【与太話④】魚になった男!カレイ編
「うっ…頭が…重い…」
目覚めると、いつものように天井が見えていた。…はずなのに、何かが違う。視界がおかしい。いや、視界だけじゃない。体全体が、妙に平べったい。
「な、なんだこれは…?」
恐る恐る布団から這い出ると、そこには信じられない光景が広がっていた。見慣れたはずの自分の体が、薄っぺらく、そして両目が片側に寄っている。
「嘘だろ…俺、カレイに…?」
そう、私は過去に何度も魚に変身してきた男。鮭、鯖、鯵…そして今回は、なんとカレイになってしまったのだ。
「よりによってカレイって…なんでいつもこうなんだ…」
床にへばりつくようにして鏡を見てみると、そこには見慣れない、茶色くて平たい魚の姿が映っていた。
「ああ…もう嫌だ…」
絶望に打ちひしがれながらも、私はこれまでの経験から、まずはこの状況を受け入れることにした。
「仕方ない…とりあえず、ここから出ないと…」
カレイになった私は、体をくねらせて部屋から脱出を試みた。しかし、ドアノブに手が届かない。というか、そもそも手がない。
「ああ…もう…」
途方に暮れていると、飼い猫のミケが私の様子を不思議そうに見ていた。
「ニャー?」
「ああ、ミケ…助けてくれ…」
私は必死にミケに助けを求めた。すると、ミケは私の体を押しながら、部屋のドアの方へと導いてくれたのだ。
「ミケ…ありがとう!」
なんとか部屋から脱出できた私は、ミケに導かれるまま、家の外へと出た。そして、たどり着いたのは、近くの海だった。
「海…か…」
私はミケに促されるまま、海の中へと入っていった。すると、不思議なことに、水の中では体が自由に動かせた。
「おお…!」
私は海中を自由に泳ぎ回り、他の魚たちと戯れた。海底の砂に潜ってみたり、岩陰に隠れてみたり…。
「意外と…楽しいかも…」
カレイになったことで、今まで知らなかった海の美しさ、楽しさを知ることができた。
しかし、楽しい時間も束の間、空腹に襲われた私は、何を食べればいいのかわからず途方に暮れた。
「何か…食べないと…」
その時、目の前に釣りの時によく使う餌のゴカイが現れた。
「あれ…もしかして…」
私は思わずゴカイを口にした。すると、これが驚くほど美味しかったのだ。
「う、うまい…!」
私は夢中でゴカイを食べた。そして、満腹になった私は、海底の砂に潜り込み、眠りについた。
目が覚めると、私はいつものように人間の姿に戻っていた。
「…夢だったのか…?」
しかし、私の手には、海で拾った小さな貝殻が握られていた。
「…いや、夢じゃない…」
私はカレイになったことで、海の素晴らしさ、そして命の尊さを改めて知ることができたのだ。
#魚 #変身 #カレイ #ファンタジー #日常 #異変 #猫 #海 #海底 #ゴカイ #発見 #感動 #体験 #不思議 #コラム #エッセイ #物語 #短編小説 #読み物