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【与太話⑦】魚になった男!フグ編
「ん…体が…軽い…? 」
目が覚めると、水に浮かんでいるような不思議な感覚に包まれていた。あたりを見回すと、そこは自宅の寝室ではなく、見慣れない水槽の中だった。
「また…魚に…?」
そう、私は過去に何度も魚に変身してきた男。鮭、鯖、鯵、カレイ、マグロ、タイ…そして今回は、なんとフグになってしまったのだ。
「よりによって…フグ…」
今回は、驚きよりも先に、ある種の諦めのようなものがこみ上げてきた。しかし、フグは他の魚とは違う。あの独特のフォルム、そしてあの毒…。
「大丈夫なのか…? 俺…」
不安を感じながらも、私は水槽の中を泳ぎ始めた。すると、体がぷかぷかと浮き上がり、まるで風船のようにふわふわと漂っている。
「おお…」
水中で自由に動き回る感覚は、今までにない新鮮な体験だった。まるで空を飛んでいるかのような、不思議な浮遊感。
「これが…フグの感覚…」
しかし、楽しいのも束の間、私は水槽の角にぶつかってしまった。
「いてっ…!」
フグの体は、想像以上に脆かった。ちょっとした衝撃で、体が膨らんでしまう。
「あ…あれ…? 」
私は驚いて自分の体を見た。すると、体はみるみる膨らみ、まるで風船のようになってしまった。
「やばい…!」
このままでは、破裂してしまうかもしれない。私は必死に体を縮めようとしたが、うまくいかない。
その時、一人の女性が水槽に近づいてきた。彼女は、水槽を管理している飼育員だった。
「あら、あなた、膨らんでしまって…どうしたの?」
飼育員は私の様子を見て、優しく声をかけてくれた。そして、彼女は水槽の水質を調整し、私を落ち着かせてくれたのだ。
「よかった…ありがとう…」
私は飼育員に感謝し、彼女と共に水槽の中を泳いだ。彼女は、フグの生態や飼育方法について、詳しく教えてくれた。
「フグは、危険を感じると体を膨らませて威嚇するのよ。でも、膨らみすぎると、時々破裂してしまうこともあるの。」
「そうなんですね…」
私は飼育員から、フグの体の仕組みや、毒を持つ理由など、様々なことを学んだ。
しかし、ある日、私は水槽から飛び出してしまった。
「うわあああ!」
床に落ちた私は、必死に水槽に戻ろうとしたが、体が動かない。
「どうしよう…」
その時、飼育員が私を見つけ、水槽に戻してくれた。
「もう、びっくりさせないでよ。」
彼女は優しく私を叱り、そして水槽に戻してくれた。
「ありがとう…」
私は飼育員に感謝し、再び水槽の中を泳ぎ始めた。そして、いつものように自宅の布団の中で目を覚ました。
「…また夢か…」
しかし、私の体には、まだ水槽の水の匂いが残っていた。
「…いや、夢じゃない…」
私はフグになったことで、命の儚さと、優しさの大切さを知ることができたのだ。
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