楽は苦の種.苦は楽の種
楽は苦の種 苦は楽の種
苦あれば楽あり…楽あれば苦あり…
楽なくば苦もなく…苦なくば楽もなし…
そこには.ただ刺激と反応があるだけ…
刺激依存症の.多くの人達は.苦楽の狭間に迷い込み.楽に魅入られ苦を怖れ.喜怒哀楽しながら.気付く事もなく.僅かな楽の為に.多くの苦に翻弄されながら生きているのです…
仏教で重要なのは.教えを暗記する事でもなければ.読経.念仏.声明.真言を唱える事でも.坐禅を組む事でもなく.実践の中で.ただ自覚し.精進し.努力し.気付き.理解し.乗り越え.超越してゆく事なのです…
生きていれば.好い事もあれば.悪い事もあり.好い日もあれば.悪い日もあるもの…
そんな当たり前の物事に.いちいち執われたり.拘ったり.喜怒哀楽していてはいけません…
また.つまらない物事.下らない物事.どうでもいい物事も同様であり.いちいち意に返したりせず.無駄な反応をしないように心掛けることが大切なのです…
好い時こそ.奢る事なく.謙虚であれ…
悪い事が続く時こそ.己れを鼓舞し.克己して試練に打ち勝て…
一切は皆苦であり.苦により成り立ち.苦を真に理解するならば.多くの堅固で安定的な楽を真に味わえるのてすが.苦を真には理解出来ず.翻弄されながら.無明なまま.多くの苦から逃れようと.足掻き.苦しんでいては.苦と不満や怒りの中を生きてゆく事となるのです…
[楽は苦の種.苦は楽の種]とは.一般論としては楽に泥むと.刻々と変化生滅してゆく無常な日常さえも苦しみと映り.また苦の本質を見定め.乗り越えれば.今の苦労は将来の楽に繋がるものという意味ですが.苦楽とは本来は一如のものであり.表裏の関係性にある片面に.必要以上に捉われ.拘り.分別して.避けようと藻掻き.真正面から受け止めず.嫌悪して逃げまわる愚かさが.苦への恐怖を増大させてゆくのです…
つまりは苦の裏面には必ず楽があり.楽の裏面には必ず苦があり.まして.この世界は苦のエネルギーにより成り立っていて.ある意味.苦に生かされている以上.苦を怖れず.苦の本質を喝破し.苦を受け入れ.苦を成長の糧とも為せば.自ずと一切万象.一切万法の理法から.歓びへと転化してゆく性質のものなのです…
楽に捉われるから苦にも捉われ.苦に捉われるから楽にも捉われ.もし苦楽に捉われなければ.ただ刺激があるだけなのです…
苦楽は一如であり.変化生滅してゆく刺激.現象の一面に捉われているだけなのです…
楽あれば苦あり.苦あれば楽あり…
世界の本質は苦なり…
世界は滅の性質のものであり.欲望は無常なり…
執着.愛着すれば必ず苦へと至る…
そんな無常な現実世界を生きねばならぬ我が身なれば.自我や所有への執着.愛着もまた無常なのだから.目覚め.乗り越え.解き放たれて.そんな煩悩を慈悲の心へと転化してゆくしか.存在性の向上は望めないのです…
どんな不幸な出来事でも.有能な人とは.それを優位性へと昇華させてゆくのです…
いっぽう思慮のない人物はどんな幸運をも災いにしてしまうものです…
色を観ずれば聚沫の如く.感受は水上の泡の如く.想念は春時の陽炎の如く.諸行は夢の如く.諸々の識は幻の如しと観ぜよ…
逆説的に聞こえますが.[苦労は買ってでもしろ]とか.戦国武将の山中鹿助の[我れに七難八苦を与え給え]と言う言葉があります…
これは別にストア派の禁欲主義でも.自虐的な苦行の中に喜びを見い出そうとする変質的な偏った観念でもなく.マゾヒズムでもないのです…例えば.健康について言えば.特段.問題もなく正しい見解(正見)が持てれば最良なのですが.多くの無明な人達ときたら.今日.元気で健康に生きている(生かされている)事を.当たり前(当然)と捉え.感謝も歓びもなく.感覚的.感情的.主観的に.決して満たされる事のない欲望に翻弄されたり.執着したりしながら無明に生きています…
例えば.松尾芭蕉の最後の句でもある[旅に病み 夢は枯野を駆け巡る…]について見れば.まだ旅を続けたいと言う願望と共に.病んで寝込んでみて.初めて.元気に駆け巡った日々が何と素晴らしい日々であったのかと想い至らなかった後悔の句でもあるのです…
人間.病んで寝込む事もあるもの.元気に駆け巡れるだけで.幸せなのに愚かな人はそんな苦に直面しないと中々.解らないもの…
正に[後悔.先に立たず]なのですから.苦に直面せずとも.今ある幸せに気付く事こそが幸せの鍵であり.先ず命.無事.健康.平和.安全.安定…を.当たり前だと錯覚してないで.有り難く奥深く味わえる自分を育成してゆく事が大切なのです…
また死への恐怖.その苦しみのエネルギーを.今.生かされている.という感謝のエネルギーに変えてゆくのです…
端から.今という一瞬に.永遠を映しだすしか道はないのです…
例え.大した苦労もなく上手く行ったとしても.果たしてそれは本当に良かったのでしょうか…
物事が上手く運ぶには.個人の能力も必要ですが.それ以上に時流.環境.知識.情報.意識.人運などに恵まれただけかも知れず.また欠かせないものであり.それらこそ諸行無常な変化生滅してゆくものなのですから…
[待ちぼうけ]という童謡があります…
ある日.野良仕事をしていたら.偶々.ウサギが勝手に転げてきて得をした事に味をしめて.次の日からは.またウサギが転げて来ないかなァと.野良仕事を感けて待っている愚かさを謡っているように.正に楽は苦の種.苦は楽の種なのですから…
・苦楽一如
・楽しみとは.楽しみという形をとって現れた苦しみである
・楽しみは、.すぐに色あせて
苦しみに変わってしまう…
・無常を観ずるは菩提心の初めなり…
菜根譚より
人はよく菜根を咬みえば.即ち百事をなすべし.堅い菜根を噛みしめるように.苦しい境遇にも耐える事ができれば.人は多くの事を成し遂げる事ができる…