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家庭の味は祖母の味

 幼い頃から祖母がつくってくれる料理は、不味くもなく美味しくもない。
味が濃かったり薄かったり、食感が固かったり柔らかかったりするのは日常茶飯事で我が家ではそれが家庭の味になっていた。
 顎が鍛えられそうなくらい食感が残った野菜。べちゃっとした衣の天ぷらや、丸コゲのハンバーグ。野菜と肉がゴロゴロしたルーの少ないカレーライス。それらを、なんか違うんだよね(心の声)と思いながら黙って口に運んでいた。
 そんな幼い頃の記憶を思い出すキッカケとなったのは、祖母がつくるホットケーキを10年ぶりに見たからであろう。厚さは3センチくらい、上は焦げて真っ黒で、たまに野菜が入ってたりする完全オリジナル。
 ちなみになぜ焦げているかというと、フライパンに生地をすべて流し入れ蒸し焼きにするからである。たぶん一回ずつ焼くのが面倒で、そんな我流が生まれたんだと思う。
 焦げた部分は当然苦い。昔はコゲを剥がしていたこともあったけど、今はその苦みすら懐かしいと思ってしまうほど、大人になっていた。

 大人の私はカレーライスはルー多めでつくるし、野菜は柔らかくなるまで調理する。味つけは自分の味覚に頼って自分なりの濃さにする。ナポリタン、オムライス、チャーハン。 そうやって美味しいものがつくれるようになっても、黒いホットケーキは変わらず美味しい。
 一点を見つめぼんやりと思い返す私に、不思議そうな顔で祖母が
声をかける。「コゲてるとこ苦いでしょ、剥がして食べな。」
「大丈夫。これがいいの。」私は、ふっと笑って口いっぱいに頬張った。

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