アマプラが勧めるから「マジカルガール」観たら、良かった
*ネタバレあり
アマプラが「あなたこれ、好きでしょ?」てやたら勧めてくるので観てみた。
【マジカル・ガール】という題名で、魔法使いの服を着た少女と女性の顔が並んでいるので、この少女の空想から何かが起こるのかと思いきや、そうではない。
不思議な魔法は、誰も使わない。
魔法で夢を叶えるのではなく、人に言えない秘密の方法で、誰かの「願い」を叶えていく話だった。
登場人物はみんな近くに住んでいて、どこかで薄ら関わってはいるものの別々に生きている。いや、生きていた。
しかし、1人の「ムリな願い」を叶えようする強過ぎる思いが生まれたところから不幸の輪が回りだし、1人ずつの人生を巻き取りはじめる。
まず、余命幾ばくもない娘の願い「魔法少女の衣装(90万円)が欲しい」を叶えるために金を作ろうとする男、ルイス。
彼は金のために宝石店を襲おうとする。
ここで、もう1人の登場人物と出会う。
夫の愛(または夫との生活、もしくは自分の隣にパートナーがいるということ)を掴み続けていたいと「願っている」女、バルバラ。
このタイミングでバルバラと出会ってなければ、ルイスは普通に警察に捕まって終わっていたはず。
バルバラが裕福な暮らしをしてることに気づいたルイスは、バルバラの「願い」を壊すと脅すことで金を手に入れようとする。
バルバラは自分の体の痛みや精神的な苦痛より「願い」が大事なので、自分の体を傷つけられることで大金を用意する。
死ぬ寸前まで傷つけられたバルバラは、3人目の登場人物、ダミアンの家の前に行って倒れる。
ダミアンはかつてバルバラとの間に"何か"があり、彼いわく”バルバラの為に”捕まり、10年間服役して出てきたところだった。
ダミアンは、バルバラと出会わなければそのまま平穏に暮らしていただろう。
しかし、この出会いをきっかけにまた人生が狂う。
バルバラは、ルイスに罰を与えたいという「願い」をダミアンに伝える。
ダミアンは、自分の人生を捨ててそれを叶える。
なぜならダミアンの「願い」は、バルバラだから。
不幸な誰かが、不幸な誰かとすれ違う度、細い釣り針のようなものに引っかかり、引きずり込まれていく。
誰かが誰かの願いを叶える度に、不幸になっていく。
みんなが不幸の中にありながら"唯一の幸せ"を握りしめて、奪われまいとしている。
おそらく人は「この一点さえ輝いていれば、他の全てが地獄になってもいい」と思ったところでバランスを失ってしまうのだろう。
悪人は1人も出てこない。
ただ、全員が悲しい物語だった。
【追記】
この映画、最後に突然聞き覚えのある曲が流れ始める。
瞬間的に「美輪さんのアルバムに入ってる曲だ。シャンソンか?」と思ったのだが、よくよく記憶をたどったら「黒蜥蜴の唄」だった。
丸山明宏×三島由紀夫×江戸川乱歩の映画「黒蜥蜴」で流れたアレだ。
しかも、スペインの歌手の方かな?カタコトの日本語で歌ってくれている。
そういえば、黒蜥蜴の描かれた部屋が出てくる場面があったけども。あ、そう、そういう感じ?じゃあもうこの映画、好きだわ。