【セブン&アイ・ホールディングス】第1回 世界一のコンビニが支える総合小売企業
今の日本で、なくなると1番不便になる会社、それはセブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)ではないでしょうか?
今回は、国内での1日の来店客数2400万人という、この日本最大級の小売企業である、セブン&アイを紹介します。
1.セブン&アイ・ホールディングスって何をしている会社?
コンビニ、スーパー、百貨店などを含む多業態の総合小売企業
セブン&アイは、食品スーパーのイトーヨーカドーから始まった会社です。現在は、コンビニエンスストアのセブンイレブン。総合スーパーのイトーヨーカドー、百貨店のそごう西武、その他ロフトなどの専門店ブランド、デニーズなどレストランやセブン銀行なども有する、日本を代表する多業態の総合小売企業です。
グループの柱は、コンビニエンスストア事業
最初に、全体像を把握するため、事業ごとの営業収益(売上)の割合をグラフで見てみましょう。(下の円グラフ左)
セブン&アイの事業別割合 営業収益(左)、営業利益(右)
(セブン&アイ 統合レポート2019より)
グラフを見ると分かる通り、営業収益(売上)の55%がコンビニエンスストア事業(濃い緑と薄い緑)です。次に大きいのがスーパーストア事業で27%ほどあります。コンビニが過半数を占めていますね。
さらに、営業利益(グラフ右)を見てみましょう。約80%がコンビニエンスストア事業で占められています。つまり、セブン&アイは、ほぼコンビニ事業一本柱で支えている会社なんです。
なお、次に大きいのはセブン銀行の金融事業が約12%となります。スーパーや百貨店、専門店は売上は40%くらいありますが、利益は全体の8%ほどの利益しか稼げていません。
想像以上にコンビニ中心の会社なんだと感じられるのではないでしょうか?
それでは、グループの主な事業のお仕事を見ていきましょう。今回の一連の記事では、主力の3事業(コンビニ、スーパー、百貨店)を紹介しようと思います。
1.1 コンビニ事業って何をしているの?
世界最大のコンビニチェーン、セブンイレブン
セブンイレブンは、日本全国で約22,000店舗、世界17カ国で約70,000店舗(2019年3月時点)が営業する世界最大のコンビニチェーンです。
日本では、2020年現在は47都道府県に出店しており、その店舗数は簡易郵便局も含めた郵便局との規模にすら近づいています。まさに日本人の生活を支えるインフラのような存在です。
世界のセブンイレブンブランドも、実は日本のセブンイレブンが統括しています。各国でセブンイレブンブランドで営業をしたいという企業に、ライセンス権を与え、運営ノウハウを提供してロイヤリティフィーをもらっています。
こうしたライセンスを与えた会社が営むセブンイレブンも合わせると、セブンイレブンは世界最大の店舗数を持つコンビニチェーンです。日本とアメリカを中心に、アジアでもたくさんの店舗を出店しています。
セブンイレブンの海外体制
(セブンアンドアイ 統合レポート2017より)
しかし、日本が統括しているって言うけれど、「そもそもセブンイレブンって日本発祥なの?」と、感じる方もいるのではないでしょうか?
起源はアメリカ、でも日本のセブンイレブンが再建のため買い取った
セブンイレブン、そしてコンビニエンスストアの起源は、1927年、アメリカ・テキサス州のサウスランド社にさかのぼります。ある氷小売店が始めた週7日、16時間営業のスタイルが時代のお客のニーズをつかみ、徐々に食品や雑貨も販売するようになり、1946年に、7-ELEVENというコンビニブランドが誕生しました。
日本では、1974年に、食品スーパーのイトーヨーカドーが初めて7-ELEVENとライセンス契約を結び、日本初のコンビニを始めました。しかしその後、日本での成功とは対照的に、アメリカの7-ELEVENは経営難に落ち入りました。そして1991年、イトーヨーカドーとセブンイレブンが再建のためアメリカの7-ELEVENを買収し、日本のセブンイレブンが世界の統括拠点となったんです。
では、その世界ブランドであるセブンイレブンは仕事として何をしているのでしょうか?
コンビニ会社の仕事は店舗オーナーを支援すること
まず初めに、コンビニ会社の仕事はものを売ることではではありません。
改めて言われると、え!?と思われるかもしれません。ではコンビニ会社の仕事は何かと言うと、コンビニの店舗を運営するオーナーを、調達から接客の指導まで、全面的に支援することです。実際にものを売るのは店舗のオーナーの仕事なんです。
コンビニ会社の重要な仕事は、魅力的な商品を安く仕入れる「調達」、お弁当やその他の商品を毎日朝昼晩欠かさない「物流」、そして綺麗で買い物しやすい店作り「店舗運営の指導」と言うことになります。
より詳しくは、下の記事にまとめましたのでこちらをご覧ください。
セブンイレブンは、さらに自社商品開発と自社製造にも力を入れている
一般的な、コンビニ会社の仕事は上述した通りです。しかし、セブンイレブンはこれに加えて食品の製造にも力を入れています。おにぎりや、サンドイッチなど多くの食品がセブンイレブンの専用工場で毎日作られています。
セブンイレブンの製造体制
(セブンアンドアイ 統合レポート 2019より)
セブンイレブンは世界の人々に、便利さを届けている会社
このように、セブンイレブンは世界一のコンビニチェーンの統括会社として、コンビニ店舗を運営するためのインフラや仕組みを作り、店舗運営の指導も行いながら、消費者に毎日便利さを届けている会社と言えます。
1.2 スーパーストア事業って何をしているの?
主な会社は、イトーヨーカドーとヨークベニマル
スーパーストア事業には、イトーヨーカドーや、ヨークベニマルといった会社が含まれます。イトーヨーカドー158店舗、ヨークベニマル230店舗を含む500店舗以上を有し、スーパー業界ではイオンに次ぐ最大級の会社です。
セブン&アイの創業はイトーヨーカドーから
イトーヨーカドーはセブン&アイの創業となる会社です。1920年に羊華堂として創業しています。
イトーヨーカドーはGMS、ヨークベニマルは食品スーパー
セブン&アイの創業でもあるイトーヨーカドーは、食品スーパーに始まり、今は主にGMSのお店を運営しています。GMSは、低価格の百貨店と考えればイメージしやすいかもしれません。食品をはじめとして、日用品や衣料品など生活に必要なあらゆる商品を取り扱います。
東北地方を中心に展開するヨークベニマルは食品スーパーです。コンビニとは異なり、生鮮食品(魚、肉、野菜)を中心に、食料品全般を取り扱います。
どちらも、大量仕入、低価格が特徴ですが、GMSは特にその傾向が強く、店舗も大型です。
詳しくは、下の記事で紹介しています。
スーパーマーケット会社は自分の店で、自分でモノを売る
スーパーマーケット会社は、自分の店を持ち、自分の従業員がお客にモノを売ります。ここはコンビニ会社との大きな違いです。
品質の良い商品を安く仕入れる「調達」、生鮮食品も新鮮に売り場に届ける「物流」、そして綺麗で買い物しやすい店作りと、そして集客・接客までが、スーパーマーケットのお仕事です。
各社が、それぞれの部分で工夫を凝らしており、例えばヨークベニマルは、生鮮食品の品質や、売り場の魅力などに定評があります。
1.3 百貨店事業ってなにをしているの?
最後に紹介するのは、百貨店事業を営む、そごう・西武です。
そごう西武は池袋西武本店を中心とした百貨店
そごう西武は西武池袋本店、そごう横浜店を中心に、全国15店舗を構える百貨店です。
そごう、西武ともに再編を繰り返してセブン&アイに行き着いた
そごうと西武百貨店はともに有名な百貨店ですが、2000年頃にいちど経営が悪化しています。そごうはは2000年に1度経営破綻しており、西武も2002年に業績が大きく悪化しています。両社は、その後再建し、2006年にセブン&アイグループに参入することになりました。
百貨店の仕事は魅力的な店舗で販売を行うこと
百貨店は、衣料品を中心として食品や日用品等を幅広く取り扱う小売業と言う意味で、GMSと似ているように感じます。しかし、実際の仕事の内容を見てみると、大規模な調達や物流の活動を行わないと言う意味で大きく異なります。
百貨店の仕事は、一等地の立地に店舗を構え、人気のブランドを入れて、価値の高い商品と丁寧な接客を提供し、高い満足を与えることです。この点、低価格で普段使う商品を提供するというGMSの価値とは対照的です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
1.4 まとめ
このように、セブン&アイホールディングスは、コンビニ、スーパーストア、百貨店といった様々な小売業を営む会社です。事業ごとに、異なる特徴や強みを持っています。
一方で、セブン&アイの場合、実はコンビニのセブンイレブンが会社の売り上げや利益の大部分を占めており、あまり各事業が相互に補い合っていると言う体制にはなっていません。
第2回以降の記事で、各事業の業績について実際の決算を見ながら、その良し悪しの分析も含めて、深掘りしていきたいと思います。
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