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一級建築士試験の壁

 私が令和2年に初めて受験して感じた、一級建築士試験の壁。これを乗り越えるのは想像以上に長く苦しいものでした。

試験は3年目の角番の年に運良く合格することができましたが、合格発表があるまでは、合格を一度も確信することはできませんでした。

3年間どのような考えや気持ちで試験に臨んだのかを思い出しながら書いていきたいと思います。

令和2年(受験1年目)

私が受験した頃は今と違い、建築学科を卒業していないと、建築士の受験資格を得ることが難しく、私の場合は建築設備士の資格取得後4年の実務経験が必要でした。

受験する年の1月頃から受験の情報を調べて、参考書等を購入し、約6ヶ月の独学で学科試験に臨みました。

あの頃はまだ資格の勉強に自信があったので、学科試験もなんとかなると思ってました。
 
結果は学科試験合格
 計画       … 12/20点
 環境・設備 … 16/20点
 法規       … 25/30点
 構造       … 26/30点
 施工       … 19/25点
 合計       … 98/125点

合格の余韻に浸るのもそこそこに、N学院の無料公開セミナーを受講、そこで初めて製図試験の概要を知りました。

その年の課題は『福祉施設』

家に帰ってから早速、二級建築士の時に使用した製図板を引っ張り出してきて、令和元年の製図課題『美術館』のトレース。

が…製図だけで6時間くらいかかってしまい、到底目標の3時間では収まらないと焦ったのを覚えてます。

職場でも製図は資格学校に通わないと受からないと言われていたのもあり、思い切って妻に相談して、N学院の短期に通うことにしました。

Nの講師は癖が強かった…

自分の成功体験を人に押し付ける人で、自分が1/200でエスキスをしていたのを生徒も行うよう半ば強制されました…

少し納得いかない気持ちもありましたが、合格のために努力する方が大事やと考えて、さっさと気持ちを切り替えました。

そこから、毎週土曜の講座と隔週くらいにある水曜の補講に通って、試験1ヶ月前くらいにはなんとか目標の3時間で全て描き終えることができるようになってたと思います。

そして、試験当日

試験会場に入ってから、今まで感じたことのない緊張感がずっとついて回ってました。

エスキスは予定通り進んだんですが、記述に時間がかかり、作図が時間ぎりぎりとなったので、見直しがほとんどできませんでした。
そのまま初めての試験が終了。

試験後の見直しで2階の重複距離とテラスの面積で失敗したと思ってたら、試験後の添削会では以外と大丈夫と言われてほっとしました。
しかし、合格発表では番号は見当たらず…

結果はランクⅣ

おそらく重複距離の法令違反だと思います。
その時はくやしくてくやしくて、次の製図のことを考える余裕もなく、数日は何があかんかったのかを悶々と考えてました。

そこで、年内は自分の練習用紙の見直しや、
資料整理をして自分の努力を振り返りました。
自分で自分を認めないとしんどかった…


令和3年(受験2年目)

年明けからはスケジュールや勉強方法をどうするか気持ちを切り替えて取り組みました。

まずは次の年の製図講座をどうするか。
色々調べて、Tか全日本の2択で迷い、課題数が多かった全日本の短期に通うことにしました。

とりあえず講座の始まる7月末までは時間があるので、過去問を解いて、標準解答例と比較しながら試験の傾向を分析。

また、ランクⅣの理由がほぼ法令違反なのは間違いないので、法令を守れる製図の手順の検討。
各ポイントで法令をチェックしながら、作図する手順を考えました。

次に前の年が基準階パターンだったので、低層階パターンの攻略に着手。
これがなかなかエスキスがハマらなくて苦労しました…

しかし、課題は基準階パターンの『共同住宅』

課題発表後、全日本の講座がスタート。前年と違い、自分のペースでエスキスと作図をして、その採点をしてもらえたのはすごく良かったです。

ただ、その年の全日本の課題は共同住宅に特化してて、一階に他の用途を用いる練習課題はなく、記述も同じ課題ばかりの印象でした。

そして、2回目の試験当日

問題を見た瞬間固まりました。一階にカフェと学習塾の複合用途?面積指定なし?
頭の中を色々なものが駆け巡ってから、やっと落ち着け!と頭の中で言った自分がいました。

そこから、エスキスをなんとかまとめて、記述でも練習したことのない遮音性能等に苦戦しながら、作図までたどりつきました。

作図は単純なゾーニングだったので、予定より早く進めることができ、見直しも20分程度確保できました。

試験後の見直しで気になったのは、バルコニーの奥行きを3mとってしまったことと、記述の遮音性能等の建築要素の記述の内容が不十分だったこと。

2年目の結果はランクII

法令違反は対策できたものの、建築の詳しい知識不足による減点で、ランクⅠに届かなかったと感じました。

この時は以外と落ち込まず、次の角番は開き直って、出来ることを全部やろうと思って年を越したのを覚えています。


令和4年(受験3年目)

3年目は1月4日に全日本の長期(前半通信、後半対面)に申し込みをしました。努力の方向性は間違ってない感覚があったので、全く迷いはなかったです。

全日本の講座のアンケート

前年の講座に対するアンケートもあったので、本試験に対する講座の分析と、自分に足りない部分を補足してもらうために、真剣に書いて送りました。

アンケート回答(原文)

前半の通信では、今年こそ低層階パターンが出ると考えて、添削してもらう図面にわからないことを全て書き込んで、答えをもらうようにしていました。

また、記述の弱さを克服するために、過去の記述を遡って、イメージ図も含めて枠いっぱいにしっかり書き込みできるよう何度も練習しました。

課題はまさかの基準階パターン『事務所ビル』

課題を見た時に、今年しかない!
と思いました。その理由は
①基準階パターンは3年連続で慣れている
②省エネ審査をやってるのでビルの省エネ対策 
 や省エネ設備には詳しい自信があった

さらに、後半の講座では思いがけない人の繋がりがあり、仕事で付き合いのある民間審査機関の人と一緒になったので、積極的に情報交換をしました。

そこで建築資格研究所の情報をもらったので、登録して課題に取り組んだり、職場の後輩がN学院に通ってたので課題の交換をしたり、Sの模試をメル◯リで仕入れたり。

できることを全部やろうと思ってたので、とにかく色々な課題に取り組むことを意識してました。

そのおかげで試験で初見の問題が出た時にも慌てず課題を整理して、エスキスを進める力を養えたと思います。

そして、3回目の試験当日

試験問題を見た時に、練習通りやればなんとかなる!と思いました。

杭基礎と階数指定なしは予想外でしたが、杭基礎は直前に調べてたし、階数はエスキスを進めれば決まっていくものやと考えて迷わず進めました。

試験当日の時間配分はエスキス90分、エスキス見直し15分、記述75分、作図180分、全体見直し30分くらいだったと思います。

試験後の見直し
・貸事務室Bの執務スペース表記もれ
・敷地内通路の経路と幅の表記もれ
・屋外テラス席の通路と植栽の表記もれ
・断面図の道路斜線勾配表記もれ
・レストラン、コミュニティホール、屋上庭園、事務室の面積間違い(北側ワンスパン分の7×6コマを7×7コマで計算)
・レストラン内のトイレ、お客様用なし

試験後すぐは大きなミスはないと思ってましたが、面積間違いとトイレの認識間違い(従業員トイレのみ計画)が結構大きな減点やったらどうしようと不安になりました。

3年目の結果は念願のランクⅠ

試験結果は職場で昼休みに見たんですが、一度目は番号を見逃してて、少し焦りました。
ゆっくり反対から見たらすぐに見つけられて、その場で妻に連絡しました。

『ありがとう』

ここまでこれたのは家族のおかげだったので真っ先にこの言葉を伝えました。その後に職場のお世話になった人にも順番に合格とお礼を伝えました。

以上が私の一級建築士試験の3年間の全てです。


おわりに

一級建築士試験は学科と製図の2つの試験があって、それぞれが資格試験の中でもトップレベルの難しさだと思ってます。

特に製図試験は難しくて、同じ試験を3年間努力し続けた初めての試験だったので、他の試験では得難い経験をすることができました。
もう2度と試験は受けたくないですが。。

今後は私がずっと家族や友人に応援してもらってすごく心強かったので、私も一級建築士試験の合格に向かって努力してる受験生をこれからずっと応援していきたいと思っています。

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