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「虎に翼」第23週「私ね、苦しいっていう声を知らんぷりしたり、なかったりする世の中にはしたくないんです」
今週の虎に翼、本当に良かった。
普段、それほどドラマを見て涙を流さないのだが、今週は涙腺が緩みっぱなし。トドメはあさイチの伊藤沙莉ちゃんだった。一緒にこれまでの歩みを振り返って泣いてしまった。
さて、タイトルの言葉の前に、原爆裁判のシーンから。
もうすでにたくさんの方がnoteに書いていらっしゃるし、弁護士の方の解説は本当に「なるほど」と思わせられることばかりで、ここには特に書かないつもりだったのだが、今日(9月6日)の判決理由にだけ少し触れさせてほしい。
本当に素晴らしかった。
ただただ涙しながら聞いていた。
しかも、これは実際の判決理由とほぼ同じだと言う。
東京原爆裁判
判決は、原告の請求を棄却したが、「アメリカ軍による広島・長崎への原爆投下は国際法に違反する」とし、「被爆者個人は損害賠償請求権を持たない」が、「国家は自らの権限と責任において開始した戦争により、多くの人々を死に導き、障害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。しかもその被害の甚大なことは、とうてい一般災害の比ではない。被告がこれに鑑み十分な救済策を執るべきことは、多言を要しないであろう。それは立法府および内閻の責務である。本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられない」と述べている。
法律の言葉は、そっけなく味気ないものだと勝手に決めつけていた。
まさかこんなにも人間愛に溢れた言葉だったとは。
そしてこの判決理由が実際に国や社会を動かしていったということも私は知らなかった。
日本被団協のホームページによれば、この裁判の後に被爆者援護施策や原水爆禁止連動が前進したのだと言う。逆に言えば、この判決理由がなければ、救済のための国の動きはもっともっと遅かったということなのだろう。
この訴訟提訴後の1957年に、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律が制定された。実に原爆投下から12年もの月日を要している。このドラマで言えば雲野先生(塚地武雅)たちが声を上げなければこの法律制定もその時点では叶わなかったかもしれないということなのだ。
私ね、苦しいっていう声を知らんぷりしたり、なかったりする世の中にはしたくないんです。
先週の記事では、寅ちゃんが押し付けがましいとか、寅子指数ダダ下がり中などと書いてしまった。
でも寅子のこの思いと、前のめりにそれを実現しようという意志があってこそ、社会が少しずつ変わっていったのだなあと今週改めて思ったのだった。
そしてもうひとつ。今週の胸に迫る言葉。
あなたきれいね。凛としている。
広島からやってきた原告の吉田さん(入山法子)の言葉。
これはよねさんの内側から滲み出る美しさをまっすぐに表している。
かつて美人コンテストで優勝し、周囲の目を集めていた吉田さん。それなのに今は被爆した火傷の跡が人の目を集めてしまうという悲劇。
外見にばかり注目される吉田さんだからこそ、よねさんの内面的な美しさに気づけたのではないだろうか。
声を上げた女に、この社会は容赦なく石を投げてくる。傷つかないなんて無理だ。
だからこそせめて心から納得して自分で決めた選択でなければ。
ああ、よねさんもたくさん傷ついてきたのだ。それでも自分が決めた選択を貫いてここまできたのだ。そして苦しむ人にそっと寄り添い、一緒に考えてくれる。
それにしても、スチュアート・マードックの歌う「You are so amazing」は,
なんて美しい曲なんだろう。この曲が流れてくるだけで涙が溢れ出てしまう。
歌詞を訳してくださった方がいらっしゃたのでリンクを貼っておきます。
今週は素敵な言葉がありすぎて、書ききれない。
締めはこの一言。
いきなりわいて出てきてうるさい
よねさんがいてこその寅ちゃんなのだなあ。