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エッセイ 「アヴェ・マリア」

先日、夫が検査入院した時のこと。
 検査も無事に終わったとのことで、30度を超える真夏日に私はテクテク歩いて坂を登り、汗をふきふき病院へと向かった。コロナ禍の時に制限された面会も、今回は午後2時から4時まで可能となった。一番暑い時間帯だ。

 その病院は何か新しい病気が発生すると、全国ニュースに毎度映し出される大病院。たまたま近所の個人病院の医師から紹介されてご縁ができたところ。ともかくスペック高し、最上階の特別個室はどんなだろうと想像をかき立てられるほどだ。

 地下には吹き抜けの明るいスペースがあり、ホールのような広いラウンジにはグランドピアノも置いてある。周りにはコンビニやレストランも。そこでちょうど面会時間後に、この日はコンサートが行われるという。

「ご一緒に聴きに行かれたらいかがですか?」と看護師さんからも勧められ、夫は点滴を外してもらい、さぁコンサートへとベッドから離れる直前、手続きがいくつか必要になった。もう席は埋まっているかもしれないねと
話しつつも、気持ち急いでコンサート会場へと向かってみることに。

 5分前に到着すると、N響の元主席バイオリニストと留学先のドイツで賞を取ったことのあるピアニストによる、本格的なクラッシックの演奏だと知る。
 へぇ、すごいですね~と思いながら二人で席を探そうとした矢先、入院患者のご家族はこちらへと勧められた席はなんと一番前!ありがたい特等席?いやいや、ちょっとこの席はマズイ。
(私は歩き疲れている。寝てしまうかも…、イヤ確実に寝る!)

 鮮やかな緑色のドレスを身にまとい、バイオリンを抱え登場された方の演奏は、技巧的で激しく私を寝させることはなかった。
 病人には穏やかな曲が…と、入院中の夫が思ったのだから間違いない。
ただ最後のアンコール曲「アヴェ・マリア」は格別だった。これを聴くために私は病院に来たのね!神様ありがとう!あれ違う?

 その翌日、夫は無事に退院したのでした。

今回のエッセイ塾「ふみサロ」での10月の課題図書
詩と死をむすぶもの  谷川俊太郎・徳永進 著
からのリブリオエッセイになります。

読書感想文はこちら↓

今回はもう少し寝かせてというか落ち着いたら書き直すことも
検討するという感じで、修正なしでアップです。

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