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クラブ活動と私#13:蜘蛛ニモマケズ

《これまでのまとめ》

※前回までのおはなし?※

今回恋愛要素はございません。
部活っぽい事します(部活しろ)。

その日もリプレイ用のセッションのため、
ダイスやルールブック、キャラクターシートなどを
机の上に拡げ、録音用のマイクロカセット
レコーダーを準備していた。

そこへマスタースクリーンの向こう側の
部長・BAN太さんからお声が掛かる。
「K(私)ちゃん、これ見てみて~。」
と、差し出されたのは国内では社会思想社が
発行していたテーブルトークRPGを中心に
取り扱うゲーム誌『ウォーロック』日本版だ。

当時ウォーロックでは
『トンネルズ&トロールズ(T&T) 』という
TRPGを誌面の主軸に据えており、その拡張版
『ハイパーT&T(ハイT、HTT)』の日本版の
発売に向けていくつかの企画が進行していた。


ここで『トンネルズ&トロールズ(T&T)』について
ご紹介しておこう。
”T&T”はRPGの原点(原典)ともいうべき
『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』のローカル
ルールから発展して生まれたRPGのルールブックで
D&Dから2年後にフライングバッファロー社から
発売された古典のRPGシステムだ。
名前がよく似ているのもその発祥を思えば
”なるほど”といったものである。

トンネルズ&トロールズ。
国内では当時、社会思想社が販売。

T&Tの特徴はD&Dをより簡素に、遊びやすく
という元々のコンセプトを軸にわかりやすく
テンポの良い(そしてちょっと大味な)ゲーム性が
魅力のシステムだ。
卓上に大量に転がされる6面ダイスの絵面は
なかなか爽快だ。

そして何より、当時BOXタイプでルール1セットが
数千円というそれなりに高価だったTRPGの中で、
数百円の文庫サイズという非常に安価で入手も
容易な(書店で買える。BOXタイプは販売店を
探すところからそれなりにハードルが高かった)
システムとして中高生などに人気が高かった。

ウチの歴代部長も何故かこのT&Tを好む人ばかり
だった。その筆頭がBAN太さんなのだ。


閑話休題。

前述のウォーロック誌上で行われていた日本版
HT&T独自の企画として
「読者が考えた魔法(と呪文名)募集」
というものがあった。

T&Tは魔法の名前が非常にユニークだ。
初級から活躍する攻撃魔法
「これでもくらえ!(Take That,You Fiend!)」は
その頃にTRPGをプレイしていた人なら
T&T未プレイでも知っている呪文だろう。

さて、先程差し出されたウォーロック誌。
開かれているのはその読者企画のページだ。

「・・・マジか?!」

そう、誌面に我らが部長・BAN太さんの名が
記載されているのである。

BAN太さんはマスタースクリーンの向こうで
図書券をヒラヒラさせていた。
採用された読者へのプレゼントだ。

BAN太さんが名付けた呪文は「蜘蛛ニモマケズ」
言うまでもなく宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を
もじったネーミングだ。

その効果は一言で言えば”ウォールウォーキング”。
壁を自由に歩けるようになるという魔法で、
HT&Tで追加された”怪盗系魔法”に属する。

”怪盗系魔法”は文字通り「怪盗」というこちらも
HT&Tで追加された”職業クラス”のための呪文系統。
なおややこしいのだが元々T&Tには「盗賊」という
クラスもある。こちらは”魔術師”の魔法を使う。

非常にBAN太さんらしいユーモアの効いた
ネーミングセンスに私は軽い感動を覚えた。


さて、今日のセッションが始まる。
使用するシステムはもちろん!

・・・D&Dである。
BAN太さんは6面ダイスがじゃらじゃら入った
ダイスポーチからD&Dに必要な20面、12面、
10面、8面、4面それぞれのダイス、そして
6面ダイスを3つだけ取り出した。

まぁ、どうせまたあのポーチからは6面ダイスが
うじゃうじゃ出てくる事になるのだが。
敵モンスターのマーカー代わりに。



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