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【ゾッとする話】「他人の感情をコントロールするおばちゃん」がある幸せ

5年ほど前の会社帰りのこと

当時、地元駅から家まで歩いて帰ることを基本にしていましたが、その日は帰りが遅くなったため、バスを利用することにしました



バスターミナルに着き、既にできていた乗客の列に並ぶと間もなくバスが到着


自分が利用したバスは地元駅が始発のバス

到着した時点でバスには運転手以外誰も乗っていません



地域によって、前側ドアから乗車するか後側ドアから乗車するか、乗り方が異なるかと思いますが、自分の地元は前側ドアから乗車する決まり

スピーカーから「お待たせしましたー」の掛け声が出ると同時に、前側のドアが開きます



前に並ぶ人に続けて、自分もICカードをかざして乗車します


(さて、どこに座ろうかなー)

比較的すぐに降りる自分は、あまり降り辛い席には座りたくない


(最前列の一人掛け席がベストだけど・・・埋まってるな

2列目以降の1人掛け席も・・・空いてるのは優先席だけか

2人掛け席は・・・降り辛いからパス)



なんて考えているうちに最後列の座席にたどり着いてしまいました



座ったのは最後列、前方に向かって右側の窓側席


(ちょっと降り辛い席になっちゃったな)


後続の乗客も次々と着席し、自分の前列の2人掛け席も埋まります

窓側には、おっとり系のおばちゃん

通路側には、中年サラリーマン



座席が一通り埋まった後も乗客は増え続け、通路も人でいっぱいになります



そこからしばらくして、もうそろそろ出発時間かというそのとき

自分の前列に座っている先のおっとり系おばちゃんの挙動に異変が起きます


座席に着いてからボーッと外を眺めていたおばちゃん

何かに気付いたかのように、ゆっくりと前を向きます


そして

おもむろに


手元を見て・・・


洋服のポケットに手を入れて・・・


カバンを開いて中を眺めます



わずかに首を傾げた後、再びこの一連の動作を繰り返します


手元を見て・・・

洋服のポケットに手を入れて・・・

カバンを開いて中を眺める




さっきより動作がやや早くなったような気がします

すると今度は、おばちゃんは小声で何かをつぶやきながら、カバンをゴソゴソと漁り始めます


「えっ・・・あれっ・・・」


おばちゃんの左隣に座る中年のサラリーマンもこの異変・・・いや、おばちゃんの身に何が起きたかを察したようでした



(あぁ、このおばちゃん、何か無くしたんだな)



おばちゃんの動きは、徐々に早く、そして、激しくなっていきます


そこにはもう、おっとり系おばちゃんは居ません



鬼気迫るオーラを身に纏い

なりふり構わず何かを探すおばちゃん

左隣の中年サラリーマンに肘がガツガツと当たっていないかなんて気にしていられません



おばちゃんの動きが速く、激しくなるに連れて、おばちゃんの身に起きたことに勘づく人は増えていきます


件の中年サラリーマンの横に立っている人


その横に立つ人


またその横に立つ人


おばちゃんが視界に入らない位置に居る人ですら何かを感じているのではないかと思うほどの異様な空気感


(それにしてもおばちゃん必死だな、一体、何を無くしたんだろうか)



そんな声が聞こえて来そうでしたが、必死のおばちゃんを笑う者は一人もいません



(座席の下に落としたのかな・・・いや、バスに乗る前に落としたのか?)



皆がおばちゃんを心配し、応援しています



「お財布っ、お財布がっ、お財布がっ・・・」



バスはもう出発寸前

降りるなら今すぐ決断しなければならない


そんな焦りがおばちゃんを一層焦らせます



(おばちゃん、お財布無くしたのか!?おばちゃんが席を立ったら、すぐ外に出られるように通路を開けてあげなきゃ!)


皆がその空気を察し、暗黙の了解で出口までの通路が開いていきます


時間は遂に出発時刻に


最後の乗客が乗ったことを確認した運転手が出発の合図と共にドアを閉めます


プシューっ・・・



その瞬間、おばちゃんはバスを降りる決意をした素振りを見せます



(おばちゃんが降りるぞー!みんな通路を開けろー!)


サーっと、おばちゃんがバスを降りる通路ができあがったそのとき


おばちゃんは、大きな声で・・・


「すいませーん!」



「お財布が・・・」




「・・・ありましたー!」



カバンから出されて高々と掲げられたおばちゃんの手にはしっかりとお財布が握られています



「・・・おぉー」



周囲に居た人は、狐につままれたような複雑な顔を見せながらも、小さく歓喜の声を漏らしています



一体、何が起きたのか


おばちゃんに起きたことを推測するに


バスが出発しようとするその瞬間

おばちゃんが降りる決意をしたちょうどその瞬間



おばちゃんはお財布を見付けていたのです



しかし、バスを降りなければと焦っていたおばちゃん

そんなおばちゃんは、声を発すること止められず・・・


お財布を見付けたことを報告することになってしまったのです


「はいっ?何かありましたかー?」


運転手の声がバス内のスピーカーから鳴り響き


しばらくしてバスは走り出しました



ということで、いかがだったでしょうか

物を無くして焦ってしまったおばちゃんがやらかしたことがちょっと面白かったのもありますが、察する文化というか、おばちゃんに共感する周囲の人の姿が面白いというか、ある意味感動的だったというお話でした


以上!


皆さんも面白いお話があったら教えてください

では、また












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