転校

　さようなら。仲良く出来そうで嬉しかったけど。
　さようなら。君はわたしを嫌いだと言っていたけど。
　こんにちは。はじめまして。と言ったときの、わくわくした顔をわすれない。
　わたしを赤ちゃん扱いして、世話をしたがった友達。
　わたしの髪飾りを盗んでバレそうになってゴミ箱に捨てた友達。学校の中庭で鬼ごっこした。
　一年近く、いろんなことがあったけど、お別れしたくなかった。手を振って笑ってたのは、最後まで楽しくいたかったからだよ。
　学校から帰ったあとも、笑ってたよ。
　荷物がまとまっているのを見て、夜は、ひとりで泣いた。
「あいちゃん東京県に行っても元気でね」
「あいちゃん小倉県に行くの？東京県に行くの？どこに行っても、元気でね」
　元気だよ。みんな。わたしのことを覚えているかわからないけれど。きっとみんなの方が立派に生きていると思うけど。
　夜になって「行きたくない、行きたくない」と泣いたよ。

（7才の転校）