#18 シンボリック
1992年生まれ。2階建てが目を引くバブリーな電車。
きっと設計は1991年より前。バブル後半に設計されて登場したら弾けてしまったそんな世代。
どこかこれからの時代を背伸びしていて、次世代感を出していて嫌いじゃない。
湘南から東京への長距離通勤を支えてきた。
登場から29年、役目を終えて青森へ。
老朽化と言われるが、牽く機関車は42年。
仕事があるっていいことだ。本人はどう思っているかはわからないけど、長く働けることはいいことだ。(そうなのか?)
そんな東京で背伸びした生活を送ってきた、ちょっと“いふりこいだ”やつ。セカンドライフはそこには無いが、太平洋とビル群ばかり見てきたんだから、少しは自然に触れなさいよ。
物質的な豊かさを手に入れて、情緒的な何かを失った東京から、その何かがある地方に来た都会っ子の写真を撮りたかった。
撮っているとやっぱり面白い。田んぼ、木々、山々の中での存在感。
都会を気取って着飾ってきたような。
きっと気づいているだろう。
日差し、空気、景色、何かが違うはず。
今まとっているそのデザイン、ちょっと変えたくなったでしょ?
東京と地方。今までは地方が生産、東京が搾取のような構図だった。
でも今の時勢が共存へと導いている気がしている。
木綿のハンカチーフのように、地方から東京へ行って染まらないで帰ってと願う気持ち。
これからは繋がって帰ってなのかもしれない。
でも地方も背伸びを始めた気がする。
近代的な駅、コンクリ。ああ帰る場所はどこにも無くなってしまうのか。
わずかに残る“良かった頃“をどこか求めてしまう。
あの通路はなんだ。あのクレーンはなんだ。気づけばマンションだらけだな。
駅のホームの「連絡船」だけが生き証人になっている。
過去は過去。未来を見据えて今を生きるというけれど、果たして何を目指しているのだろうか。
もしかしたら、東京で背伸びしていたはずが、相対性理論のいたずらで背伸びしている青森に着いたのか。今という時間に、この背伸びした車両が今の青森にやってきただけなのか。
背伸びする青森と、背伸びしてきた都会っ子。
等身大ってなんだろう。答えを探しにまた旅をするのだろう。
初夏の東北でのディスカバー。
『1992、東京生まれ。2021、青森にて。』Photo by Taromaru
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