アスフレ観戦記 「シーズン前半の総括」
アースフレンズ東京Z(アスフレ)の21-22シーズンは、早いもので30試合が終了。成績は『5勝25敗』。リビルドの道中は、厳しいものとなっています。
今回の観戦記は、シーズン前半の総括。彼らの紡いだ物語を振り返ってみましょう。
☑ シーズンオフ『解体→リビルド』
20-21シーズン終了後、アスフレは真っ暗闇の中にあった東頭体制を遂に解体。スペイン人のウーゴ・ロペスを新しいHCに迎え、“もう何度目か分からない”リビルドを選択しました。
もちろん、HCだけでなく、ロスターにも大きなテコ入れを実施。解体したチームらしく、ほとんどが新規契約。また、リビルドのチームらしく、ほとんどが若手。新体制は、未知な要素を多分に孕んだものになりました。
ちなみに、開幕前に順位予想アンケートを行った結果はこちら。
未知なロスターの評価が低いのか、それとも、低迷した東頭体制で失った信用なのか、多くの方が厳しい順位を予想していました。『スペイン人 HCを招聘』『第二創業』とチームが変化を大々的に打ち出したものの、どうやら周りにはあまり響いてなかったようです。
どちらかというと冷やかな目を向けられ、ウーゴ体制の物語は始まりました。
☑ 10月:無理ゲー
実際にシーズンが始まるとすぐに、その順位予想が決して間違いじゃないことを痛感しました。というのも、試合の結果も内容も、とにかく酷かったのです。
10月の成績は『0勝8敗』。そのうえ、得点差が示すように、ブローアウトの敗戦がデフォルト。相手と力量差がありすぎて、勝敗を競うことすらできませんでした。
ブローアウトに至る要因は色々とあります。その中でも特に目立っていたのは、ハンドラーとビッグマンの低調なパフォーマンスです。
ハンドラーの低調なパフォーマンスは、単純な力不足によるもの。
メインのハンドラーを任せられた若手3人は、相手のプレッシャーに圧倒されてミスを連発。その頻度は全員がターンオーバーランキングのトップ10に入るほど多く、オフェンスのエントリーすら不如意な有様でした。
一方、ビッグマンの低調なパフォーマンス。こちらは、JCのコンディション不良によるものでした。
今シーズンのロスターは、基本的にスモールラインナップ。外国籍ビッグマンでペイントをゴリ押ししていた東頭体制とは異なり、軽くて速いボールムーブが信条。
その中で、相手に高さで対抗できる唯一の存在がJC・・・だったのですが、とにかく動きが緩慢。ディフェンスではウーゴHC特有のスイッチ戦法に付いていけないし、オフェンスではウーゴHC特有の速いボールムーブに付いていけないし、残念ながらチームの足枷になっていました。
もちろん、全てが悪かった訳ではありません。新規加入のマーク・エディーノエリア(以下、ノエリア)や、東頭体制で燻っていたシューターの髙木、日本人ビッグマンの坂井。全体を見渡せば、印象的な活躍を見せてくれた選手もいます。
特にノエリアは、スタッツに残るプレーだけでなく、表現豊かなセレブレーション等、オンコートで強烈なキャラを披露。ファンの心をあっという間に掴み、10月度MVP(※)を獲得しています。
(※)月間MVP:今シーズンから個人的に行っている月間MVP投票の結果より。
しかし、そういった活躍をする選手がいても、結果的には為す術もなく全敗。ハンドラーとビッグマンの機能不全は、ちょっとやそっとのプラス要素では打ち消せないほど深刻だったのです。
采配でどうにかできる問題ではありません。勝つためには、彼らを戦える水準まで引き上げることが必要。以降、ウーゴHCは『選手の成長』と『代替手段』を模索した戦いにシフトしました。
☑ 天皇杯:大敗の中に微かな光
10月30日、天皇杯3次ラウンド。アスフレの対戦相手は、B1の名古屋ドルフィンズ。この試合は、ダメダメだった若手ハンドラー3人が、コンディション不良で揃って欠場しました。
ハンドラーが誰もいない状況において、シューター(ウィング)で起用されていた久岡と、ビッグマンながら器用に何でもこなせるノエリアが、代わりにゲームコントロールを担いました。
結果は、ブローアウトの敗戦。まぁ、相手はB1ですから、選手が揃っているいないは関係ありません。全ての面で、はっきりとした力負けでした。
それでも、この試合は、良い意味でターニングポイントになりました。以降、ノエリアと久岡がゲームコントロールを担う機会が増え、オフェンスにだいぶ安定感がでるようになりましたから。
この時期は、まだまだ毎試合が試行錯誤。効果のあるものを取り入れ、ちょっとずつ武器を増やしていきました。
☑ 11月:エースの帰還
レギュラーシーズンが再開しても、勝てないのは相変わらず。ただ、負け方は以前と明らかに違っていました。点差に注目して試合結果をご覧ください。
いかがでしょうか。接戦が少しだけ増えていますよね。バスケの醍醐味であるクラッチタイムを、やっと味わえるようになりました。
そして、遂に。
念願の勝利をあげ、11月は『2勝7敗』。10月とは対戦相手が違うので、強くなったと断言はできません。しかし、少しだけ前進できたのは確か。
その要因は二つ。JCと増子の活躍です。
JCに何があったかは不明ですが、10月と11月ではまるで別人。ディフェンス時の機動力不足はまだまだウィークポイントであるものの、それを補って余りあるオフェンスの貢献。インサイド・アウトサイド両面で安定した得点源となっていました。
10月中頃にアキレス腱断裂から復帰した増子は、垂直立ち上げでプレー。早期復帰に心配する声もありましたが、特別な存在であることを結果で見事に証明しています。
ハンドラーが依然として機能不全に陥っているだけに、その活躍は希望。ファンを照らす存在となっていました。
ゆえに、増子が11月度MVP。JCが低すぎるのはちょっと可哀想ですけど、そこはファン投票。色々な思いを入れた結果ですね。
復調したJC。復帰した増子。そして、10月から安定した活躍を続けるノエリア。スタッツを残せる主力が、ウーゴ体制の下にやっと揃いました。
あとは、ロール(サポート)プレーヤー。
10月に活躍していた髙木はがっつり調子を落としましたし、増子を除くハンドラーは依然として沈黙していました。
スターだけではダメ。彼らの台頭がないと、勝てるチームにはなれません。
☑ 12月:もう十分あの頃を・・・
12月に入ると、選手に新型コロナ感染者が出ました。ただでさえ薄い選手層が極薄に。そこで、ウーゴHCはスタメンを弄り、新たな布陣を選択しました。
具体的には、調子を落としていたシューター髙木をペンチ、代わりにハンドラーのバートンをスタメン。
依然として定まっていなかったメインハンドラー(PG)には、シューターとして使われることが多かった久岡。
主力3人(増子・ノエリア・JC)の周りをガラッと替えたのです
これがまさに的中。オフェンスは確実に上向きました。特に刺さっていたのが、久岡のパフォーマンスです。
PGとしては、オフェンスのテンポを速め、主力の得点機会を演出。主力に相手が集中すると、今度はシューターとして3Pショットで得点。
コンボガードのスタイルで、チームの歯車を加速度的に回していました。
先月は沈黙していたシューター、パット・アンドレーと高木が息を吹き返したのも、久岡の影響が大いにある筈。ピーキーな選手たちには、ハンドラーによるお膳立てが必要だったのです。
これで、先月の問題点として挙げていた「ロールプレーヤーの台頭」は一歩前進。ハンドラー、ウィング、ビッグマンが揃って活躍できるようになり、ゲームを支配できる時間が明らかに増えました。
全ては、久岡のおかげと言ってもいいでしょう。現に、多くの方がその活躍を認め、12月度MVPを獲得しています。(JCはまたしても2位。わずか1票差)
思えば、久岡がここまで安定した活躍を残せたのは、ルーキーシーズン以来ではないでしょうか。
皆さん、知ってますか。久岡はルーキーシーズンの3P確率が”42.1%”もあったのですよ。めちゃくちゃ期待されたシューターだったのですよ。
それなのに、東頭体制におけるプロ2年目と3年目で急激に悪化。ショット確率は右肩下がりで、本当に苦しんでいました。東頭体制の低迷を象徴するような選手と言ってもいいでしょう。
唐突ではありますが、話を先のオフシーズンに少し戻します。
アスフレでは恒例になりつつある、選手からクラブ会員(有料ファンクラブ)へのお礼電話。私の担当は久岡でした。
久岡らしい丁寧な感謝の言葉を受けたあと、少しだけ雑談。オフシーズンの過ごし方を聞いてみると、こんな話をしてくれました。
これがどうやら実を結んだようです。ウーゴHCのバスケと久岡の個人スキルが上手く合致し、良い結果につながっています。
東頭体制の2年間は、弱々しさを表に出してしまうことが多かっただけに、充実した表情を見せてくれているのは、本当に嬉しいです。
『背番号14』『どん底の状態から復調』。このキーワードが2つ並んだら、このセリフを言うしかないよね。
さて、ここまでは、選手とチームをべた褒めしてきました。実際の試合を知らない方は、さぞ多くの勝ち星を積み上げたと思うでしょう。しかし、現実はそんなに甘くありません。
『3勝6敗』。3ヶ月連続の負け越し。チームが良くなったというのは、あくまでも自チーム基準。他チーム基準では、まだまだ足りないところがあるみたいです。
☑ シーズン後半に向けて
シーズン後半に向けて、12月に勝てなかった要因をもう少し深く探ってみましょう。
以下に示すのは、前半と後半の得失点差です。JCが不在で大敗した熊本戦は、イレギュラーとして除外しています。
前半はプラス。後半はそれを上回るマイナス。つまり、『後半に弱い』ため、逆転負けを喫する機会が多かったのです。
この事実でまず頭に浮かぶのは『選手の疲労』です。特定の選手が出ずっぱり。クラッチタイムで膝に手をついてしまっているのを、何度か目の当たりにしていますから。
実際に、12月度の総プレイタイムを調べてみました。今回も熊本戦は除いています。
いかがでしょうか。プレイタイムが7人に偏っているように見えませんか。
スタート5人とベンチ2人でローテーションを行っているのですから、どうやっても誰かが出ずっぱりになってしまいます。これが敗因であるとは言い切れませんが、主力がもっと休める状況をつくる必要がありそうです。
シーズン後半は、ベンチで力を持て余している選手のステップアップに期待しています。ウーゴHCにどんどんアピールして、プレイタイムを確保してもらいましょう。
まだまだ、ここから🔥
☑ To be continued?
最後に、もう少し先の未来について。
選手の能力が足りずに13連敗しようとも、JCが不在で66点差で敗れようとも、ウーゴHCは一貫して敗戦の言訳をしていません。その代わり、ファンに向かっては、チャレンジした選手を褒めてくれと何度も語りかけていました。
昨シーズンは東頭さんが「外国籍選手がいないから・・・」と敗戦の言訳をよくしていただけに、ウーゴHCの振る舞いはより際立って印象に残ります。
なぜ、ファンを巻き込んで選手を褒めるのか。
おそらくですが、全ては若手育成のため。新年1月2日のクラブ会員向けイベントにおいて、
「HCとして私の一番の責務は、選手の成長を促すこと」
と話していましたし、今は若手がチャレンジしやすい土壌をつくろうとしているのでしょう。
育成という観点でチームを見れば、東頭体制で伸び悩んでいた髙木と久岡には確かな復活の兆しがあります。また、10月は全く通じなかったバートンや山ノ内も、だいぶ戦えるようになっています。
勝敗は伴っていないですが、チームが前進しているのは客観的事実です。リビルドのプロセスは、今のところ概ね良好と言えるのではないでしょうか。
ただ、唯一心配なのがチームのフロント。少なくとも私が見てきた3年間、この人達は育成や継続性を軽視したチームづくりを行ってきましたから。
例えば、18-19シーズンの古田体制。シーズン中に、チームの原型がなくなるほど、多くの外国籍選手を入れ替えました。しかし、成果は上がらず、1年で解体。
例えば、19-20/20-21シーズンの東頭体制。2季継続したものの、1年目と2年目では真逆のロスター。継続性を破棄し、若手からベテラン主体のチームに切り替えました。しかし、成果は上がらず、解体。
このように、問題を解決する手段は第一が『人の入れ替え』、第二が『解体』。山野代表は『成長ストーリー』を見てくれとよく言う割には、成長の要素をそこまで信じていないように見受けられます。
果たして、今回はウーゴHCの育成を我慢して見守ってくれるでしょうか。
現実的な勝負どころは、降格制度が復活するであろう来シーズン。今度こそ成長ストーリーを完遂させ、継続性を付与したチームで臨んで欲しいです。
では、ウーゴHCを信じて。
Go Win Z ! ! !