貴方がいない初めての夏
金色に染まる空がゆっくりと夕闇に溶け込んでいく。
小さな寺院から涼風に乗って祭囃子が微かに聞こえ始めた。
ああ、もうそんな季節だったんだな。と少し懐かしく感じた。
ふと、視線を前に移すと浴衣の帯を直す少女が頬を赤らめ誰かを待っている姿が目に入った。
好きな子と浴衣デートをするのかなと微笑ましい光景が心に和む。
いつだったか、私にもそんな時間があった気がする。好きな人と、楽しい場所で笑い合う、あの瞬間…。
今の私はどうだろうか。ふと不安が胸をよぎる。
けれど、貴方はきっと俯いた私は嫌いだよね。
静かに滴る髪を耳にかけ私は、帰路につく。
蛍火が、薄明るく私の足元を優しく照らしてくれた。
もう少し、頑張ってみようかな
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