アスフレ観戦記『請田の涙』
10月18日現在、アースフレンズ東京Z(アスフレ)の23-24シーズンは、2節(4試合)が終了しています。ここまでのチーム得点王は、外国籍選手でもなく、B1から移籍してきた井手拓実でもなく、ルーキーの請田祐哉です。今回は、請田の凄さについて語っていきます。
1.公開練習
私が請田を初めて見たのは、8月に行われた公開練習です。身長173cm、体重67kg。バスケ選手としては小さすぎる体躯。第一印象では、チーム得点王どころか、プレータイムをすぐに貰えるとは全く思えなかったです。
ただ、実際に練習が始まると、その印象はがらっと変わりました。強度の高い練習でも笑顔を浮かべられるほど、無尽蔵なスタミナ。一度入りだすと全く止まらない、正確無比な3Pショット。請田には、プロの舞台で戦える武器がしっかりとありました。
2.天皇杯
シーズン開幕前に行われた天皇杯、アスフレはB1の富山グラウジーズと対戦。スターターとして選ばれた諸田は、自身よりも大柄な選手とマッチアップしました。
身長で20cm、体重で20kgの差。そのうえ、相手のスキルは、日本代表候補にも挙がるようなクオリティ。請田がプロの舞台で戦える武器を持っているとはいえ、さすがに不釣り合いです。このマッチアップでは、負けを覚悟していました。
しかし、負けの覚悟なんて要らなかったです。第1Qこそ高さとパワーに圧倒される場面があったものの、それ以降は完璧に対応。
守っては、自身のマッチアップ抑えるだけでなく、高さとパワーの差に苦しむ仲間へのヘルプでも存在感を発揮。攻めては、正確無比な3Pショットが火を吹き、チームで2番目に多い15得点。攻守で大活躍していました。
ルーキーがB1相手に大活躍。それだけでも大きな驚きなのですが、現地で観戦していて最大の驚きだったのが、請田の表情です。
ホーム&アウェイの概念がない筈の天皇杯とはいえ、会場は富山県にある黒部市総合体育センター。観戦者は、大多数が富山ファン。会場演出は、完全に富山仕様。アスフレにとっては、100%アウェイ空間でした。
そんな状況で、リードチェンジを何回も繰り返す超接戦。見ている側は、文字通り息が詰まる思いだったのですが、コート上にいる請田は、プレー中に笑みを浮かべていました。試合をしっかり楽しめていたのです。
『この選手は並のルーキーに収まる器ではない』。その笑みを見て、私は確信しました。
3.シーズン開幕戦
いよいよ始まった23-24シーズン、開幕戦はアウェイで八王子ビートレインズと対戦しました。
Game1、請田のスタッツは、10得点、6アシスト、チームハイとなるプレータイム30分。個人的にはちょっと物足りないくらいでしたが、開幕戦勝利に大きく貢献してくれました。
Game2、開幕戦の敗戦で火が付いた八王子が、終始ペースを握りました。アスフレはそれを打破することができず、第4Q開始時点で21点のビハインド。点差もそうですが、主力のパフォーマンスが軒並み悪かっただけに、勝利への道筋は全く見えなかったです。
そこで、衛藤ヘッドコーチは、井手拓実やキャメロン・パーカーといったメインのハンドラーを下げ、バックコートには請田と棚橋を選択。ルーキーコンビでゲームを動かそうとしました。
これがまさに大当たり。特に請田が素晴らしかったです。まるでエースのスイッチを入れたかのように、積極的な仕掛けで得点を量産。このQだけで13得点をあげ、チームのオフェンスを強烈に牽引しました。
相手からしたら、よく知らないルーキーの大活躍は、恐怖でしかなかったのでしょう。私の近くに座っていた八王子ファンの女性は、請田が仕掛ける度に「もうやめてー」と叫んでいました。
結果的には、大惨敗でした。ディフェンスが改善しなかったこともあって、請田の大爆発だけでは、21点差をひっくり返せなかったです。
ただ、正直に言って、悔しさは全くありませんでした。ゲームを支配するようなルーキーが現れたこと。その高揚感で、私の心は満たされていたからです。
4.ホーム開幕戦
1勝1敗で迎えたホーム開幕戦。Game1は、もはや当たり前になっていますが、請田が大爆発。ゲームには敗れたものの、ホームのファンに強烈な印象を残しました。
Game2、これまで驚異的な活躍を見せてきた請田のプレーが、どこか精彩を欠いていました。それは、3Pショットが試合を通して入らなかったこともそうなのですが、特にクラッチタイムのプレーが良くなかったです。
ターンオーバー2回、相手の逆転を許すきっかけとなったショットミス1回。請田のプレーが、勝利を難しくしていました。
ただ、それで請田を責める人はいないでしょう。相手のエースがアンストッパブルだったり、味方にも精彩を欠いたプレーをする選手がいたり、審判の笛が???だったり、勝利を難しくした要因は他にもたくさんありました。
ただ、当の本人は、かなりの責任を感じていたようです。結果的には、ルイスのGame winnerで逆転勝利となったのですが、劇的な幕切れに狂喜乱舞する会場の中で、一人だけ下を向いて涙を流していました。きっと逆転勝利で心が緩み、誰よりも強く感じていた責任が、涙となって溢れてしまったのでしょう。
驚異的な活躍でつい忘れてしまうのですが、請田はまだまだルーキーです。もともとのベースがルーキー離れしているのに、心技体全てをさらに成長させられます。私は、その涙に可能性しか感じなかったです。
5.今後に向けて
降格したアスフレは、多くのルーキーと契約し、若手主体のロスターで再建の道を歩み始めました。まだまだ粗削りなプレーは多いものの、プレーは日に日に良くなっています。今シーズンのチームはもちろん、今の若手が成長した未来のチームも本当に楽しみです。そして、その未来のチームでは、請田が絶対的なエースとして君臨しているでしょう。
では、若手たちの成長を願って。
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