日常のドラマ/日常がドラマ
大阪から実家への帰りしな、電車内での一コマである。
とある駅から高校生と思しき男女二人組が乗ってきた。恋人同士のようにも見えるし、友達以上恋人未満の関係にも見える。
それまで窓の外の風景をぼーっと眺めていたが、以来その二人になんとなく注意が向いた。
男の子の方は電車に乗り込んですぐドアにもたれかかり、熱心にスマホを眺め始めた。そんな男の子の姿を女の子はじっと眺め、時折声を掛けているが、反応はあまり芳しくない。女の子の瞳にはどことなく寂しさのようなものが伺えた。
なぜ、男の子は女の子と面と向かって話をしないのだろう。なぜあれほどスマホに夢中なのだろう。女の子の方は君に夢中そうに見えるが…
途中駅で女の子が下りた。例のごとく声をかけていたが、男の子の反応は相変わらず薄かった。
停車していた電車が動き出した。
ホームでは女の子が男の子に向かって手を振っているが、目線はいまだにスマホに釘付けだ。列車は動く。女の子の顔に落胆の色が浮かぶ。依然として目線は…
女の子はもう見えなくなってしまった。
僕は思わず切なくなってしまった。
今頃彼女はどんな気持ちなんだろう。そもそも二人の関係性っていったいどんなものなんだろう。なぜ男の子はあんなにそっけないんだろう。なぜ女の子はそれでも、懸命に彼を見つめていたのだろう…
色々と考えだすと止まらなくなってしまった。最も二人からすればとんだお節介だろうが。
思えば日常にはこんな名もなきドラマがごまんと潜んでいる。
日常というのは平凡と同義ではない。
せわしない日々に埋没しがちなドラマに気が付けば、僕たちの日常はもっとカラフルになる。
そして僕たちは、そんなドラマの演者でもあるのだ。
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