そのとき、ヒーローは生まれた!忘れられないサッカーのシーン
ヘディングは頭だけじゃなく、下半身にも力を入れよう!
あれは高校の体育の授業だった。
若いときは、とにかく体力がありあまってるので、特に体育のサッカーの試合は燃えた。
日本代表のサッカー選手になりきったり
ときには真剣にボールを追いかけたりして楽しんだ。
でも、中にはサッカーが苦手で、ただボーッと突っ立てる人もいる。
H君もその中の1人だったのだが、あることがきっかけでヒーローになった。
H君は部活動に属していない、いわゆる帰宅部だ。
家は母子家庭で、母親1人でH君とHの妹を育てていた。
コミュ障でどこか暗い雰囲気でどちらかというとあまり、目立たない存在だった。
そんなH君だったが、ある日体育のサッカーの授業で急にやる気を出してきた。もしかしたら、悩みを払拭するために思いきって行動に移したのかもしれない。
ここで自分自身を変えるチャンスだ!と言い聞かせてる様にも見えた。
いつもと違うテンションでボールを追いかけているので周りからは
「がんばれーH!」
「ここでシュートだH」
と、応援する人が増えてきた。
ますますやる気が出てきたHは、転んでも立ち上がり必死でボールを追いかけていた。
そして、事件は起こった!
ゴール前にいたHに絶妙なセンタリングが上がった。
まるでデイビットベッカムからのキレイなクロスボールだ!
Hはボールに合わせながらヘディングを試みたが、 空中で頭をボールにあてると、そのまま体ごと地面に落ちていった。
まるでマトリックスの映画を観ているようだった。
一瞬スローモーションになった気がした。いや、違う、
ドラゴンボールに例えたら、敵に真っ先にやられる餃子(チャオズ)のように、
そのまま地面に倒れていったのだ。
サッカーに慣れている人なら分かるのだろうが、ヘディングする際にも
腹筋や下半身に一瞬力を入れると思う。
しかし、H君は普段スポーツをしないので、そのような理論は知らず、
ヘディングをするときに頭だけ力を入れたのだと思われる。
下半身に力を入れていないので当然、バランス感覚を失い、地面へと不時着するような形になるのだ。
「大丈夫か!H!」
みんな心配してH君の側に駆け寄って行った。
「大丈夫!これぐらいへっちゃらさ!」
「おぉー」
その時だけかもしれないがH君はヒーローになった。普段おとなしいHが転んでも這い上がる姿に皆感動した。」
ヘディングは頭だけじゃなく、下半身にも力を入れよう!