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「俺は100の自分より0の初心を見てる」
俺は100の自分より0の初心を見てる
平野歩夢
(2022北京五輪スノーボードハーフパイプ金メダリスト)
「初心忘れるべからず」を自分の中に落とし込んで、自分の言葉で表現している。この言葉の意味を深く理解して、実感しているからこそできることだろうな。
私は「初心忘れるべからず」をちゃんと咀嚼したことはないかもしれない。
平野歩夢選手の言葉と人間性に、また圧倒されてしまいました。
未だに平野選手ほどの理解ができていないと思うので、本人の解釈とズレているところもあるかもしれないけど、「100の自分」をはっきりとイメージできているからこそ、「100に近づいていく途中段階」のどこに自分がいるかを認識できて、そのうえで「0の時の思い」を大事にしたいと思えているのかなと感じた。
スタートもゴールもブレていないから、着実に「100の自分」に近づける。
私はというと、あまり「100の自分」をセッティングできたことがない。
つまり、大きな夢を具体的に掲げたことがない。
「バリバリ働くかっこいい女性になりたい」とか「幸せな家庭を築きたい」という夢はあった。でも、具体的ではなかった。そのためか、まだ何も成し遂げていない。
今になって思えば、将来を具体的にイメージして、それに向かって努力している高校の同級生たちがいた。
アナウンサーを目指していた女の子がいた。いろんな経験を積むために、学校で禁止されていたけど、こっそりバイトをしていた。留学もして、有名私立大学に進学した。その後、地元ではないけど地方のテレビ局でアナウンサーをして、今は地元でラジオのパーソナリティをしている。
「ペン1つで勝負したい」と、全国紙の新聞記者になった女の子もいる。アナウンサーか新聞記者で迷ったらしいけど、そんなかっこいい理由で進路を決めたと聞いた時は、そのかっこよさに唸った。
「手に職をつけたい」と、高校では文系クラスだったのに薬学の道に進んだ子たちもいた。お互い社会人になってお茶した時に初めて聞いたけど、その時でさえ私には「専門職だと食いっぱぐれないから」という意味が分かっていなかった。転職活動をする時にようやくその考えの重要性が分かった。
公務員になった子たちも、公務員になるために法学部や経済学部を選んだという。そんな理由で学部を選ぶなんて、これっぽっちも考えていなかった私がいかに世間知らずだったか思い知らされた。
同じ教室で同じ時間を過ごしていた子たちが、ちゃんと夢を叶えて輝いているのは誇らしく感じる。
同時に、自分はどこでその子たちと差がついたんだろうと不思議に思う。
でも、ずっと持ち続けている夢がないとダメということではないはずだ。
その時その時にやるべきことをこなしていくのも「100の自分」になれる。
いまさら「どの仕事が自分に向いてるか」とは考えない。
転職もしたことがあるから、「この会社じゃなかったら自分は輝けるのに」という後ろ向きなことはもう思わない。
今の仕事を満足いくところまで全うしてから、セカンドキャリアを築きたいとは思う。
まずは今の仕事の「100の自分」をイメージできるようになりたい。
考えてもどうしようもないことだけど、「生まれ変わったら、何かのプロフェッショナルになりたい」と妄想することがある。
物心つく前から何かに打ち込んで、その道で世界のトップを目指す。
どんな景色が見えるんだろう。