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「ウケる」には「ワケ」がある

column vol.380

「正解の無い時代」と言われて久しいですが、そんな中でも人を惹きつける人や企業は当たり前ですが存在しています。

最近の記事の中でウケる秘訣の重要なファクターだと感じた事例がいくつかあったので、今日はそのことについてお話ししたいと思います。

カンヌ4冠の秘訣

まずは、第74回カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督のウケる秘訣とは。

〈ENCONT / 2021年7月31日〉

ちなみに、同作品は国際映画批評家連盟賞AFCAE賞エキュメニカル審査員賞という3つの独立賞も受賞し、4冠受賞という偉業を達成しています。

濱口監督は作品づくりの骨幹として

自分が面白いと思っているものを作ること。

と語っております。

そして、その思いを受け入れてくれる方々と仕事をし、自分と同じ魂を持った人々に響くことを考える。

その上で伝える相手を想像することが重要です。

つまり、自分の想いを表現し、受け手が面白く感じるように伝えていく。それが心に響く作品を創っていくエッセンスだと感じています。

これは、何も文化・芸術に限ったことではないと思います。

企業の商品開発も同様で、商品開発担当者が良いと思っていないのに大ヒットするというのは…、稀なのでは…?と感じています。

リサーチデータだけでは限界があると思います。

そのことの好例として、モスバーガーを上げさせていただきます。

最後は担当者の判断力

モスバーガーの味の決め手であるミートソースは、1972年の創業以来、13回もリニューアルしているそうです。

〈PRESIDENT Online / 2021年7月30日〉

もちろん、リニューアルしたからといって消費者の心を掴めるかは分かりませんので、的中率を上げるためにも、定量的なデータに基づいた科学的分析も参考にします。

しかし、最終的には担当者の経験値や感覚を重視しているそうです。

最適化されたデータや定量的側面を重視すると、どうしても常連のための味に寄ってしまい、隠れたニーズが見えにくくなるからとのこと。

ロイヤル顧客に飽きられないで、かつ新規のお客さまにも美味しく食べてもらえる味を追求する。

最後は担当者の心意気判断力が問われるというわけです。

中の人ではなく「間の人」

SNSアカウントについて、日本の美術館では最大規模のフォロワー数を誇る森美術館ですが、中の人として運営する洞田貫晋一朗さんは60万人のフォロワーを塊ではなく「個」として見ているそうです。

〈Lifehacker / 2021年7月27日〉

本当に「森美術館の情報がほしい」と考えてくれている“相手”のことを思って最適化した発信を心がけているとのこと。

例えば、「皆さん」というのは誰も含まれません。あくまでも一人の相手を想像してコミュニケーションを図る。とても大事なことです。

そして、「インスタ映え」を意識しないそうなのですが、その意図をリアリティ「ユーザー視点」が薄まり、本質から離れてしまうと指摘します。

ここで私がポイントだと思うのが「ユーザー視点」です。

自分が顧客側に立ち、客観的に見つめる。そして提供者側の想いを冷静に繋いでいくというわけです。

洞田貫さんはこの境地を「中の人」というよりは「間の人」と表現しています。顧客と美術館の間に立つから、互いがより密接に親密に近づいていくのです。

とてもシンプルではありますが、本質はいつも単純で明快。あとは、それを屈折せず、妥協せず続けられるかが重要ですね。

答えの無い時代に、非常に明確な答えをいただけたと感じる今回の事例たちでした。

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