運動会後に江戸から苦言 中身おっさんを自称する女子めっちゃオンナみたいな、ちょっと違うような話
息子たるすけ(3才)の初めての運動会は、終日雨の予報を覆しての晴天のもと行われました。
前日にてるてる坊主を作って吊るしておいた効果かもしれません。運動会を終えて帰ると、それはまるで力を使い果たしたかのように床に落ちていました。
年少さんのたるすけが出場するのは、かけっことダンスです。それからママと一緒に障害物競走もがんばりました。
かけっこは年中さん、年長さんもそれぞれ行いましたが、学年が上がるにつれて走るフォームがだんだん大人に近づいていくのが、なんだか感動的でした。年少さんのたるすけは、まだ腕を振ることを知らないので、両腕をピンと伸ばしたアラレちゃん走法です(それでも加速できるのがすごいところで、初動の違いも大いにあるかと思いますが、大人をキーーーーンと置き去りにする速さを誇ります)。
で、年中さんになるとおおむね腕が振れるようになり、年長さんはさらに腿があがる。競争心が芽生える。大人やん!!2年前はアラレちゃんだったあの子もこの子もこんなに大きくなってもうて!!と、知らん子の成長に涙が出るのでした。運動会ってすごい。
たるすけの初めての運動会は、私にとっても親として参加する初の運動会でした。私の両親もこんな風にちょっと涙ぐんだりしていたのかな。と、私が幼稚園児だったころに思いを馳せました。
当時の運動会といったら一日がかりのお祭り騒ぎで、父方の祖父母が前日から我が家に泊まり込んで応援に来ていたので、母は明らかに疲れて機嫌が悪くなりがちでした。父は水筒にお酒を忍ばせて、お昼の前にはうつらうつらしていました。私はせっかく5月生まれで体格にも恵まれていたのに、どうして走るのが遅いのかと祖父母に問い詰められ、困っていました。
そういえば、あまりいい思い出はありません。
たるすけの園の運動会は、コロナ禍を経たこともあってか簡潔なものでした。観覧は園児の祖父母までOKですが、我が家を含め父母のみの家庭がほとんどです。サクサクッと競技を進めて午前中のうちに解散。お祭り感こそあまりないけれど、お弁当の用意もいらないし、私の母がしていたような義父母の接待もないし、たるすけとの時間に集中できてよかったと思っています。
たるすけが最も気合を入れて臨んだのが、ダンスでした。幼稚園では恥ずかしがりやさんと言われているたるすけですが、実は、おうた大好き踊るの大大大好きな根っからのウェイウェイボーイです。日頃はモジモジしがちなたるすけが、ダンスの練習はノリノリで頑張っていたそうです。
さらに本番では、先生方がかわいい衣装を用意してくれました。各クラスの色(たるすけは赤組さんなので赤色)のビニール製のフリルです。それを腰と両手首につけ、フリフリッとポーズをきめると、あちこちから可愛い可愛いと歓声があがりました。
小さな手足を大きく伸ばして一生懸命踊り、ときどき自由に散ったり団子になったりするフリフリの年少さんたちは、まるで妖精の大群。可愛いの過多。たるすけは(おそらく背の順に並ばされているため)その先頭を担います。緊張のせいか極めて深刻な顔で、なんならダンス中っていうより公文中?割り算してる?ってくらいの面持ちで、せっせと踊っていたのでした。可愛い!
ところでこのフリフリフリル、年少ガールズは「プリキュアのふく」とか「プリンセスのドレス」とか呼んで喜んでいたようです。一方、ボーイズはというと、なんかようわからんけど褒めてもらってるしと、おおむねまんざらでもない様子でした。とくにたるすけは、可愛い可愛いと気に入って何枚も写真を撮らせていました。
ところがです。運動会を終えた夜、ダンスを頑張るたるすけの姿を、写真・動画共有アプリに載せ、親戚一同に見せびらかしたところ、義父母から苦言が届いたのです。
いわく、「男の子なのにヒラヒラした服なんか着せられて可哀想」。どんな些細なきっかけで変な趣味に走るか分からないんだから!とご立腹でした。
彼らの言うところの変な趣味というのは、どうやら女装とかそこら辺のことを指すようです。この「変」という言葉のチョイスにセンスのなさしか感じないのですが、今は置いておくとして。以前から、たるすけがピンク色を好むことや可愛いぬいぐるみを欲しがることについて、「女の子が好きなものだから変」だと顔をしかめたがる義父母なのです。
昭和的といえばそうなのかもしれません。義理の実家では、例えば正月などに一同が集って食卓を囲むときには、男が上座・女は下座と決まっています。昭和を通り越して江戸です。令和の日本で江戸の暮らしを守っている世にも珍しい一族なのです。
おそらくその江戸的文化のひとつとして、男らしさ・女らしさを大切にしたがります。そんな彼らですから、うちの大事な跡継ぎにフリフリつけてくれるとはどういう了見やとお怒りなのです。そもそも跡継ぎとは呼んでほしくないですが。何を継がせるほどのもの持ってんねん。あんたら天皇か。世は令和、黒船は帰ったしリア・ディゾンが帰国したのさえとっくの昔。自由に生きてね!ぜんぶポイしていいよ!
義父母はもとよりたるすけのピンク好き・可愛いもの好きなところが、男らしくない・女々しいと案じていました。そこに今回、フリフリフワフワの愛くるしい、つまり彼らとしては極めて女の子的な衣装を着させられたことで、このまま女子的傾向が加速して終いには女の子になりたいなんて言い出したらどうしてくれるの!と、取り乱してしまったわけです。
実際、誰が何をきっかけにして何に目覚めるかなんて無限の可能性があるのですから、そんなことありませーんとも言い切れません。ただあったとして、そんなに問題なくない?というのが私の親としてのスタンスです。いや、問題はいろいろ起こるだろうけど。それでも問題なくない?
無限の可能性からどのルートを選ぶことになったとて、問題はいろいろと起こるものですし。どこで何に目覚めとんねん目ぇ覚ませやと、そもそも何もなかったとこにしてしまうのがいちばん問題のように思います。
なので私としては、義父母の懸念など、江戸にお持ち帰りくださいという感じです。それに、たるすけのことを「女の子っぽい」と心配するのは、私の目からは正直とっても見当違いに思えます。
私がいつも見ているたるすけは、男らしいか女らしいかで言えば圧倒的に男です。ザ・男。将来は島耕作になるんちゃん?てくらい男です。
のりもの大好きなトミカマニアですし、昆虫も恐竜もロボットも戦隊ヒーローも嗜みます。じっと座っているのが苦手で移動は小走りもしくは全力疾走。常に飛び降りるところを探しています。敢えて男らしいものを見せよう与えようとした覚えはありませんが、いつの間にか趣味も言動も完全なる男の子。以前、おともだちの女の子がうちに遊びに来たとき、その子がちょこんと座っているだけで、うわ座ってるやん!大人か!と驚いてしまったほどのワンパク男児は、ピンクが好き。ぬいぐるみも好き。可愛いものはだいたい好き。
男らしさ・女らしさというのは傾向として確かに存在しているように見えます。男らしい男の子が、女の子に選ばれがちなピンクを好きになった途端、女らしい男の子に変身してしまうかというと、そんなことはありません。どの人のなかにも、男らしさと女らしさが共存していて、その成分や配分が各々違うというだけ。多様性を尊重する令和には当然のことのようですが、多様の多様っぷりをそのまま認めるって案外難しいのかもしれません。
たるすけはお洋服を買いにいくと、必ずのりもののプリントがあるものを選びます。そして「これ、ピンクはないの?」と悲しそうに言うのです。