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次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その21「9.13.非接触確保のためのタッチレス端末」

9.13.         非接触確保のためのタッチレス端末


9.13.1.     エアータッチパネル(博報堂プロダクツ)

2020年7月8日に、株式会社博報堂プロダクツは、非接触サイネージ「触れずに触れられる、エアータッチパネル」のソリューションの提供を開始した。同社では、空中映像技術を活用した非接触タッチパネルを資材調達からデザイン・設計製作までワンストップにて完結した、非接触デジタルサイネージを開発。

図 166 エアータッチパネル(博報堂プロダクツ)

9.13.1.     AirSwich(パリティ・イノベーションズ)

 2020年7月8日に、国立研究開発法人 情報通信研究機構発のベンチャー企業である株式会社パリティ・イノベーションズは、パリティミラーを応用した非接触空中スイッチモジュール「AirSwich」を開発、2020年中に実用レベルまでの開発を行い、その後商品化を目指すことを発表した。なお、博報堂プロダクツが2020年7月8日に発表した非接触サイネージ「触れずに触れられる、エアータッチパネル」にも同社のパリティミラー技術が使われている。

図 167 AirSwich(パリティ・イノベーションズ)

9.13.3.     非接触ディスプレイ(マクセル)

マクセルは、空中に表示されたスイッチやアイコンをタブレット端末のように操作できる非接触HMI「Advanced Floating Image Display(AFID)」を開発。2021年を目途に市場投入を目指す。マクセルが新たに開発した映像光制御技術「LLIS技術」を採用した映像装置と、日本カーバイド工業の再帰光学部材を使用して開発した非接触端末。LLIS技術は、LCDに対応し、映像光を任意の方向に導いて空中映像を実現する再帰反射性に適した映像光を生成できる。


図 168 非接触ディスプレイ(マクセル)

9.13.4.     ノータッチフレーム(新光商事)

モニターに取り付け、USBでPCに挿すだけで、非接触でタッチ操作が簡単に実現可能。(モニター面から約35mm上の空中をタッチ・フリック操作)


図 169 ノータッチフレーム(新光商事)

9.13.5.     タッチレス自動券売機(NECマグナス・新光商事)

2020年7月に、NECマグナスコミュニケーションズ株式会社と新光商事株式会社は、衛生面に配慮した決済手段の実現を目指し、タッチレス券売機の実証実験を2020年7月より開始。

NECマグナスコミュニケーションズのタッチパネル式券売機である「MP-T300シリーズ」に新光商事が開発した非接触パネル「ノータッチフレーム」を取り付けることで、それぞれの特性を活かした非対面・非接触決済の実現を目指す。


図 170 タッチレス自動券売機(NECマグナス・新光商事)

9.13.6.     タッチレスブラインド(クラウドポイント)

2020年7月に、株式会社クラウドポイントは、「タッチレスブラインド」の販売を開始。非接触センサーや音声操作を可能にするIoTデバイスとの連動により、瞬時に視界を遮ることができ、衛生的にプライバシーを守ることが可能。瞬間調光フィルムに電圧をかけることにより、白濁状態から透明状態に変化する仕組み。

図 171 タッチレスブラインド(クラウドポイント)

9.14. 音声認識技術

Amazonといえば、日本ではネットショッピング企業としか見られていないが、米国では今やAmazonはグーグルと勝負しているIT企業とのひとつだ。クラウドサービスに加えて、「Amazonエコー」というデジタルアシスタント「Alexa(アレクサ)」を利用できる家電デバイスを提供し、急速にIT企業としての地位を獲得している。

米国では昨年のクリスマス商戦で、1ヶ月待ちが出るほど売れている「Amazonエコー」。すでに1500万台以上が売れたとのこと。アレクサと叫べば、1秒以内にあらゆる答えが自然な会話(英語)で返ってくる。

これがiPhoneなどのSiri、OKグーグルなどの音声認識と同じだと考えると大間違い。

話しかけるだけで好きな音楽が聴けるとか、単純なものではない。ウーバーソフトと絡めればタクシーも呼べるし、車と連動させれば、リビングにいて車に暖房を入れることもできる。事実、ベンツはAmazonエコーに対応した車種を販売しており、話しかけるだけでエンジンを始動できる。ドミノピザのLサイズを届けてと言えば、決まった時間に届けてくれる。スターバックスコーヒーもコーヒーお願いと言っておけば、通勤途中のスタバで受取り可能なシステムが、すでに実現している。これはアレクサのskillというコンテンツ作成ソフトに連動する仕組みで、Amazonはこのソフトをオープン化することで、音声認識機能の「デファクトスタンダード」を狙うつもりだ。

アレクサと連動するアプリケーションは、当初10程度しかなかったのが、今日では7千を超えるアプリケーションとリンクし、家の電化製品、クルマなどのあらゆるセンサーとIoT(モノのインターネット)でつながり、コントロールできる。

ホームエレクトロニクスの分野でも、エコーが使われ出している。電気のオンオフ、空調のオンオフ、温度調整、ガレージの開け閉めなど、家電デバイスとインターネットを繋げるIoT技術とエコーが繋がることでコントロールしている。

今、コンピューターへの入力が「キーボード、マウス」から、「スマホ、タブレット」へと移行し、早晩、これが「ボイスコントロール」に置き替わると言われる。会話するコンピューターを活用することで、高齢者でも、過疎地でも、だれでも自然な会話の中でコンピューターの能力を使うことができる世界がすぐそこに来ている。

この音声認識システム、建設業においても十分役に立つはず。建設材料が不足すれば、エコーで注文すればすぐに届けてくれるような仕組みとか、作業用エレベーターを呼ぶ役割を持たせるとか、工事作業報告を音声入力でその場で送ることができるとか、相当な効率化につながるはずだ。

建設工事のAI化、IoT化が更に進むことで、人で不足を解消できる可能性は大きい。次は、建設業における「AI活用建設専門組織」の組成が必要か、エコーにこっそり聞いてみようっと。

9.15. Prop techから見たBIMの必要性

不動産分野におけるデジタルデータの重要性はますます高まる。特に、IT、AIの進化による不動産利活用方法が大きく変化するなかで、デジタルデータを活用した「スマートビル」はとても重要な要素となっていることがわかった。

さらに、省エネルギー化、ゼロカーボン化、ZEB化のためには、「デジタルデータ」による管理、運営が必須であり、それらの解決のためには、ひとつの建物だけでなく、都市全体がスマート化することが必要である。

そのためにも、建物のデジタルデータは必要不可欠だ。

ソサエティ5.0へと社会が移行する中で、設計や工事を行うための建物デジタルデータから、都市問題を解決に導くための建物デジタルデータのありようを考える必要がある。

特に建物のデジタル化は都市問題を解決するに当たり、必要不可欠なデジタルデータだ。現在検討されているBIMモデルが、本来の社会が求めるデジタルデータとして役立つものとし、だれもがアクセスしやすいデジタルデータとなることに期待したい。

ぜひとも、建設産業が生み出すBIMデータが、社会が求める建物デジタルデータとして、施設、都市の利便性に資するものとなり、社会の発展につながっていくことに期待したいものだ。


9.16. ビルのIT対策

いま新型コロナウイルス対策が世界の最優先課題となっている。この状況を受けて、いざという時のリスクへの備えが重要であると、多くの人が説いている。

建物はどうだろう。

これまでビルシステムは、空調、エレベーター、防災など、それぞれ独立して制御してきた。しかし、最近では、多くの機器がIP(インターネット・プロトコル)通信を用いて、一体的にコントロール可能な「ビル・オートメーション・システム」として構築されている。

全世界のインターネット接続IoT(モノのインターネット)デバイスは、2015年の38億個から2025年には215億個にまで増加すると言われており、ビルにおけるデバイス接続も相当な勢いで増加している。ビル全体が通信でつながっているのが今日の進んだ「スマートビル」だ。

それゆえ、通信回線を利用して容易にシステムへアクセスし、ハッキングされたり、ウイルスに侵されたりするなど、サイバーセキュリティに対するリスクが急速に高まっている。

ビル管理分野では事実、機器設置後、OSやパッチの更新が一切行われておらず適切なITメンテナンスができていないことも多く、多くのIT専門家が、他の産業と比較して、とりわけビル管理システムがリスクにさらされている実態を指摘している。

経済産業省の「ビルシステムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン(2019年)」でも、次のようなビルの脆弱性を示す事例が紹介されている。

2012年、米MITの学内ビルの照明が2012年ハッキングされ、窓と照明で巨大なテトリスゲームを実現。

2016年11月フィンランドのビルがDDoS(インターネットに接続した多数のホストから特定のネットワークを利用できないようにすること)攻撃を受け、外気温マイナス2度の環境下、暖房が数時間にわたって利用できない状況が継続。

2017年オーストリアの4つ星ホテルで、客室のカードキー発行システムがランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)に感染し、客室扉が開場できなくなり、宿泊客の閉じ込めが発生

2018年には、日本でも千葉県や埼玉県などの自治体保有のインターネットカメラが不正にアクセスされ、画面を書き換えられるなどの被害が発生している。

ビルシステムの寿命がせいぜい10から20年であるのに対し、ビルの寿命は50年以上。常に、最新のIT活用を考えたリスク対応が求められ

る。

竹中工務店では自社所有のビルについてテストを行い、閉域網(制御系)の脆弱性を改善したり、森ビルや三井不動産ではIT会社と組み、積極的に、ハッキング対策に取り組んだりしている。

ビルが外部からのウイルス攻撃される前に、対応できる体制を構築することが求められる。自宅待機でビルの利用が減るいまの時期だからこそ、再度、ビルのウイルス対策、リスクを減らす方策を考えることが求められていると思う。建物もウイルス被害に遭わないために。


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