【創作SS】安芸の宮島 #シロクマ文芸部
「紅葉鳥っても書くのよ」
10年前、安芸の宮島で鹿を見た時に母が教えてくれた。宮島に鹿がいることにも驚いたが、母にそんな知識があることにも驚いた。
「姉さん、知ってた」
姉は首を横に振った。母の得意気な顔に、
(来て良かった)
と素直に感じた。
宮島に来たのは、姉の娘が出場する合唱コンクールのついでだったけど、美しい紅葉、神社仏閣の建築物、可愛いい鹿、結婚式をしている新郎新婦、見るもの全てが素晴らしかった。
牡蠣も美味しかった。
母は旅行が好きじゃなかったけど、「孫がステージに立つ合唱」は大好きだった。姪が高校入学から大学卒業まで続けた合唱の応援と称して、僕たちは小旅行を重ねた。
紅葉鳥という名を知った秋から、10年が過ぎた。
姪は大学を卒業し、社会人として働いている。
僕はKindle作家と称してモノを書いている。
姉さんは老けてきている。
母は天にいる。
沢山の思い出を作ってくれた姪に感謝してる。
10年前、紅葉鳥は哀しい声で鳴いていた。
今も安芸の宮島で鳴いているのだろうか。
(本文ここまで)
#シロクマ文芸部
シロクマ文芸部に参加です。しんみりした話ですいません。
#何を書いても最後は宣伝
もっと楽しい話が読みたい方のために、ご紹介したいのが、こちら「ショートショートパラダイス」です。
ポップな表紙に騙されてはなりません、結構しっとりした話が多いようです。
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