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日本海夕陽ライン
「いつもと違うルートで帰らないか」
彼女に提案した。彼女が師事する先生の稽古のため、郡山市から酒田市に送迎するようになり1年が経とうとしていたが、これまでは早朝に出発し、往復とも最短となる東北自動車道 仙台~蔵王で日帰りルートだった。
「新潟経由だと海が綺麗に見えるらしいよ」
「美味しいもの、食べられると嬉しいな」
笑顔で車に乗り込む姿に、ルートを固めた。
新潟県で休憩がてら砂浜に降りた。
真っ赤な夕陽は、ダイヤモンドのように輝き周囲を染めていたが、11月の風は冷たく、自然と袖摺れになり水際まで歩く。
「今日はこのまま帰しますが、来年からは一緒に暮らしたいです。お願いします」
コートのポケットから、リングが入る小箱を取り出し、彼女に捧げた。
「来年のいつまで待つの」
「7月、君の誕生日には、家族として夕陽を見たい」
「家族ならお泊りでもいいね」
11年経った今年は、4人袖摺れで夕陽を観ている。
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