2022年は「リジェネラティブ」に注目
column vol.546
一月も…、もう残り一週間…(汗)
今月は爆裂に忙しかったので、ほぼ一月を感じずに終わってしまいそうです…。
実は、年初早々に取り上げたかったテーマがあります。
2022年のキーワードとして注目されている「リジェネラティブ」です。
〈Forbes JAPAN / 2021年12月24日〉
日本語に訳すと、「再生」や「回生」。
「あるステージで当初の役割を終えたものが、次のステージで再び何かの役に立つこと」という意味を含んでいます。
これには「サステナビリティを実現するだけでは不十分である」という考え方があります。
単に環境を守るというよりも、「どうすればもっと環境が良くなるのか」。よりポジティブなアクションです。
ちなみに、小売業で言うとウォルマートがリジェネラティブについて、2020年にこのような宣言を行なっています。
「オペレーションを脱炭素化し、プロダクトチェーンにおける廃棄物をなくす」
未来に向かって、より企業の本気度が求められる事例となりますので、ぜひ共有いただけると幸いです。
加速する「循環型社会」
「リジェネラティブ」と聞いて、まず最初に触れたいのが「プラスチック」です。
最近では、プラスチックというと、すっかり「悪者」というイメージがついてしまっているのではないでしょうか…?
一方で、リジェネラティブな視点で見たときに、プラスチックが持つ利点を再考する動きも出てきています。
プラスチックは確かに製造段階でCO2を排出する一方、逆にエネルギー資源の節約になるケースもあるようです。
例えば、プラスチックは食品包装の役割を果たす素材なので、食品の品質を保つことができ、食品の廃棄を抑えることにつながります。
また、ガラスは製造とリサイクルの際、多くのエネルギーが必要となりますし、紙はリサイクルできる回数が少ないというデメリットがあります。
さらに、英エジンバラ大学の研究グループが画期的な取り組みをしています。
何とプラスチック廃棄物をバニリン(バニラフレーバー)に変換する実験に成功したそうです。
これは、大腸菌を使った化学反応によってPET(ポリエチレンテレフタレート)を分解し、PET由来の分子であるテレフタル酸をバニリンに変換する技術。
バニリンは食品や化粧品の他、除草剤、消泡剤、洗浄剤などに幅広く使用されているので、今後企業への導入が期待されています。
人にも多様性が求められているとの同じように、素材も一元論的に善・悪と決めつけず、それぞれの良さに目を向けることも必要ということですね。
その上でバニリン変換などで新しい役割を付加していく。まさに一歩先の循環思考です。
「アダストリア」の勇気ある挑戦
続いては「ファッション」。
小売業のマーケティングを行なっているせいか、ファッション産業に対する社会的な目は年々厳しくなってきていると感じます…。
特にセンセーショナルだったのが、フランスで誕生した世界初の「衣服廃棄禁止令」でしょう。
〈東洋経済オンライン / 2022年1月15日〉
今年一月から、売れ残った新品の衣類を、企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止しています。
日本にいると、なかなか実感が湧きづらい先進的な法令ですが、果敢にも「廃棄のない世界」の実現を目指す、日本企業が存在しています。
グローバルワーク、ニコアンド、ローリーズファームなどを展開する株式会社アダストリアです。
遡ること2020年春、フランスのこの法令を見据えて、在庫の焼却処分をゼロにする方針をまとめています。
同社では、OTB(Open to Buy)を採用し、「前月からの持ち越し在庫(月初の在庫量)に対し、月末の在庫を何%以内に収める」という“残在庫ライン”を設けています。
仮に月末の在庫量がラインを越えた場合、その店舗の翌月の仕入れ量は減ることになります。
各店舗、ラインを死守する上で、販売員による店頭陳列やコーディネート提案などの工夫に加え、こまめな値引きを実施。
在庫を常に軽い状態に保って過剰な生産も抑えることで、人気商品まで安売りする大規模なセールは減らしています。
こうした取り組みにより、同社では現在、期初に仕入れた在庫の期末時点での消化率は約95%。
仕入れた在庫の大半を1年以内に売り切っているのです。
ちなみに、他にも同じくこのフランスの取り組みにいち早く反応して、動いた企業があります。
ユニクロを展開しているファーストリテイリングです。
ちょうど一年ほど前に【「本気人」現る】で取り上げさせていただきました。
コチラもぜひご覧いただけると幸いです。
渋谷で加熱する若者たちの取り組み
アダストリアはOMO(Online Merges with Offline / オンラインとオフラインを併合)の面でも先端を走っています。
イノベーション・カンパニーとして、ぜひ注目していただきたい一社です。
ちなみにアダストリアが本社を構えるのが、私のオフィスもある渋谷。実は、この街で若者たちの挑戦が加熱しています。
〈TABI LABO / 2022年1月13日〉
高校生や大学生の4名で構成するグループ「a(n) action」が、クラウドファンディングで7年半後の世界を救うアクションを起こしているのです。
これは、全世界で今のペースのままCO2排出が続いた場合、地球の平均気温の上昇が1.5℃以上に達してしまうとされる“残された時間”です。
カウントダウンとともに、このタイムリミットを伝える「Climate Clock(クライメートクロック)=気候時計」を渋谷に設置しようというのが彼らの取り組みとなります。
計画される気候時計は、小型(23×63cm)にして、渋谷周辺の多くの人が行き交うさまざまな場所に設置。
タッチポイントを増やし、より広くアクションへの関心をもってもらおうというものです。
クラウドファンディングの目標金額は1,000万円。
募集期間を1月27日(木)23:00までとしているので、気になって覗いてみると、もうすでに達成しております。
すごいですね、おめでとうございます。
ということで、若きチャレンジャーに刺激を受けながら、環境を「守る」という意識から一歩進んで「良くする」という考え方を学んでいかなければなと感じる今日この頃です。
2022年は「リジェネラティブ」に注目していきたいと思います。