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ある絵描きのこと

 絵心なんてものは無いまま生きてきた。絵だけじゃない、美術芸術とは無縁だったし、今も特段の興味は無い。漫画を読むのは好きだけど、オタクと呼ばれる方々のように道を極めようとする意欲は無い。

 なのに、何故、明後日に東京に行こうとしているのか?コミティアに参加している「絵描き」の新作漫画を買うためだけに、新幹線のチケットを予約してしまった。
「せっかく東京に行くのであれば、彼処にも行きたい」
 と以前なら考えていたが、今は目的を達成したら他のことに囚われずに真っ直ぐ帰宅したいと考えてしまう。純粋に楽しみたいというか目的に殉じたいというか。
 安くない交通費を要するけれど
「お金だけが問題なら行くべきだ。描き手に会える機会はお金には代えられない。これが最後の機会になるかもしれない。行かずに後悔するよりも、行って後悔した方がいい」
と考えてしまうのです。

 この描き手を知ったのは、pixivに投稿していたエッセイ漫画。婚活で失敗を重ねながらも、誰にも悪意み向けず、直向きに幸せを探す主人公。優しい絵柄と飾らない人柄に好感を抱いた。
 けど、その時は「そこそこ面白い」という印象で終わった。

 再会は「ジャンプ+」、予選を勝ち上がりWEB連載を勝ち取ったことに、心からのエールを送った。ドワーフの少女とエルフの青年が織りなす、種族を超えた優しい物語に胸をときめかせた。
 残念ながら本格連載には届かなかった。

 名前で検索し、作者が漫画家だけではなく、イラストレーターてして児童小説のイラストを描いていることを知り本を購入した。Xをフォロワーし、コミティアに出店することを知り、お土産片手にブースを訪問した。その日までは自分のことを
「ある程度は分別があるおっさん」
と認識してたけど、そうでは無かったことを知った。先生を前に夢を語ってしまった。
「小松先生にイラストを描いていただけるような小説を書きたいです」
  児童書の読者を40年以上前に卒業し、そのジャンルの小説は一本も書いていないかったのに、お会いできた喜びで、想いが溢れてしまった。

 それから3ケ月が過ぎた。

 また、コミティアが開催され、今回も参加する予定でいる。金も時間も体力も余裕はないけれど、それでも、好きな世界に浸りたいと考えてしまう。

 いつかクリエイターとして共に作品を創りたい。沼に肩まで浸かり、時に溺れながら夢を見続けたいんだ。

#ハマった沼を語らせて


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福島太郎@kindle作家
サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。  皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。

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