アスフレ観戦記~決算と新B1~
23点差の大・大・大惨敗を喫したホーム開幕戦。試合後に、山野代表はこんな宣言をしました。
次の大きな舞台とは、俗に言う『新B1』。もはやB2のドアマットチーム(※)として定着してしまったアースフレンズ東京Z(アスフレ)が、新B1へ行けるのかどうか。
いつもの観戦記とはちょっと趣向を変えて、今回はアスフレの未来とお金の話。
(※)ドアマットチーム:弱小チームのこと。ドアマットの如く、相手に踏みつけられるという比喩。
1.新B1とは?
まずは、新B1について改めて確認することから始めましょう。
Bリーグは、26-27シーズンから競技成績による昇降格を廃止。各カテゴリーのライセンス基準を満たしたクラブが、チーム数の上限なく参入できる新リーグ体制へ移行します。俗に言う、エクスパンション型リーグです。
なぜ、新リーグか。大きな理由は経営力の格差です。
ここ数年、大資本のBリーグ参入が相次いだこともあって、クラブ間の収入差が広がりつつあります。資金を確保して選手や環境にしっかりと投資できるクラブと、そうでないクラブ。両者が同じカテゴリーに混在する現体制では、いずれ試合が面白くなくなると考えているようです。
新B1とは、新体制のトップカテゴリー。現B1とはライセンス基準が大きく異なり、競技成績に関する記述が一切ありません。
ざっくり言うと『人気・金・箱』。アスフレのようなドアマットチームでさえ、それらを揃えられたら参入できます。
審査の初回は2024年10月。アスフレは初年度から新B1へ参入することを目標にしているので、準備期間はあと3年弱。分水嶺は、そんなに遠い未来ではありません。
2.アスフレの立ち位置
それじゃあ、今度は新B1に向かうアスフレの立ち位置を確認してみましょう。『人気・金・箱』に関して事実を並べ、なるべく客観的に。
●平均入場者数
新B1基準は4000人。これは大田区総合体育館のキャパとほぼ同等。つまり、この箱を当たり前のように満員にできる集客力を求められているのです。
コロナ禍で入場者数が大きく減少したことをイレギュラーとして除外すれば、アスフレの現実的な集客力は約1400人。B2平均並なので決して悪い集客力ではありませんが、新B1基準に対しては圧倒的に不足しています。増加傾向も見て取れませんし、達成可能な基準とは言えません。
●クラブの売上高
新B1基準は12億円。現B1の琉球に相当する収入が求められています。
昨シーズン、アスフレの収入は約2.6億円。コロナ禍でもスポンサー収入が伸びているのは本当に素晴らしいんですが、新B1基準には約9億円の増収が必要。こちらも増加傾向は見て取れませんし、達成可能な基準とは言えません。
●アリーナ
大田区総合体育館は、キャパ不足で新B1基準をクリアできていません。改修もしくは新アリーナ建設が必要な状況で、アスフレは後者に舵を切って動いていたようです。
・大田区総合体育館:キャパ約4000人
・新B1基準:キャパ5000人以上
その過程は、スポーツ庁のスタジアム・アリーナ先進事例成果物において、『大田アリーナ構想』として公表されています。念のため補足しておきますが、株式会社GWCとはアスフレの運営会社です。
詳細は上記のリンクを読んでください。ここでは一部抜粋して紹介いたします。
こんな感じで割と具体的に話は進んでいます。が、問題は用途地域。候補地の東糀谷防災公園は、都市計画法で定めらている『工業専用地域』です。アリーナ建設はできないため、行政に用途を変更してもらわなければなりません。
大田区とは、話し合いの場を何度か設けていたようですが、現時点の結論はこちら。
用途変更の合意には至らず、まだまだ協議は進めているようです。ただ、不可能とまで言われちゃっていますからね。これを覆すのは、さすがに厳しいでしょう。
ちなみに、アリーナ設計に長けた『梓設計』さんが2020年からスポンサーになってくれたのは、大田アリーナ構想と何らかの関係があるはず。
今もなお、スポンサーを継続してくれていますので、何かしらの算段は残っているのかもしれません。
例えば、同じ室内競技のハンドボールを盛り上げて、バスケとハンドをセットで、行政に新アリーナの必要性を訴えるとか。
まぁ、何にせよ、アリーナに関しても、現時点では達成可能と言えません。
●総合判定
以上が、新B1基準とアスフレ現状の比較です。事実を並べると、今の延長線上に新B1は見えてきませんでした。現実的にうっすら見えるのは、新B2ですかね。
ただ、アリーナ基準がOKとはいえ、入場者数と売上は新B2基準でも厳しいです。特に、入場者数。あと1000人増やす必要があるのですが、それを達成できるイメージが全く湧いてきません。
だってさ、試合がイマイチなんだもん。
3.バスケの成績は本当に不要?
演出やZgirlsの高い評価はよく聞くアスフレですが、観戦の本丸であるべき試合の方は・・・。
Bリーグ開幕以降、成績は右肩下がり。ここ数年は、ホームに何回も足を運ぶような熱心なファンでない限り、勝ちという最高な体験を生で味わうことが難しくなっています。
そのうえ、ただ負けるだけでなく、ブローアウトの敗戦がデフォルト。スポーツ観戦で味わいたいハラハラドキドキが、全くと言っていいほどありません。クラブや選手愛といった補正のない初見さんが、リピーターになってくれる気がしないんです。
その感覚を補強するデータとして、アスフレ公式の『勝ち報告ツイート』と『負け報告ツイート』への反応差を示します。
ご覧の通り、今季は勝敗で”いいね”と”RT”に平均で約4倍の差があります。
「勝つことが全てではない」
そんな言葉もありますが、事実として勝敗で人の行動や感情はこれだけ変わるんです。より多くの人気を得るには、より多くの収入を得るには、やっぱりバスケの成績も大事でしょう。
4.営業力
ただ、違った見方をすれば、バスケが全然ダメでも、入場者数や売上はキープできているのです。これは、フロントスタッフさんがご尽力された成果でしょうね。素晴らしい。
とはいえ、単年赤字と債務超過があることは、どうやっても頂けない。なんか、身の丈に合っていない金の使い方をしているように見えてしまうから。
昨シーズン、アスフレと最下位争いをした青森は、選手の人件費をアスフレよりも3000万円程度抑えています。その結果がB2最下位につながったかもしれませんが、決算では黒字。
一方、アスフレ。岡田や綿貫といった第一線で活躍してきたベテランを獲得したり、シーズン途中に外国籍選手を入れ替えたり、信州から期限付き移籍で増子を引っ張ってきたり、活発な選手契約で人件費は過去最多。そのおかげで最下位は免れたものの、決算は4400万円の赤字。
バスケの成績ではアスフレの方が上でしたが、企業としての勝者はどちらでしょうか。社会的に信頼される企業はどちらでしょうか。
勝利は、喉から手が出るほど欲しいです。でも、赤字になるような金の使い方をしてまでとは全く思いません。
もちろん、コロナ禍で難しいオペレーションだったことは理解しています。だから、赤字を非難するつもりは全くありません。ちょっと腑に落ちないところがあるだけ。
まぁ、兎にも角にも、債務超過を何としないと。しっかりと黒字を出さないと。そうじゃないと、新B1を目指すという宣言は、荒唐無稽なものに聞こえてしまいます。
どんなに弱くても、どんなに金がなくても、アスフレを拠り所として生活している人がいるんです。存続することを一丁目一番地として、堅実に進んでいきましょうや。
では、存続と発展を願って。
Go Win Z !
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