#1|読書のあとの暴動|2024.08.01
ナージャ・トロコンニコワ『読書と暴動ーープッシー・ライオットのアクティビズム入門』
東京都知事選のいろいろを見て、疲れてたときに読んで元気をもらった本(自分は都民じゃないけど)。
カラフルな目出し帽をかぶって抗議活動する、ロシアのアート集団、プッシー・ライオット。著者は、その創立メンバーである。2011年の結成以降、「パンクフェミニズム」を合言葉に、ときに大統領プーチンに、ときにロシア正教会大司祭に、セクシスト、レイシスト、ファシストに、勇猛果敢な「政治的芸術行動」を行なってきた。
それをロシアで継続する困難は、容易に想像できる。事実、ロシア当局の怒りを買ったトロコンニコワは、結成の翌2012年に刑務所送りにされた(ビースティ・ボーイズやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、オノ・ヨーコなど、世界の多くのアーティストの支援声明を受け、2013年に釈放)。
そんな彼女の壮絶な人生の指針となる「10のルール、戦術、戦略」を、本書は伝授してくれる。
原書《Read & Riot》の刊行は、2018年。その後の世界情勢の変化(というか、悪化)により、本書の記述は、古びるどころか有用性を増している。彼女はいうーー「海賊になれ」「誇り高き魔女であれ」(余談だが、本書を読んでからしばらく、「海賊」と「魔女」について考えてしまっている。またいつか書くかも?)。
本書の最たる魅力は、読書量と勉強量に下支えされた多彩な引用である。ドストエフスキー、ブレヒト、チョムスキー、キング牧師、フーコー、ファノン……と、彼女は多数の先人の言葉を魔術的に召喚してみせる。
「暴動」の前に「読書」がある。タイトルの、この順序を重く見たい。裏技的な「賢さ」(?)とは違う、知性に裏打ちされた反骨の実践に、いまは興味がある。
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