本の紹介⑪ 染井為人
「正体」
一家3人を惨殺したとして逮捕され、死刑判決を受けた18歳の少年、「鏑木慶一」。
その少年が脱獄をし、逃走を続けている。
そんな、世の中が震え上がるようなニュース速報からスタートする本作。
タイトル通り、本作では「鏑木慶一」の正体を探すお話。
小さな子どもまで殺した、凶悪な殺人犯であるとテレビや、SNSでは情報が飛びかっている「鏑木慶一」。
本当にそうなのか?
犯したとしたらなぜなのか?
どんな理由で?
なんで、逃げ回っているのか?
なぜ、なぜ、なぜ、、
読み進めていくと、そんな疑問が次々に湧いてくる。
そう思ってしまうほど、いい男であり、いい子である「鏑木慶一」。
警察やマスコミがテレビで流す情報は本当に正しいのか?と疑ってしまうほどの人間性。
どんどん正体が分からなくなっていく。
まさに、
【仄暗い迷宮へと誘なわれる】(本文引用)
そして、
【散らばったパズルが徐々に組み立てられていくような
その完成図は霧がかったように曖昧模糊としている。】
(本文引用)そんな一冊でもある。
読めば読むほど、「鏑木慶一」の正体が、分かりそうで分からない。
しかし、
「ぼくにはわかります」
この一言で、物語の完成図にかかる霧が、徐々に晴れていく。
誰が嘘をついているのか。
警察か、司法か、犯人か、それとも、、、
「鏑木慶一」。果たして彼の正体は。