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漫画『Thisコミュニケーション』という傑作と「愛の本質」について
最近ちょこちょこ読んでた漫画『Thisコミュニケーション』を読み終わりましたが、とんでもない傑作でした。
謎の生物「イペリット」に人類のほとんどが滅ぼされてしまった世界。対イペリット用に改造された6人の不死身の少女「ハントレス」と、「自分が生きて飯を食うことが全て」という超合理主義者の軍人・デルウハの物語。
ハントレスは攻撃能力は高いけど肉体は普通の女の子と変わらないのですぐ死んじゃう。で、死ぬと「1時間前」の状態になって再生する。そして記憶も1時間前の状態に戻る。デルウハはそれを最も効率的に使う。つまり「面倒なことになったらぶっ殺してリセットする」という人間性ゼロの手法で、少女たちの感情やチームワークをコントロールしていく。
この漫画のすごいところは主人公のデルウハを徹底して情や愛では動かない「悪魔」として描き切っているところです。デルウハは少女たちを「自分が生き残るために必要な駒」としてしか見ない。どんなに嫌なやつでも長く一緒に過ごしていると多少は情が移ったりもするし、実際ハントレスたちのほうはデルウハのことを家族や恋人のように感じたりもするのだけど、デルウハの行動原理は一貫して「1日でも長く生き、1食でも多く食う」ことのまま。そのロジックに当てはまる限りは命を懸けて戦うし誰かを守りもするけれど、状況が変われば1秒でその仲間を殺すほうに切り替えられる。その判断力・決断力に惚れる。絶対友達になりたくない。
僕は現実においては友情や愛情ほど尊いものはないと思っている者ですが、漫画などにおける困ったときに「これが愛の力だあああああああ」みたいな謎の感情パワーで万物を解決する表現はもうええでしょうと思っているクチです。現実ってそんなに甘くないですよ、社会に出たらお気持ちだけじゃ通用しませんよ、と思っている。なので、どこまでも合理的判断を貫き通すデルウハの生き様が優秀で嫌な大人の究極系って感じで非常に魅力的でした。絶対一緒に仕事したくない。
最終12巻が特に素晴らしかった。このテーマをこれだけきれいに描き切れることに驚いたし、最初からこの結末に向けて描いてきたというのもすごい。さまざまな伏線も鮮やかだった。終わり方が好きな漫画史上ベスト5に入るかもしれません。
頭脳明晰で非情で痛快ってキャラだと『アイシールド21』のヒル魔とかも近いけど、もっと徹底的に最後まで合理主義。だけどストーリーとして成立している。いやーすごい漫画でした。
以下、ネタバレありでの感想をちょっとだけ。ほぼラストについて思ったことであり、「愛」についてのあんまり人に言いにくい話です。
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