【創作】今朝の月 #シロクマ文芸部
こちらの企画に参加です。
今朝の月は西の空に薄白い下弦の姿を見せていた。
毎朝、変わらないような朝の散歩だけれど月は姿を変えて、少し僕を楽しませてくれる。
「おや、猫ちゃんですか。珍しいですね」
犬の散歩をしていた通りがかりのおじさんに声をかけられる。猫のナッツは犬を警戒して身構えていた。
「おはようございます、ウチの子、散歩が好きなんです。歩かないですけど」
名も知らないおじさんに愛想笑いを返す。ナッツはまだ犬を警戒している。
もう一度、月を見上げた。こうして穏やかな気持ちで月を見上げ、日々を暮らせることに感謝の気持ちが湧いてくる。
無理やり早起きをさせられたり、顔を引っ掻かれたり、ご飯代やチュール代に汲々したり、泊付きの旅行に行くことができなかったり、色々制限はあるけれど、猫のいるしあわせというものは、格別なものがあるとも思う。
ナッツは近くにいる鳥に興味を移していた。1羽だけ水たまりで遊んでいる。獲物を狙うように姿勢を低くしているけれど、幸いにして鳥を掴まえようとしたことはないので、安心して見ていられる。けど、鳥が飛び立つか、ナッツが興味を失くすまでの時間は散歩を終えることができないので、待っている時間が無駄なようで少し悩ましい。
自宅の2階に目を向けると、もう1匹の猫、チオが恨めしそうに窓からこっちを見ている。外に興味があるくせにハーネスを怖がるので、散歩はしようとしないチオ。いつか2匹が外でじゃれ合う姿を見たいきもするけれど、収集がつかなくなるのが怖いので、君は臆病なままなのが良いのかもしれないな。
その代わりと言ったら何だけど、散歩を終えたら君の好きな本を見せてあげるよ。今日は予定のない土曜日、ゆっくりと君たちと過ごすことができる。
月は沈み、陽が昇ったみたいだね。少し気温が上がり汗ばんできた。
「ナッツ君、そろそろ帰るよ」
ナッツは嫌々をするように体を捩ることを繰り返した。その姿にちょっとあざとさを感じるけれど、そろそろ帰ろう僕たちの家に。
そして明日の朝が来たら、また散歩に出て月を見上げよう。
毎日のように、嫌なことも辛いことも沢山あるけれど、穏やかな気持ちで月を見上げられる、猫のいるしあわせというものは、格別なものなんだと思う。
(おしまい)
#何を書いても最後は宣伝
何の脈絡もありませんが、小鳥繋がりで「笑えない藁の案山子」を貼っておきます。
今回のシロクマ文芸部は「何も浮かばないなぁ」と嘆いていたところを「三毛猫かずらさん」の「みんフォト用イラスト」を拝見したことから、その画像を使いたく、創作に繋がりました。
三毛猫かずらさん、管理人さん、ありがとうございました😊
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