記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「ラストマイル」感想 “社会が悪い”の先には何があるのか【ネタバレあり】

映画「ラストマイル」を見てきました。周りでもかなり評判がよかったことや、僕が日頃から永遠に愚痴っている「社会」の業を煮詰めたような内容だと聞いて興味を持ったため。以下、ネタバレを含みます。

シェアード・ユニバース・ムービーとかいう日本ドラマ版MCUみたいな設定だそうで、「アンナチュラル」「MIU404」の世界観を共有した物語。って聞いてたんで「ドラマ見てないから見れんかー」と思ってたら、両ドラマの人たちはいっちょ噛みで出てくるくらいで主演もストーリーもほぼオリジナルの映画だった。初見でも「なんかキャラ濃くて豪華なモブがいるな」くらいで普通に見れます。

結構いろんな要素を詰め合わせた映画なのでどこを面白がるかは人によると思うのだけど、僕はシンプルに「日本の物流問題とAmazon倉庫の現実」という社会勉強映画として楽しみました。

舞台となるのは何億という商品がそろったAmazon(作中では「Daily Fast」という名前)の倉庫。何百人という派遣の人が働いているのに社員はたった9人くらいしかいない。そこから配送された荷物は集配所を経由して、「ラストワンマイル」を運ぶ下請けドライバーが各地のお客に届けることになる。システムをちょっとでも止めるととんでもない損害が出るので文字通り「死んでも止めるな」という思想で人が奴隷のように働かされている。

アメリカ本社→日本支社→倉庫→運送会社→下請けドライバーという順番で搾取が生まれていき、「ラストワンマイル」を運ぶ末端の下請けドライバーは荷物1個運んで150円しかもらえない。やばい。っていうとなんか上から順にいい思いしてるように見えるけど、実はどのレイヤーでも個人個人はめちゃくちゃ苦しんでいてもう辞めたい死にたいみたいになっているやつがいる。し、資本主義の闇だ~!

例えば。あなたにめちゃくちゃ仕事を押し付けてくる嫌な上司がいるとする。自分視点ではそいつが世界で一番憎らしいやつに見えるわけですが、本当はその上司も社長に無茶な目標を設定されてそうせざるをえなかったりする。その社長も株主とかに言われてやむをえずやってたり、株主は社会情勢を受けてそういう要求をせざるをえなかったり……って原因をたどっていくと、結局悪いのはあなたの上司じゃなくて社会だよね、っていうのが僕がシグネチャーフレーズにしている「社会が悪い」という言葉の真意で、まさにそういうことを描いた映画でした。

作中で「Custmer centric(全てはお客様のために)」という“マジックワード”が出てくる。ええように言うてるけどやってることは下請けの運送会社や労働者を安くこきつかってるだけやで、という話。配送業者が死にかけてても無料のお急ぎ便があればみんな使っちゃうみたいな話で、「マジ社会ってそうだよな」と頷きながら見てた。人が悪いんじゃなくて社会が悪い。まあその社会を作ってるのは1人1人の人間なのだけど。

そういうことがきっかけになって本筋の事件が起こるんだけど、個人的にはむしろそこはあんまピンとこなかった。ミステリー部分より社会の問題とか構造のほうに興味が行っちゃったなーという感じがありました。

(以下、映画に対しての感想としてはちょっと筋違いかもしれないので鍵にします。「結局社会悪いままじゃん!」みたいな愚痴)

ここから先は

1,034字
この記事のみ ¥ 100

この記事が参加している募集

こちらはただ投げ銭をするだけの「サポート」という機能です。サポートいただけた分だけnoteの活動に割く時間を増やせるので大変助かります。(メンバーシップに入ると有料記事が読めるなど多少見返りがあります!)