見出し画像

ヒスタミン中毒 ~お刺身は冷蔵保存~

先日、佐賀市でヒスタミン食中毒の事例が取り上げられました。

ヒスタミン中毒はサバやマグロといった魚類を摂取した際に膨疹や掻痒感を伴う疾患です。
救急外来では皮膚疾患を目にすることは比較的多いです。多くは刺咬傷(特にハチ)ですが、蕁麻疹を訴える人も多いです。
蕁麻疹を伴う原因としてヒスタミン中毒は時折目にします。
今回はヒスタミン中毒に関して、その予防方法も含めてまとめてみました。


ヒスタミン中毒の疫学

ヒスタミンによる食中毒は厚生労働省のデータでは年間数例~20例ほど報告されています。
実際にはアレルギーと間違われていたり、ヒスタミン中毒とわからなかったりする例があるため、報告数より多いと予想されます。

厚生労働省のデータより作成

食中毒の届け出によるデータでは、マグロ、カジキ、サバの順で多いとされます。赤身魚やその加工品が原因になります。

ヒスタミン中毒の原理

ヒスタミン中毒とはその名の通り、ヒスタミンが蓄積することで起こります。その原理は以下の通りです。
 ①食品中にヒスチジンというたんぱく質が存在する(赤身魚で多い)
 ②常温で保存するとヒスタミン産生菌(Morganella morganiiなど)が増殖する
 ③産生菌がヒスチジンをヒスタミンに変換する
上記の機序があるため、刺し身は冷蔵保存する必要があります。また冷蔵保存していても日数が経過するとヒスタミンが増えることが分かっています。早めに食べるのが肝要です。
加えて1度出来たヒスタミンは加熱しても減ることはありません。

ヒスタミン中毒の治療

ヒスタミン中毒の治療は、抗ヒスタミン薬で行います。
軽度であれば内服を処方します。全身に膨疹が及ぶ場合や瘙痒感が強い場合には、点滴での治療を考慮します。
鑑別としては中毒疹やアナフィラキシーが挙げられます。中毒疹では口腔内の粘膜疹や発熱や薬剤歴が診断の鍵になります。アナフィラキシーでは、呼吸器や循環、消化器の症状を伴います。
アナフィラキシーに関しては以前の記事を参考にしてください。

最後に

今回はヒスタミン中毒をまとめてみました。
アレルギーや蕁麻疹と間違えやすく、診断するには食事歴を聞く必要があります。
この時期、サバが旬なのでより気をつけていきたいです。

参考文献
・厚生労働省."ヒスタミンによる食中毒について".https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?