaculture”の文脈に引き直して捉えていきたい。

写真は小値賀島に旅行に行った際に撮ったもの。小さな島に牛が放牧されていた風景が印象的であったが、白砂剛二氏によれば小値賀の伝統的な農業の特徴は栽培する作物の種類が非常に多いことであり、大規模な機械化に頼らない農があった。見渡す限り牛という景色は、実は島が<近代化>の波に煽られながらたどり着いた結果であるとも言える。

People Care 人への配慮

”農民が作物を作るのは、自分たちの地域の食糧を確保し、その経済を維持するためだけではない。働くことができるためでもあった。(住の思想 p185)”

土地と人間集団が絡み合った生産活動は、手間がかかるものである。そのためには多くの手が必要であり、それは同時に意味ある仕事がたくさん残されていることを意味している。

農業の近代化は、安定した農家のみに焦点を当て、老人や子どもといった弱い担い手たちが農業に参加できる余地をなくしてきたのではないだろうか。

土地を<共有>し、ベーシックインカムならぬ、ベーシックワークがあり、誰もが生き甲斐を感じながら生きていけるのが農的な暮らしであった。

Fair share 資源の分かち合い

最近ではギフトエコノミー(贈与経済)を都市部でも実践していきたいという声があるが、元々は農的な暮らしの中で当たり前になされていたものである。

というのも、農というのは、①作物というものは貨幣のように価値を保存できず、②多くの手が必要なものであるから手伝ってもらうとお返ししたくなるものであり、③生産量をコントロールしきれないから、余剰が出るものである。
そうすると、農的な暮らしでは自然とギフトエコノミーに”なる”のだ。

小値賀島では、おすそ分けや、お返しといった習慣が今でも盛んである。
移住した若者の話によれば、いつも野菜や果物を貰いすぎなので現金ではないものでお返しするのが大変、なのだそうだ。

ヒトは基本的にはギフトが好きなのである。自然に出てしまう余剰を分け合うことが、ギフトエコノミーの中核にある。

Earth Care 地球への配慮

農的な暮らしとは、土地本位な生き方である。
その土地が持っているポテンシャルを最大限に引き出そうとした結果、多くの仕事が発生し、子供から老人まで総動員の意味ある活動が始まるのである。

そして、土地本位の生き方とは地球への配慮を欠かさない。
長崎のある部落では、ユドネと呼ばれる浄水設備付きのレンコン畑がそれぞれの民家に備わっていたという。
台所の流しと風呂場からの排水が流れ込むようにしてあり、有機物を多量に含んだ生活排水は、ユドネの浅い水槽のところで日光と空気に触れながら泥水中の好気性菌の活発な作用で無機質に分解される。そうしてゆっくり時間をかけて流れていく過程で、水は浄化され、水田へとつながっていくのである。

自分たちが食べる作物に良くないものが混ざっていては、困るのは自分である。そういう意味では、繰り返し目の前で経験される暮らしの出来事が、暮らし手を地球への配慮へと向かわせるのだ。

また、白砂剛二氏は”空き缶や空き瓶が捨てられるのは、部落の人の共同意識が弱まったからだ、とは言い切れない(住の思想 p68)”と指摘している。
今まで農村でめったに使われなかったビニール・ガラス・鉄・コンクリートが急激に入り込んだおかげで、農家がそれまで持っていた浄化システムが機能しなくなったからだというのだ。地球への配慮もまた<システム>であることから、ゴミ捨ての意識を変える、といった<部分>では本質的な解決にならないのである。


新しい生活に向けての試論

さて、住の思想からさらに思考を延長させて、
これからの暮らしをどう作っていくのか、考えてみよう。

学びは実践を通して身になるのだから、本の内容をまとめることは学びの種に過ぎないが、より実践に移しやすいまとめが必要である。

① 余剰を生み出す
 余剰はお金ではないものの方が良い。料理を作るでもいいし、菜園をするでもいい。ついつい作り過ぎて、困っちゃうからあげるわ、くらいが丁度良い。

② 小さな循環を試す
 水道・ガス・電気。廃棄物に着目して、出来るものから小さな循環の仕組みを作ってみるのが良い。僕は微生物のことを知ることから始めてみようか。

③ 子どもでも出来る
 誰でも関われ、楽しいことが大切である。暮らし自体が楽しければ、長続きし、生活も豊かになるに違いない。人間本位のデザインの指標には"子ども"の視点が役立つだろう。

私事だが、5月からはパーマカルチャーデザインコースを受講する。
今回のまとめはそれに向けた準備運動的な意味も込めていたのだが、書いてみると色々な発見が出てきたので、引き続き書いていこうかと思う。


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