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ルールがあるから自由に動ける! 兄弟属性部下のポテンシャルを引きだすヒント

はじめに

「なんで自分の意見が通らないんですか?」「こんなやり方じゃうまくいかないですよ!」
 
静寂をきりさいて、突然ひびきわたる強い語気のこんな発言……
 職場で「自分がチームを支えている」「もっと自分の考えで進めたい」という強い意欲を持つ部下に対して、どう接すれば良いのか迷うことはありませんか?
 そんな時は、兄弟属性部下が問題の中心にいるかもしれません。
 強いストレス環境で部下を掌握する必要がある米軍では、人の属性を「親」「子ども」「兄弟」「親せき」の4つの属性に区分して考えます。この中の兄弟属性部下は、やる気がある分、リーダーの指示よりも自分の考えを優先しがちです。しかし、兄弟属性部下の特性を理解し適切な対応をすれば、彼らはあなたの右腕となりえるポテンシャルを秘めています。
 この記事では、兄弟属性部下の力を引きだすヒントとして、典型的な事例とリーダーとしての対応方法を解説していきます。兄弟属性部下がチームの中心として活躍する場を整え、職場の成果につなげていきしょう。


兄弟属性部下のパフォーマンスをMaxにするには

 兄弟属性部下は、競争心が強く自分の意見をしっかり持っているため、リーダーや他のメンバーと意見が対立したり、チームの中に派閥ができたりすることがあります。しかし、この行動原理を理解し適切な関わりを持つことで、チーム全体のパフォーマンスを大きく向上させることができます。

行動原理を理解する。

 兄弟属性部下の行動には、「自分が正しい」という強い意識があります。しかし反発や独自のルール作りといった行動に出ても、根底には「チームに貢献したい」「難しい課題をやりとげたい」という思いがあります。彼らの行動の背景や意図を理解することで、リーダーと部下の間に信頼関係が築かれ、協力しやすい基盤ができます。

納得させてルール化する。

 兄弟属性部下がチームの摩擦の原因となる場合には、リーダーが解決策を示して納得させることが重要です。彼らは「自分が納得したこと」については全力で取り組む傾向にあります。リーダーとしての方向性を明確に示すと同時に、チームのルールを作って全員に共有しましょう。ルールは、行動をしばるためのものではありません。ルールがあれば、その枠の中で彼らは自信を持って自由に動けます。こうしたルールの存在は、他のメンバーとの協力体制を生みやすくし、チーム全体が目標達成に向けて一丸となることを助けます。


典型的な状況と兄弟属性部下のポテンシャルを引きだすヒント

状況1:意見が対立して反発が生じる。

(田中さんの場合)

状 況
 プロジェクト開始直後の会議室、リーダーの中野さんは頭を抱えてしまいました。自ら進んで難しい仕事を引き受け、みんなを引っぱる田中さんが、今回ばかりは彼の意見に従わないどころか、たびたび反発してきます。
「こうした方が効率的です!」
田中さんは力強い声で提案しますが、それは中野さんが考えていた方向性とは大きく異なるものでした。

解 説
 リーダーの中野さんはその日の夕方、田中さんと二人だけで話をする機会を作りました。
「田中君、今回のプロジェクトに対して熱意を持ってくれているのは本当に心強いよ。ただ、少し話を聞かせてもらえるかな?どうしてその進め方がいいと思ったのか教えてほしいんだ」
 中野さんは、まず田中さんの意見を否定することなく、なぜ彼がその提案をしたのかを丁寧に尋ねました。
 田中さんは「この方法なら短期間で成果を出せると思ったんです」と真剣な表情で答えました。その理由は、田中さんがチームを成功に導きたいという強い思いから来ているものでした。中野さんは、田中さんの提案がチーム全体を考えての行動であることを理解しました。
 次に中野さんは、田中さんにチーム全体の視点を共有しました。
「田中君の提案には確かに良い点があるよね。ただ、プロジェクト全体を見渡すと、今はチームの意見を一つにまとめて進むことが重要なんだ。どうすればみんなが協力して進められるか、一緒に考えてみないか?」
 田中さんはしばらく黙っていましたが、やがて「確かに、全員が同じ方向を向いている方がスムーズに進みますね」と納得した様子でうなずきました。
 中野さんは、田中さんの提案を完全に否定するのではなく、一部を取り入れて全員で共有できるルールとして取りまとめました。このようにすることで、田中さんの自主性を活かしながらも、チーム全体の調和を保つことができたのです。


状況2:独自のルールをつくり、チームの進行が不安定になる。
(佐藤さんの場合)

状 況
 新しいプロジェクトが始まって1カ月、リーダーの山田さんはチームの空気がぎくしゃくしていることに気づきました。
「最近、みんな元気がないな。何が原因なんだろう?」
 山田さんが状況を詳しく確認すると、原因は兄弟属性部下の佐藤さんにあるとわかりました。佐藤さんは仕事に対する熱意が高く、チームの中でも頼りにされる存在でした。しかし、今回のプロジェクトでは、佐藤さんが「自分が正しい」と考える進め方を強く主張し、他のメンバーの意見を聞かずに独自のルールを設けはじめていたのです。

解 説
 その日の夕方、リーダーの山田さんは佐藤さんと1対1で話をすることにしました。
「佐藤君、最近チームのためにいろいろ動いてくれてるよね。本当に助かってる。少し話をしたいんだ。今の進め方についてどう考えてる?」 
 佐藤さんは少し戸惑いながらも、自分の意見を語り始めました。
「このやり方が一番効率的だと思うんです。他のメンバーが慣れていないのはわかるんですが、この方法ならプロジェクトを成功させられる自信があります」
 山田さんは佐藤さんの考えがチームを思っての行動であることを理解し、その熱意に共感しました。ただ、佐藤さんが他のメンバーの意見を十分に考慮していないことも問題だと感じていました。
 山田さんは佐藤さんにこう伝えました。
「佐藤君の考えはすごく理にかなってると思う。ただ、他のメンバーもそれぞれに役割があって、一緒に進めていくことがチーム全体の成果につながるんだ。みんなでどう進めるのか、一緒に考えてみないか?」
 佐藤さんはしばらく考えた後、「確かに、みんなが納得しないとスムーズにいきませんよね」と納得した様子をみせました。
 そこで山田さんは、佐藤さんの進め方を一部取り入れながら、全員が共有できるルールを作ることを提案しました。さらに、報告・連絡・相談の重要性をチーム全体に再確認し、メンバー全員が同じ方向を向いて動ける仕組みを整えました。


状況3:派閥を作り、他のメンバーとの一体感が損なわれる。

(山田さんの場合)

状 況
 
新しいプロジェクトが始まり、チームはリーダーの中村さんを中心に順調に進んでいました。兄弟属性部下の山田さんは、仲間意識が強く、チームの中でも自然と中心的な存在になっていました。
 山田さんが作り上げる明るい雰囲気は、プロジェクト初期の一体感を生み出し、メンバー全員が目標に向かって一丸となる力を発揮していました。しかし、プロジェクトが進むにつれて意見の分岐点が現れました。中村さんが提案した新しい方向性に対し、山田さんが「それは違うと思います」と反発したのです。
 山田さんは自分の意見に賛同するメンバーを自然と巻き込み、「こうした方が良い」という独自の提案を強く主張しました。その結果、チーム内で派閥のような構図ができあがり、意見の対立がチーム全体の緊張感を高めていきました。

解 説
 
状況が悪化する中、リーダーの中村さんは山田さんと一対一で話をすることを決めました。
 「山田君、いつもチームを盛り上げてくれてありがとう。みんなのことをすごく大事に思ってくれているのが伝わってくるよ。ただ、最近ちょっと意見がぶつかることが増えた気がするんだ。一度、お互いの考えを整理してみないか?」
 山田さんは最初、少し構えていましたが、中村さんの穏やかな姿勢に心を開き始めました。
 「正直に言うと、中村さんの方向性も分かります。でも、僕は仲間が混乱する姿を見たくないんです。今のやり方ならみんなが安心して進めると思っています」
 中村さんはその言葉から、山田さんの行動の背景に「仲間を守りたい」という強い思いがあることを理解しました。中村さんは山田さんの意見を尊重しつつ、こう提案しました。
 「山田君の考え方は素晴らしいし、仲間を思う気持ちは僕も同じだ。だからこそ一度みんなで話し合って、どう進めるか全員で決めよう。みんなが納得する形で進めば、もっと強いチームになれると思うんだ。」 山田さんはその提案に納得し、派閥を超えて全員で意見を共有する場を設けることに協力しました。その場で、中村さんは山田さんの意見を一部取り入れながら、チーム全体が目指す方向性を明確にしました。結果として、全員が同じゴールを共有し、チームの一体感を取り戻すことができました。


まとめ

 兄弟属性部下は、チームを引っ張る意欲と積極性があり、リーダーにとって貴重な存在です。難しい課題にも挑戦し、みんなをまとめようとする彼らは、適切なサポートと理解があれば、リーダーの頼れる右腕として活躍します。
 彼らの行動や意見に耳を傾け、チーム全員が納得できるルールを明確にしましょう。ルールは縛るためのものではなく、自由に動くための基盤です。納得できるルールが整えば、兄弟属性部下は自信を持って力を発揮し、チームに貢献していきます。
 あなたのリーダーシップが彼らの潜在能力を引き出し、チームに新しい風をもたらします。兄弟属性部下の強みを活かして、目標達成への大きな力に変えていきましょう!

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