「どこでもドア」のような未来
column vol.488
先日、【日本経済回復の兆し!?】という記事の中で、「2027年のリニア中央新幹線開通」についての記事を取り上げさせていただきました。
東京と名古屋が40分で繋がる。
東京圏と名古屋圏、その中間圏が統合されることで、人口約5,500万人、経済規模約270兆円というスーパー・メガリージョン(大都市圏)が誕生します。
さらには、中部圏社会経済研究所の試算によると、リニア開通10年で14兆8,200億円の経済波及効果があるとのことです。
この超高速鉄道誕生について、世界でも想像を絶する計画が進行しています。
イーロン・マスクさんが推進している「ハイパーループ」です。
2050年に誕生しようとしている超高速鉄道は、一体どんなものなのでしょうか?
世界の主要都市を「分」単位で移動
「ハイパーループ」は真空状態のチューブの中を時速1,000キロ以上で走行できる未来の超高速鉄道で、航空機に代わる次世代交通・流通網として世界に張り巡らされようとしています。
〈AMP / 2021年11月20月〉
スペインのハイパーループ企業Zelerousはこのほど「a global hyperloop network」というレポートを発表。
同社が示すハイパーループ世界ネットワークの全長は12万1,870キロに及ぶスケール。
地域別内訳はアフリカが2万3,000キロで最長で、北米が2万1,500キロ、南米が2万1,200キロ、中国が2万1,000キロ、ヨーロッパが1万8,500キロ、インドが1万5,500キロ、ASEANとオーストラリアが7,200キロ、中東が4,500キロと続きます。
この新しい超高速鉄道によって、主要都市間の移動時間は大幅に短縮されるのですが、例えばシンガポールからマレーシア・クアラルンプールの所要時間はわずか36分。
同都市間の距離は約355キロに及ぶのですが、陸路を自動車で行く場合、およそ4時間かかり、飛行機を使っても1時間程度のフライトになります。
しかも、飛行機の場合、入国検査、空港ー市内間の移動を考慮すると3〜4時間ほど必要となるので、いかにハイパーループにより時間短縮されるかが分かるかと思います。
ちなみに、ロンドンーパリ間が40分、ブリュッセルーアムステルダム間が16分、シアトルーバンクーバー間が19分、ニューヨークーボストン間が28分。主要都市の移動が「分」単位になります。
さらに、環境面での効果も抜群で、ヨーロッパでハイパーループが開通されると1年間で削減できる二酸化炭素量は13億1,900万トンにも上るそうです。
北米でも二酸化炭素削減量は15億3,300万トンに上ると試算されており、圧倒的な時間短縮だけではなく、脱炭素についても圧倒的な圧縮にも繋がることが期待されています。
飛行機は高速化と脱炭素の両立が重要に
一方、飛行機も負けていられません。
高速化に向けてトライアルは加速しています。
今年6月、アメリカの「ユナイテッド航空」は現在運用されている最速の航空機の2倍の速度が出る超音速の旅客機を導入し、2029年までの運航開始を目指すと発表しました。
〈NHK / 2021年6月4月〉
導入が実現すれば飛行時間は現在のおよそ半分に短縮できるということで、東京ーサンフランシスコ間は6時間、ニューヨーク近郊のニューアークからドイツのフランクフルトは4時間、ニューアークからロンドンは3時間半で移動できるとのことです。
一方、航空業界は高速化だけではなく脱炭素に対する取り組みも国際社会から求められています。
ちなみに、「全日空」と「日本航空」の2人の社長が揃って応じた異例のインタビュー記事があるので、ご紹介させていただきます。
〈NHK / 2021年11月5月〉
ヨーロッパでは「逃げ恥(Flight Shame)」という言葉が広まるほど、航空業界に対して逆風が吹き荒れています。
そこで、注目されるのが「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」。つまり、トウモロコシなどを使った持続可能な航空燃料です。
最近、ユーグレナの出雲社長の記事を取り上げさせていただきましたが、同社でもミドリムシを使ったバイオ燃料を開発しています。
もちろん、SAFも二酸化炭素を排出してしまいますが、製造過程を含めたトータルで見れば、従来の化石燃料より80%程度、二酸化炭素の排出量を削減できると言われているのです。
ヨーロッパでは日本よりも一歩、二歩、いや三歩ぐらい進んでおり、例えば、ノルウェーでは昨年、航空会社に対して、使用する燃料のうち、0.5%にSAFを使うよう義務づけました。
さらに2030年には、この比率を30%に高める方針です。
当然、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スペインなどでも、SAFの義務化や導入目標の設定を検討するなど、規制強化の動きが広がっています。
今後石油燃料の規制が進めば、SAFを十分に確保しなければ航空会社は飛行機を飛ばせなくなってしまう。しかし、世界全体で生産量が追いつかず、熾烈な争奪戦を繰り広げているのが実情です。
鉄道の高速化に負けじと対抗するだけではなく、さらに脱炭素への取り組みも同時に強化する。航空業界はまさにパラダイムシフトを迎えています。
もちろん、ハイパーループ側にもコスト面など、実現に向けて乗り越えないといけない壁は無数に存在しています。
2050年は約30年後の世界。私は70代中盤に差し掛かっている歳になっています。
30年前の私はまだインターネットにも触れていなかったことを考えると、30年後の世界は想像もしない世界になっているのでしょうか?
高速移動だけではなく、ちょっと2050年の世界を深堀したくなるような今回の事例記事でした。