新「顧客接点」戦略
column vol.261
以前、【ファッションの新トレンド】という記事の中で触れましたが、今年の初め、ボッテガ・ヴェネタのSNSアカウント削除がセンセーショナルに報道されました。
その代わりとなる新たなメディアが誕生したようなので、まずはそちらをご紹介いたします。
〈WWD JAPAN / 2021年4月2日〉
デジタルジャーナルをローンチ
ボッテガ・ヴェネタがデジタルジャーナル「Issue 01」を発行。
“ブランドの世界を捉え、拡大させるデジタルスペース”として、オンライン雑誌のようなフォーマットで写真や動画、効果音などを楽しめる内容に。
年4回、コレクションが店頭に並ぶタイミングで発表していく予定とのことです。
服の紹介だけではなく、「マイホームでの生活」をコンセプトに、28組の写真家やアーティストがコントリビューターとして参加など、同ブランドの価値観を体系化して表現することを目指しています。
そして、同ブランドはSNSについてこのように語っています。
「誰もが同じ情報を見るという意味で、カルチャーの均質化を表すもの。そのため、個性を育まず、またクリエイティブプロセスに対する弊害ともなり得る」
なるほど…、、、なかなか手厳しい指摘です。
デジタルジャーナルの今後がどんな展開を見せてくれるか興味深く注視したいと思います。
「消費」を超えたソーシャルコマース
一方、SNSも負けていません。
アメリカでは、InstagramやTikTokなど、ソーシャルメディアを使ったショッピングが賑わいを見せています。
そんな中、ナイキが独自のソーシャルコマース・アプリ「ナッシング・バット・ゴールド(NOTHING BUT GOLD)」のローンチを発表。
〈WWD JAPAN / 2021年4月2日〉
まだ、あまり詳細は発表されていないのですが、ナイキは“女の子のためにショッピングの未来を創る”ことを使命としており、同アプリを“組織内でソーシャルコマースを手掛けるためのモバイルアプリ”と位置付けているそうです。
現段階では、スポーツ、生活スタイル、活発さ、マインドフルネスといったテーマをミックスしており、ナイキのアイテムを買う時に、他のユーザーのコーディネートを参考にすることもできるとのこと。
同社は20年に行った投資家会議で、デジタルおよびeコマースでの売上げが常時少なくとも売上高の50%を占めるようになると予測し、ショッピング向けデジタルチャネルの開発に力を注ぐと発表していました。
ソーシャルコマースで今までにない、より顧客の心をくすぐるコミュニケーションが築けるのか?こちらも今後の展開から目が離せませんね。
企業の成長を導く「CCO」という存在
ちなみに、ナイキのドナホー2世社長兼CEOは先ほどのWWDの記事の最後にこのように語っています。
「パンデミックによって消費者の行動は根本的に変化しており、元に戻るとは考えていない」
確かに消費者マインドはコロナによって大きく変化いたしました。
そこで今、アメリカの顧客関係管理(CRM)プラットフォームを提供する「HubSpot」では「CCO(チーフ・カスタマー・オフィサー)」という役職に、新たな顧客関係構築を託しています。
〈Forbes JAPAN / 2021年3月15日〉
同社の製品は2020年には米メジャーレビュー・サイト「G2」にて中小企業向けCRMプロダクト部門で1位、エンタープライズ部門で2位に輝きましたが、その立役者となったのがCCOのヤミニ・ランガンさんです。
CCOとはカスタマーサービス部門を統括するだけではなく、顧客体験の全てを最善にするためのプロセスや組織の構築を期待。さらに部門間連携の推進など社内コミュニケーションにおける潤滑油的な役割も担っています。
固定概念を捨て、「顧客の今」を起点にニーズを掘り起こし、分析。現場レベルだけではなく、経営陣が直接顧客の意見を聞く機会も設けているそうです。
そして、ヤミニ・ランガンさんは、このように語っています。
「顧客との継続的な関係性、そして危機にも対応できる柔軟で適応性のある思考力に“成長”は現れるのです」
この言葉はまさに真理。顧客との絶え間ない対話の蓄積が生き残りにおける最も重要なファクターであることを示唆してくれています。
私の主戦場となる小売業界では、ショッピングを通して膨大なる顧客対話が生まれています。
それをただの買い物のやりとりとして終わらせるか、次の一手を考える上での重要なヒント受信の場とするのかで未来が大きく変わっていくと感じています。
こんな時代だからこそ、この大切な視点を見失わないようにしたいといけませんね。
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