#10 小さな一歩。
夏の青森。とことこと走る汽車。
海の香りがする西津軽、哀愁感じる青森を通って、今日の宿は弘前のようだ。
目の前のレールだけを見てまっすぐ走る。
雲一つない快晴。照りつける日射し。
こうべが重くなってきた稲が時より吹く風に揺れる。
太陽はどこでも一緒。ずっと地球を照らし、光とエネルギーを与える。
写真を撮るときは条件を左右する存在だけど、被写体にするととても神々しい。
太陽はエジプトでは「太陽神ラー」であり、日本では「天照大御神」とされる。
どちらも目から生まれている神様だ。
なんと温かく見守ってくださっているのだろう。
自分はどこに向かって走るのか。
レールがあるわけでもなんでもない。信号に従い、運転する人もいない。
見守ってくださる神様が居て、この稲たちのように存在しているものがある。自由に走れるし、制御することができるのは自分。
赤信号を多く灯すのも自分だし、青信号を多く出すのも自分。
周りを見渡すと、自分の小ささを再認識できる。
どんな動きでも最初は小さい。でもそれが積み重なると大きくなる。
こうなったら、どうせこんな小さな存在なのだから、ちょっと動いたって屁でもないよね。
40年以上走ってきた汽車は、その小さな存在、小さな変化を見届けてきたのだろう。
雨の日も雪の日も、こんな澄んだ晴れの日も。
積み重なった結果は、見られなかったかもしれないけど、いろんな小さな一歩を見届けているに違いない。
「私はどう映っていますか?どんなことをするか楽しみにしてくれますか?」
お日様にエネルギーをたくさんもらい、小さな存在の小さな背中を押された気がした。その温かさとちょっと吹く風の少し冷たい感覚。
もう少しだけ空を見上げながら感じていよう。スタートはもうすぐそこだ。
『見守る太陽、走る汽車』 Photo by Taromaru
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